見出し画像

そこにある確かなもの

出逢い。
それは上目遣いがたまらなく愛しい翡翠色の「みとり」の猫が、私に話しかけた、ある春の日の午後だった。私は大好きなブラックを封印し、いつものスタバのマークにあるセイレン女神に、「今日は彩りで勝負する」と、なぜか頼んだこともない「マンゴーフラペチーノ」を注文し、宣戦布告を申し立てた。いまだに謎だ…。自分でも理解不能な自分がいる。それが面白い。

そしておもむろにこの本を取り出し、「絶対に看取ってやる」。いや、読みきってやると店内の椅子に座り、ゆっくりと文面を目で追った。

本来、人間の観点から書かれるはずのエッセイは、この本に限っては完全に(=^・^=)猫目線だ。まるで一度、猫を生きた過去があるかのように、猫世に紐解かれたような、人間の感性を超えた、思考と感情に訴えてくるヒューマニズム。宇宙との繫がりを感じる繊細さと、自然の愛の光に包まれた愛おしいお話が、7つも綴られていた。

その短編ストーリーについてはここでは割愛させて頂く。(ごめ~んね👅)

そもそも、私はあまり猫が好きではなかった。自分が幼い頃、近所の猫に飛びつかれて以来、その存在に恐怖を覚えた。その時は「自分は猫には好かれない人間だ」と思い込んでいた。どちらかと言えば、自分は犬派だと決めこんでいたのだが、飼っていた犬のことも、口ばかりで世話をするのはめっぽう父の仕事。私には動物を飼う資格はない。そう思って生きてきた。

ところがある日突然、私は悟った。

自分の中に猫が住んでいる。

これまで犬寄りな人間だと思って生きてきたが、そこら中の誰よりも自由でいたい、誰にも縛られないお気楽人間になりたい。そう思うようになった。

先日、この「みとりねこ」という本が「みどりねこ」だと思った話を書いた。そこでも触れたのだが、猫は、人間との適切な居心地の良い距離感を知ってると思っている。甘えるときはしっかり甘え、ふと気が付くとどこかにヒュッと姿を消している。つかみどころのないままならなさと、コケティッシュさも相まって、何とも憎めない。魅惑の妖艶さも兼ね備えている。まさか自分がそんな猫を心に飼っていたなんて知る由もなかった。あんなに人に良く思われたかった私が、人の顔色ばかり窺っていた私が、人間ではなく、猫を心に潜ませていたにゃんて・・・。

さらに、猫は宇宙からやってきた「使者」だと、誰かが教えてくれた。確かにそうだ。中でも「黒猫」はその筆頭株。魔法使いや魔女といえば、必ずその傍らに相方のように君臨している。また、タロットのコートカードと呼ばれる「WANDのクイーン」のカードにも、やはり黒猫の存在が描かれていて、宇宙からのメッセージを届けるかのように、静かに鎮座している。


人間は猫の事を、所詮、"思考や感情を持たない動物"だと思っているかもしれないが、実はそれは人間の勝手な解釈で、猫にも人間と似た感性や感情があるのかもしれない。猫という宇宙からの使者によって、この世界を俯瞰して冷静に観られているのかもしれない。有川さんの本を読んでいて率直にそう感じた。

ところで、有川ひろさんは私と同郷。広大な太平洋広がる土佐の海。坂本龍馬の銅像が見下ろすその眼下には、いつまでもどこまでも優しく強く、そしてすべて「許されている」そんな心の広さを感じる海がある。

有川ひろさんといえば、2013年に映画化された「県庁おもてなし課」など、あたたかい人間ドラマを綴られる作家さんだと承知している。2007年に当時の橋本知事が発足したこのおもてなし課も、今は県庁の方針で統廃合され、姿を消してしまった。滝川クリステルさんの有名な「お・も・て・な・し」になぞらえて、名づけられたのかどうかは定かではないが、大切な人間の持つ何かを、置き忘れてきたような、そんな一抹の寂しさも感じた。

最近、「高知家」という名称があるくらい、「故郷愛・家族愛が強い」高知県民。生き物に対してもそれは同じ。『共に生きる』という人生のテーマを、誰よりも強く生きていたい人々だと自負している。

人間も猫も、同じ時代に生まれて、たとえ寿命の長さに違いがあったとしても、「生きる」ことで得た英知は、魂に記憶され残っていく。共に生きた時間は、美しく輝いて、その細胞のひとつひとつが覚えていてくれるはずだ。

何を隠そう、この私も、自分の過去世に、宇宙での「ウォーリアー」として生きていた記憶を持っている。私たちの戦いは、決して国や権力のための戦いではない。宇宙はただただ、人類に平和で穏やかに、自分を生きてほしい。そう思っている。私たちは平和を守るために、闘ってきたのだから…。

ここまで、真摯に、すっごく真面目に綴ったのに、なぜか、私の頭に「何の話をしているのだ」が蘇ってくる。そうだ。我に返って時計を見た。時間だ。もう行かねばならない。現実の世界が私を呼び戻す。笑うんだ。笑うことで世界は救われる。そうに違いない。

おわりに。

私の中にある変わらない"たしかなもの"。それはいつの時代も『みんな違ってみんなそのままでいい』。金子みすゞが残した言葉が、人にも猫にも、全ての生きとし生ける者たちの最期をみとる光になると信じている。



ナウシカ ᵃʳⁱᵍᵃᵗᵒ~(˘͈ᵕ ˘͈♡)ஐ:*



この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?