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北米でのEVレーシングカートに電気自動車の未来と闇を見た!

北米駐在生活中の車屋Falconです。
駐在先の職場で小規模なゴーカートイベントが開催されたので、遠い昔にカートにハマったことのある私は迷わず参加しました!

当日はあいにくの大雨でベビーウェット。延期ですか?と同僚に尋ねると、『屋内の電動カートだからNo problem!』とのこと。

久しぶりのカートに心弾ませていた私は安心すると共に、「えっ『屋内?』『電動?』とはいったいどういう事??もしや遊園地にあるゴーカートレベルか?」と異国での未知のカート体験に若干の不安も抱えつつの初参戦となりました。

カート場はウォルマートのような大型シッピングセンター風の建物で、中に入ると広いフロア(屋根は低い)に赤白の簡易フェンスでコースが作られ、時々タイヤのスキール音が聞こえてくるクールな空間が広がっていました。静かなのでカート場というより映画館や屋内スケート場に似た雰囲気です。

1/4mile(約400m)のコース、路面がアスファルトではなくコンクリートのようです。

肝心のカートはというと、フランスのSODI社の最高速40mph(約64km/h)出せるいわゆる入門用のEVカートでした。日本国内の一般的なレンタルカート相当の性能のマシン。入門用とは言え遊園地のゴーカートではなく本格的なレーシングカートのエントリーマシンですね。

フランスのSODI社はEVカートもラインナップ(写真はエンジンタイプ) SODI社HPより

実際にEVカートに乗ってみると、静かで振動が少ないのは当たり前として、電動モーターならではのトルクフルな加速が、明らかにエンジンとは違う!

エンジンタイプのレンタルカートだと少しでもアクセルを抜くとエンジンがもたつくので、アクセル全開で軽く左足ブレーキを当ててコーナーリングしたくなる。
でも、ペダルの同時踏みはマシンに悪く基本禁止されているので、極力アクセルを抜かないライン取りをしたりするのだが、EVはどうも違うらしい。

・コーナリングをアクセルペダルで調整できる!
・加速が良いので突っ込み重視でなく立ち上がり重視のライン取りも有効!
・トルクがあるので立ち上がりでラフに全開にするとアンダーが出る・・

このフィーリングが20年前にバイト代をつぎ込んで通ったレンタルカートの乗り方と少し違うのでライン取りに少々手間取りました・・・

一方で、このクラスではエンジン車より幅広いライン取りが許容され、ストレートで差が出にくいので、初心者と玄人との差が縮まり、むしろバトルを楽しみやすいのではないか?と思われます。

レンタルカートでは、当然クラッシュによるマシン破損はユーザー責任で高額な修理費を請求されるため、基本はバトルなしのタイムアタックが中心。
なのでレンタルではバックマーカー(周回遅れの遅いマシン)の追い抜き程度しかバトル要素はないのですが・・・

ホームストレートを疾走する同僚たち。意外と路面は食いつきが良く、滑らない。
エスケープゾーンもない狭いコースなので仕掛けるポイントが難しい。

ココはコース幅が狭く、真ん中を走る不慣れな米人同僚もおり、オーバーテイクするのは結構至難の業で、また派手に接触でもしようものならば『その後の職場での気まずい雰囲気が漂う』事、間違いなしなため、どこでどう抜くか?如何に安全にクリアに抜くか?かなり葛藤がありました。

それでいて本国から派遣されてきた自動車系の駐在員が遅いというのもカッコ悪いので、それなりのタイム出さないとイケないプレッシャーを勝手に感じ、EVカートの特性を駆使して筋肉痛覚悟で全力で走りました!
いちおう一緒に走った組(現役の若手テストドライバー数名含む)ではトップタイムを出せたので面目は保てました
(逆に驚かれ、軽い話題の的に・・・大人げない大人になってしまった)

★EVカートは素晴らしい!

まず何といっても屋内で夜に都会で乗れるカート。それだけでモータースポーツの市民権を拡げるのには十分な可能性を感じます!
今回も仕事後の夕方開催でした。
気楽に都会でリアルなモータースポーツを知ってもらうのには最高の場となります!(日本では場所の確保が大きい課題かもしれませんね)

レンタルしたEVカート。ヘッドライトと背もたれとシートベルトが新鮮。
でも半袖・グローブ未装着OKなところが米国って感じ。 カート場のHPより

またEVカートが入門用として優れていると感じたのは、最初のピットアウト、走行後のピットイン、そしてアクシデント発生時に、外部から無線で全車にパワーセーブを掛け、速度を落し安全かつ確実に走行プログラムをこなせる点
これならば、スピンしたカートに高速で突っ込んだり、時間が来たのにピットインし忘れたりしないので、初心者にはかなり安心です。
(まさに流行りのデジタルセーフティーカーといった感じです)

EVの加速が素晴らしいというのは最近ではよく知られるところですが、カートですらそのメリットを感じられるとは考えていませんでした。
改めてモーター駆動の良さを再認識する切っ掛けになりました!

★電動化の闇

実はこの日、会社イベントとしては一人2ヒートずつのタイムアタック走行体験でしたが、その後魂に火が付いた同僚たち(私も)による追加の第3ヒートを走る予定でした。

しかし事件はこのタイミングで起きました。


別の団体がコースインし、今まさに全開走行するぞ!というところで、建物全体の電灯がチカチカっと息継ぎをしたと思ったら、その2秒後に建物ごと停電しました。。。
幸いコース上のマシンは全開走行前かつ遠隔操作で自動的にパワーオフされたため問題なく停車し事故などはありませんでした。

カート場の人曰く、技術的問題解決に時間がかかる可能性があるので、走行中あるいは走行待ちの人には料金払い戻しの上、その晩は店終いにするとのこと。火の付いた魂を冷ます(覚ます?)には十分なハプニングですね。

当日は悪天候で雨や強風は吹いていたが、他の建物は停電していなかったようなので、ここだけの問題のようでした。
(米国では悪天候による停電は日本よりはるかに多いので、もしやと思ったが・・)

常に10台程度のEVカートを充電していたとはいえ、そこまで電力への負担が大きいとは考えにくいが、いずれにしても電気トラブルに違いない

たまたまの建物の停電か?EVカートが関連しているのか?
自動車エンジニアとしては同僚も含め、今後訪れるであろうEV時代はどう電力問題に向き合うべきかを考えさせられる出来事でした。

その後、私たちは思い思いのエンジン車に乗り、少しスッキリしない心持で、真っ暗闇のEVカート場を後にしました


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