okinawa2022|選挙記事いろいろ③

辺野古移設って、なぜ必要なの?
 沖縄最大の政治決戦とされる沖縄県知事選が9月11日に投開票されます。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の県内移設計画を巡る国と県の対立が今後、どんな展開を見せるのか。新型コロナウイルスの感染拡大で冷え込んだ沖縄経済をどう立て直すのか。選挙戦での論戦や投票結果に注目が集まります。日本復帰50年の節目の年に争われる知事選に合わせ、沖縄の政治や社会が抱える課題をわかりやすく解説します。


Q:沖縄県知事選では宜野湾市にある米軍普天間飛行場を同じ県内の名護市辺野古に移設する計画が争点になっているね。そもそも、なぜ移設する必要があるの?
A:原点は米軍普天間飛行場の返還です。海兵隊が使用する普天間飛行場は沖縄本島中部・宜野湾市の真ん中に位置し、東京ドーム約100個分の476ヘクタール(現在)の面積があります。市の面積の4分の1を占めています。周辺には学校や病院のほか、住宅が密集しているのに、昼夜問わず、米軍機が上空を飛び交い、住民は事故の危険性や騒音に悩まされてきました。宜野湾市と沖縄県が返還を強く求めてきたことも踏まえ、日本政府と米国政府は1996年、「5~7年以内」に日本側に返すことで合意しました。
 しかし、その合意には条件がありました。普天間飛行場が持つ軍事的な機能を沖縄県内の別の場所に移して、維持することです。なぜ県内移設が必要なのかについて、防衛省は沖縄が「安全保障上、極めて重要な位置にある」として、「優れた即応性や機動性を持つ海兵隊が沖縄に駐留することで、日本や東アジア地域の平和や安全の確保のために重要な役割を果たしている」と説明しています。
 実は沖縄県内の米軍基地のうち面積比で7割は海兵隊の施設です。普天間飛行場に駐留するのは航空機を使う部隊で、その他の基地には海兵隊の司令部や陸上部隊、後方支援部隊などがあります。防衛省は「海兵隊の運用では、これらの部隊が相互に連携しあうことが不可欠で、普天間飛行場の航空機は日常的に活動を共にする組織の近くに位置するよう代替施設を沖縄県内に設ける必要がある」としています。
 実は沖縄県内の米軍基地のうち面積比で7割は海兵隊の施設です。普天間飛行場に駐留するのは航空機を使う部隊で、その他の基地には海兵隊の司令部や陸上部隊、後方支援部隊などがあります。防衛省は「海兵隊の運用では、これらの部隊が相互に連携しあうことが不可欠で、普天間飛行場の航空機は日常的に活動を共にする組織の近くに位置するよう代替施設を沖縄県内に設ける必要がある」としています。
Q:へー。じゃあ、なぜ沖縄県は近年、辺野古移設に反対しているの?
 A:前提として、既に、沖縄県には米軍基地が集中しすぎているという事実があります。米軍が管理する基地や施設を「米軍専用施設」と言いますが、日本にある米軍専用施設のうち面積比で70・3%が沖縄県にあります。こうした状況下で、普天間飛行場に代わる施設が再び同じ沖縄県内に造られることに、県は「重い基地負担を固定化するもので、到底認められない」としているのです。
 また、防衛省は軍事的な理由を挙げて「県内移設が必要」としていますが、「実際は沖縄県外に移転先が見つからないからではないか」という指摘もあります。2018年2月の衆議院予算委員会では、当時の安倍晋三首相が沖縄の基地負担の軽減について、「日米間の調整が難航したり、移設先となる本土の理解が得られないなど、さまざまな事情で目に見える成果が出なかった」と発言したこともありました。沖縄県は「軍事的な理由だけでなく、政治的な理由が強く影響している」としています。
 海兵隊が沖縄に基地を維持する軍事的な理由が、中国のミサイル能力の向上で揺らいでいるという意見もあります。沖縄県が設置した有識者会議は2021年3月の提言で、米海兵隊が最近、大規模な基地に依存せず、小規模な部隊を分散して運用する新たな作戦構想を掲げていることを踏まえ、「普天間飛行場を沖縄県外に分散移転する可能性が生まれつつある」と指摘しています。
Q:原点だった普天間飛行場の返還はどうなっちゃったの?
 A:政府も沖縄県も「普天間飛行場の一日も早い閉鎖・返還が必要だ」としていますが、辺野古への移設工事は今後も難航が予想され、返還がいつになるか定かではありません。 
 96年の返還合意以降も普天間飛行場に所属する米軍機による事故は相次いでいます。04年8月には、飛行場に隣接する沖縄国際大学に米軍の大型ヘリコプターが墜落し、炎上しました。17年12月には同じく隣接する市立普天間第二小学校の校庭に重さ約8キロのヘリの窓が落下しました。当時は、子供たちが体育の授業中であわや大事故になるところでした。
 宜野湾市によると、普天間飛行場所属の航空機による事故や予防着陸などのトラブルはは72年の日本復帰から22年1月末までに159回発生しています。03年に上空から視察した米国のラムズフェルド国防長官(当時)は「こんなところで事故が起きない方が不思議だ」と語ったそうですが、その懸念は現実のものとなっています。
 さらに12年には、米軍輸送機オスプレイが普天間飛行場に配備されました。周辺住民からは「夜間の飛行で睡眠を妨害されている」「米軍機が飛ぶと、会話もできない」などと騒音被害を訴える声が今も相次いでいます。【西部報道部・中里顕】
毎日新聞220220826