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LeMans対Daytona二大プロトの競演!

フランスのル・マンとアメリカのデイトナ。伝統ある二大耐久レースがついにトップカテゴリーとして交わる時がやってきた。
ル・マンの統括団体ACO(WECシリーズとしてはFIA)とデイトナをはじめIMSAシリーズを取り仕切る組織IMSAの間で、お互いのシリーズに共通の車両が参加できるレギュレーション改定がいよいよ成立!

★プロトタイプカーからハイパーカーへ
伝統的に、耐久レースの華であるトップカテゴリーは量産先行試作車の意味を持つ『プロトタイプ』と呼ばれる事実上のレース専用車で競われてきた。
しかしWECは2021年からレギュレーションを大幅に変更、市販車とレースのイメージを近けるためにプロトタイプを止めて『ハイパーカー』(近年過熱している超高級スーパーカー(いちおう市販車?))というカテゴリーを新設した。

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                          図はFIAより拝借

★進むレギュレーションの共通化。差が出るお国柄。
一般的に欧州ではメーカーの技術競争色が強いのに対し(F-1など)、北米は共通性の高いマシンによるドライバー勝負すなわちスポーツ性を重んじる傾向にある(INDYなど)。
今回の共通化されるレギュレーションもその思想差が表れているようで、WECとIMSAで似て非なる規則になるようだ。

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ボディサイズ・タイヤメーカ・最高出力がほぼ共通であるのに対し、今やLeMansではお馴染みのハイブリッドシステム、レース界では必須の空力に対する差が大きいように思える。
WECがマシン丸ごと「ある程度」自由に作れるのに対し、IMSAの方がより共通性を高め、性能の均等化やコスト削減を重視している。シャーシは4社からの選択制、ハイブリッドシステムに至っては共通の1択のみ。自動車メーカーやチームの自由度は少ない。

★差が出るエンジン形式、個性あふれるボディシェイプ
どちらの規則も総出力の上限は決まっているが、エンジンの気筒数や形式、回転数などに規制がないのは素晴らしい!これによりエンジン音やボディ形状にも差が出て、メーカー独自のキャラクターが濃くなりマシンの違いを楽しめそうだ。

ハイブリッドシステムに関してもLMHは4WDのハイブリッドか、MRのノンハイブリッドか選べる一方、LMDhはワンメイクのMRのハイブリッド一択となる。それに合わせタイヤ幅も変わるので、これもまたどれが最適解なのか分からず『差』を楽しめる点である。

空力については、FIAが全面投影面積縛りとする一方(ルマンで最高速が出過ぎないよう配慮か?)、IMSAはL/D値による純粋な空力性能規制としているのも大きな違いと言えそうだ。

出力が同じ以上、やり方次第ではLMDhの方が空気抵抗削ってルマンでトップスピードを稼げる可能性もあるわけで、しかもWECはルマン専用仕様投入できないとなると、今後ルマン狙いのスポット参戦チームがLMDhを選択して、ユノディエール(3連続2kmの直線)で巨大メーカ相手に廉価なマシンでに面白い戦いを仕掛けられるかもしれない!?

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                          図はIMSAより拝借

★結局必要BoP『Balance of Performance』
ここまで似通ったレギュレーションにも拘らず、最終的にはBoP(性能調整)が導入されるとの発表。各マシンの性能差を縮めレースを面白くしようという意図は十分理解できるが、個人的にはどうも好きになれないルールである。。。

例えば空力については、お互いのシリーズで基準としている風洞(FIAはスイスのザウバー、IMSAは米国ウインドシア)にマシンを持ち込んで確認する点など公平性は高いと思うが、エンジニアとしてはせっかく頑張って性能を上げたのに『速すぎるから遅くして~』となるので、技術競争の側面がスポイルされ過ぎる気がする。

かつてのグループCのように、『車両サイズと1レースで使用できる燃料量以外は自由!』くらいの潔いレギュレーションにはできない物だろか・・・

いずれにせよ日米欧の、巨大自動車メーカー、少量生産のスーパーカーメーカー、レース職人のプライベーター、皆が一堂に会して伝統あるル・マンとデイトナを盛り上げられる事は歓迎すべきことに違いはない!!

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