アリーテ姫のカッコよさ

「アリーテ姫の冒険」という本がある。「この世界の片隅に」の片渕須直監督によってアニメ化もされた児童文学の傑作だ。

この本は世の中のすべての女性に読んでほしい。主人公のアリーテ姫がとにかくカッコいいのだ。

あらすじは「悪い魔法使いによって地下牢に閉じ込められたお姫様が、3つの願い事がかなう金の指輪を使いながら、蛇が棲む永遠の井戸から水を汲んでくるとか、多くの騎士を踏み殺している銀のたてがみの荒馬を捕まえるといった無理難題を解決して最後はめでたしめでたし」という、まあよくあるタイプのものだ。

何が普通の話と違うかというと、アリーテ姫はその無理難題を解決するために指輪の力を一切使わないということだ。

その代わりにアリーテ姫は、殺風景な地下牢の壁に絵を描くための絵の具と筆を、自分や魔法使いに囚われた人にお洒落な服を縫うための布地と針と糸を、物語を書くためのペンと紙を指輪に望む。つまり、自分や周りの人の毎日を素敵にするために指輪の力を使い、無理難題はすべて自分の力で解決するのだ。

しかもその力は武力ではない。賢さと優しさ、相手を思いやる気持ちで解決していくのだ。

こんなお姫様は初めてだ。

しかもプリンセス系の物語でお決まりの、最後は王子様と結ばれてめでたしなんて結末は迎えない。アリーテ姫は無理難題を解決して得た宝物の力で世界を救うために最後旅に出るのだ。

カッコよすぎる。

昔この本を出版しようとした時「お姫様はもっとかよわくなくちゃダメ。王子様じゃなくて自分で問題を解決するお姫様の本なんて売れないよ」と言われ続けずっと出版できなかったらしい。腹立つ。でも当時は「女の子はこうあるべき」というのが一般常識だったんだろう。そんな時代にこんな本を書いたことは本当に素晴らしいと思う。

アリーテ姫のような女性が1人でも多くなれば世界は確実にいい場所になるだろうな。それはそんな女性を「こうあるべき」で判断せずに、個として、ひとりの人間として認める男性が増えることがセットだろうけど。


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