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喫茶店のファンになった日

昔からずっとそこにあるような佇まいの喫茶店に、時々ふらっと1人で、入りたくなる。
常連さんが店主と談笑しているところに、カランカラーンと扉が開いたら、店主が談笑の続きの笑顔で、あ、いらっしゃいませと言ってくれるような喫茶店。今日のお店もそういう居心地の良い雰囲気だった。
昭和のフォークソングが小さく流れる店内。
ミルクティーを注文して、携帯で仕事の電話を2本して、終話ボタンを押してふと、店内の静けさに気付く。
あれ?もしかして気を遣って有線…消してくれたのかな…?でもそしたらアレじゃん、他のお客さんに悪いな、で、でも有線じゃなくてCD流しててたまたまアルバム終わったタイミングかもしんないよね?
じっと待ってみる、いやこれやっぱ…でも過剰か、自意識の過剰のやつか、初めて入る店でそんな優しいことあるの?
と小さく葛藤して、まあとりあえず一服してから、と思ったら灰皿が見当たらない。
よしそれならばここは灰皿のついでに、と自分の納得できるもっともらしい理由を見つけて店主に声をかける。
あの、灰皿ありますか?禁煙ですか?
店主は、少し躊躇して灰皿を取り出して、特別だよ、と笑って渡してくれた。
申し訳ないような嬉しいような気持ちになって、続けて伝える。
あとそのー、音楽、もしかして、消してくれましたか?
あぁ、うん。微笑する店主。
ありがとうございます!電話、もう終わったので、大丈夫です!

再び流れ出すフォークソング。運ばれてきたミルクティーのカップで、冷えた手を暖める。
なにこの優しさ空間。すさんだ心に染み込む気遣い。ああこの感謝もっと伝われ。
また来よう絶対来よう。次来たときは電話は外に出てするし、煙草も我慢するし、それでもいいからまた来よう。

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