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医療事故に関するお話

少し前から医療事故に関する報道が増えており、一時は社会問題化してきました。この医療事故とは、いったいどのようなものか見ていきましょう。
医療事故の定義は、次の通りです。

「医療事故」とは、医療に関わる場所で、医療の全過程において発生する人身事故一切を包含する言葉として使われている。医療事故には、患者ばかりでなく医療従事者が被害者である場合も含み、また、(患者が病院の)廊下で転倒した場合のように医療行為とは直接関係しないものも含んでいる。医療事故の全てに医療提供者の過失があるというわけではなく、「過失のない医療事故」と「過失のある医療事故」(医療過誤)を分けて考える必要がある。

患者誤認事故防止方策に関する検討会報告書(厚生省、1999年)より

ここにあるように、医療事故には過失のないもの過失のあるものに分かれていて、過失がある場合を医療過誤と呼びます。また、医療事故により被害を受けた患者・遺族が損害賠償請求などの紛争に至ることを医事紛争と言います。
ですが、医療事故が起こったからといって必ずしも医事紛争になるわけではなく、医事紛争の全てが裁判になるわけでもありません。また、医療には不可抗力や医師でも予見できない事象もあり、どこまでの責任を医療従事者に求めるかも難しい問題です。

医療事故に関する責任には、民事上の責任・刑事上の責任・行政上の責任があります。
民事上の責任とは、過失により与えた損害を金銭的に評価して補償する責任です。一方で、刑事上の責任とは、行為者の道義的責任を国家・社会の立場から追及するものです。最後に、行政上の責任とは、不法行為のあった人に対する戒告処分や医業停止、免許剥奪などを指します。

このように、医療に関わるものには大きな責任があるため、医療事故の可能性のある行為や診療記録の取り扱いには細心の注意が必要となります。

医療事故は担当医や看護師だけでなく、関係した全ての医療従事者にとって辛いことであり、つい隠したくなる気持ちになることもあります。しかし、そういう時にこそ、正しく診療記録を記載し、患者や家族と向き合っていく姿勢が求められています。特に、日頃から患者との良好な人間関係を保っておけば、万が一医療事故が発生しても医事紛争に至ることは避けられることも多いようです。

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