U18プリンスリーグ関西2部昇格プレーオフ~奈良県にとって関西への分厚い壁~
2024年度のプリンスリーグ関西2部への昇格を目指したプレーオフに奈良県代表として、奈良県1部リーグ優勝の奈良育英高校と2位の山辺高校が参戦しました。
奈良県代表は過去プリンスリーグ関西には縁が遠く、自動昇格制度がなくなった2012年以降は奈良育英高校が2度昇格しましたが、1年で奈良県リーグに降格しているぐらい今までは関西に定着できない状態でした。
そういう状況の中、今回のプレーオフに参戦する奈良育英高校と山辺高校に対しては、組合せトーナメント的に昇格は厳しいかも知れないけど、例年より初戦突破の可能性はあるんじゃないか?と少し期待をしながらの現地観戦となりました。
山辺高校(奈良②) vs 龍谷大平安高校(京都①)
前半1-4-4-2のシステムでスタートした山辺は、立ち上がり平安の前線からプレッシングを受けて慌てる感はあったものの、馴れ始めると次第に主導権を握り始め平安をゴール前に押し込む様になりました。
その理由として山辺は右SH9番が右サイドで攻撃の起点となっている所へ平安SBが食いつき気味だった事もあり、右SB2番の負傷交代で入った16番が投入されると右サイドをオーバーラップする様になり、9番との相乗効果で右サイドアタックが強度が上がりました。
他にも中盤で4人目のMFとして右SB16番がインサイドにも絞ったり、FW7番が落ちるなどしてパスを受けては逆サイドの左SH8番を展開するなど、平安両サイドの裏狙いは効果的で山辺との相性はかなり良かったと思います。
そういう状況の中で山辺は41分にその裏抜けから遂に待望の先制点をあげて前半を折り返す事になりました!
後半スタートから山辺は前半リードして折り返した事もあり、ボール非保持の時は守備的な1-5-4-1になる様に変則的なシステムに変更してきました。
しかし、この思惑はいきなりハズレ48分に平安のコーナーキックが風の影響なのか、綺麗な弧を描き山辺ゴールに吸い込まれる同点弾となり試合は振り出しに戻されました。
それでも山辺は同点になった後もシステムを元に戻すことはせず、平安の食いつき気味の守備は相変わらず山辺との相性が良かったので、平安DF陣の裏抜けを再三成功させて60分には裏抜けした所を倒されPKを獲得する絶好のチャンスを迎えました。
しかし、この日は前半から超当たっていた平安GKに、まさかのPKを止められてしまい勝ち越しの機会を逃してしまいました。
これが結果的には致命的なPK失敗となってしまったのは言うまでもありません。
山辺は終了間際の89分にも決定機を作る粘りを見せましたが、これも平安GKにセーブされてしまい、1対1のまま後半が終了し試合はPK戦に突入する事になりました。
PK戦の際に備え山辺は後半終了間際にPK要因なのかGKを交代させていましたが、超当たっていた平安GKも気分良くPK戦を迎えているので、心理的には平安の方が優位だったかもしれません。
【PK戦スコア】
キッカー ③ ⑧ ⑦ ⑥ ④ ⑯ ⑲ ⑰ ⑩
山辺 止 〇 〇 〇 外 〇 〇 〇 止 6
平安 外 〇 〇 〇 外 〇 〇 〇 〇 7
キッカー ⑩ ⑨ ⑪ ⑲ ⑦ ② ⑰ ④ ③
両校ともGKがキッカーにプレッシャーを与えたんでしょうね…キッカーのシュートミスを誘い、PK戦もサドンデスに突入して最終的に9人が蹴るPK戦は、平安が山辺を振り切り翌日の初芝橋本高校とのプレーオフ決定戦に進出しました。
この結果、2年連続プレーオフに進出した山辺は、雪辱を期した今季もプレーオフ初戦敗退となり、来季の奈良県1部リーグの残留が決まりました。
奈良育英高校(奈良①) vs 滝川第二高校(兵庫②)
この日はこの第3試合を観るためにJ-GREEN堺に行ったのに、何とキックオフ時間を間違っている大失態をおかしてしまい、試合会場に向かうと思っていたピッチと違う会場で、既に試合は前半終了間際になっていた事に気づきました。
慌てて応援している方に試合状況を聞いたところ、奈良育英が先制してから滝川第二が追いつく1対1のスコアで、このまま前半は終了してハーフタイムを迎えました。
…という事で後半からの観戦となったのですが、ご存知の通り試合会場がS7フィールドだとサイドからの観戦は厳しく、必然的にゴール裏からの観戦となった上に、この日は雨風も強く吹いてメモも取れない状態での観戦となりました。
ただ滝川第二ゴール裏からの観戦となった事で、奈良育英の攻撃は目の前で観れたのは今回良かったかもしれません。
後半も強風のせいでロングボールはベンチサイドに流される難しいピッチコンディションの中で、後半立ち上がり48分に遠目で見えづらかったですが、滝川第二の右サイドからの仕掛けで勝ち越しゴールを許した奈良育英は、このまま滝川第二に押し切られるのかな?と思った矢先の55分、やっぱり奈良育英の10番と7番のプレーは、チームの中でも抜けた存在だなと思える同点シーンを生みました。
