トンネルの境目

新幹線に乗っていると、トンネルとトンネルの境目で、小さな村が一瞬だけ見えることがある。

その瞬間が好きだ。

トンネルがそこに通らなければ、ひっそりと奥深い山の谷間で恐らく一生目にすることがなかったであろう山村。

その一瞬の光景を目に焼き付けて、そこで暮らしている人たちの生活に想いを馳せる。

あの炭焼き小屋ではおじいちゃんが今でも炭を焼いているんだろうか、とか、あの農家の庭の木につくられた手づくりのブランコ、もう使われなくなってずいぶん経ってるみたいだったけど、子供は親元を離れて長いのか、とか。

もちろんほぼ妄想だけど、普通なら交わることのなかった人生が一瞬だけすれ違うことで、未知の人の人生を想像し、なんならちょっとしんみりしたり小さく感動したりする。未知の人が少しだけ知ってる人に近づいた気がする。

そんな想像ができるトンネルの境目が好きだし、ついでにいうと飛行機に乗っている時眼下に街の灯りが見える瞬間も同じ理由で好きだ。

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