ガラス一枚隔てて

最寄り駅まで行く途中にあるカフェ。気になりつつ入ったことなかったんだけど、いま初めて入ってカウンターで辛口のジンジャーエールを飲んでいる。

カウンターは大きな窓に面していて、そこからはいつも僕が歩いている道が見える。

窓という枠にあるガラスを一枚隔てただけなのに、いつもの景色が違って見える。

いつもは雑踏としてひとまとまりに見えていた人達が、一人一人、暮らしがあり、表情があり、悩みや喜びを抱えている人として見える。

街や、人や、日常への愛おしさが少し増える。ガラス一枚隔てただけで。

「シングルマン」という映画で、主人公の男が自殺をしようと決めたら、いつもの退屈な日常の風景が色づき、活き活きとしたものに見え、世界を愛おしく感じるようになるシーンがあるが、それと近い感覚なのかもしれない。

人はその渦中にいる時は、当たり前に感じすぎて大切なもののありかを見失うことがある。胃が体のどこにあるかは痛くなって初めて感じるように。

そんな時はガラス一枚隔てる気持ちで、暮らしを、人を、仕事を、眺めてみるといいかもしれない。


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