育英10番がボール持つと滝川第二相手でもボールを保持しながら、クロスのタイミングを伺い右サイドからゴール前に走り込む7番に対して、左サイドから優しい浮き気味のクロスを上げ、これに7番も見事に応えてダイレクトでクロスボールに合わせて同点としました。
ここからは奈良育英が滝川第二をゴール前に押し込むシーンが増え出して、目の前で観ると迫力あるプレーの連続でした。
しかし、奈良育英のシュートはことごとく滝川第二の分厚い壁に当たりゴールを奪えなかったのですが、これはゴール前に集まりすぎた感は否めなかったですね…
滝川第二のゴール前での守備が不安定な事もあって奈良育英が押し込めたと思うのですが、奈良育英がゴール前に集まることで、滝川第二もゴール前を固めてしまうので、奈良育英のシュートコースは正直無かったかもしれません。
そのためあとは強風によるアクシデントを期待したセットプレーでの得点を待ちましたが、結果的にはこれも上手くハマる偶発的なシーンは起こらなかったです。
やっぱり勢いだけで相手ゴール前に押し込むだけだと、偶発的なゴールしか期待できないんですよね…
結局この試合は滝川第二の方が強風のアクシデントを生かせたセットプレーが生まれて、遂に85分に勝ち越されてしまい奈良育英も初戦敗退を喫してしまいました。
奈良育英には選手のポテンシャルに恵まれているので、この環境を生かしてもっともっと必然的にチャンスを構築するスタイルを、チーム全体に浸透させてほしいなと思いました。
このままだと本当に奈良クラブユースが先にプリンスリーグ関西2部に昇格してしまうかもしれませんよ!
滝川第二戦ではゴール裏から見てて気づいたのですが、ボールサイドから逆サイドへボールを展開したり、ゴール前に押し込んでからボールを下げ戻すなど、滝川第二の守備ブロックを縦横にスライドさせる事が、まだまだ出来ていないと言うのが正直な感想です。
これが出来る様になると2点目のシーンの様な、ボールウオッチャーになりがちな滝川第二に対して、とても効果的だったと思います。
もっと冷静にボールを動かせる等サッカーを熟知したプレーが出来る様になれば、プリンスリーグ関西への昇格のハードルも奈良育英にとっては、そこまで高くないと思うので、来季は奈良クラブユースと共にシーズンを切磋琢磨してほしいと思いました。
奈良県から関西への分厚い壁はいつまで続く?
関西の強豪チームと比べて奈良県のチームは、走るスピードもパススピードも劣っているのは否めず、これはある程度選手のポテンシャルにかかり仕方ない所はあるので、その遅さは判断スピードで補わないといけないと思います。
それなのに県内のリーグ戦や県大会を観てる限り、ほとんどのチームはスピード勝負となるトランジションの応酬で、選手が自陣と敵陣を行ったり来たりする縦に速いサッカーしかしておらず、そのプレーには適正な判断はない様な気がします。
これを今後も続けている限り県内の公式戦では通用するスピードも、近畿大会やプリンスリーグ関西昇格プレーオフ、ましてや全国大会等の県外のチームと対戦する際には、このままでは通用する可能性が極めて低いと思います。
それを考えると奈良県のチームは県外チームよりスピードの遅さを逆手に取り、スピードを速く見せるための緩急をつけた工夫あるプレーを身に付ける技術向上が必要で、その緩急を身に付けるため『サッカーを理解』して『判断スピード』を上げる日頃のトレーニングと公式戦の場が必要だと思いました。
ピッチ全体を使って『幅』と『深さ』と『緩急』を意識しながら相手ゴール前に前進して、必然的なチャンス構築に繋げれるチームになれば、シュートチャンスにおける決定力も上がり、自ずとプリンスリーグ関西への昇格の壁を簡単に越えられると思います。
最後に今季のプリンスリーグ関西2部昇格プレーオフの結果は上記の通りとなりました。
結果論ですが山辺高校が競り合った龍谷大平安高校は、初芝橋本高校に敗れ昇格できなかったものの終了間際まで大接戦を繰り広げましたし、奈良育英高校に辛うじて勝った滝川第二高校に至っては、東海大仰星Bに終了間際に勝ち越しゴールをあげて見事昇格を果たしました。
連戦の疲れはあったと思うものの関西への分厚い壁をぶち破るまで、あともう少しの所まで来ている様に思える今季の昇格プレーオフだったと思います。
プリンスリーグ関西昇格プレーオフの結果により来季の県1部リーグは下記10チームとなりました。
来季こそプリンスリーグ関西2部昇格プレーオフで、見事に昇格を果たせるチームが現れる事を願って期待しております。
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