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「マンガでわかる神・時間術」を読んで

コロナ禍において、高齢者福祉の仕事をしていた私の職場は緊張感が高かった。特効薬もなく、抵抗力の弱い高齢者が感染すれば命に関わる。感染させてはいけない、だから自身が感染してはいけない。職員のストレスは高く、発散することもできず、職場の空気は重く、職場の人間関係も窮屈になっていった。

徐々に心の安定が崩れていき、私は夜も寝付けず、朝起きられず、食事も食べられなくなっていった。そうなるまで、どれくらいの期間か覚えがない。気がついたときには、動けなくなっていた。

仕事に行くことの前に、起き上がることができなくなり、「人生が終わった」と布団の中からぼんやり天井を見上げていたのを覚えている。泣くこともできなかった。

樺沢先生は「神・時間術」の中で朝散歩を勧めている。
セロトニンを活性化させ、体内時計がリセットされるというのだ。朝散歩ができなければ、日向ぼっこでも良いという。

もう人生も終わってしまってもいいかという思いの一方で、最後のチャンスに賭けてみようという思いで、布団から這い出て玄関のドアを開けてみた。

眩しく感じた。明るい空、目の前に森が見え、頬に風が当たった。「感じる」を取り戻した感覚があった。

そこから、本当に少しずつ、歩く範囲を広げていった。家の前→30メートル先の木の下→50メートル先の坂道→その先の公園…。

コツコツと朝散歩を続けることで、確かにリズムが整ってきた。食べ物も少しずつ口に入るようになった。栄養が行き渡り、やる気が出てきた。

私の人生は終わらなかった。

そこから時間はかかったものの、新たな職場で仕事を再スタートをすることができた。

どんな環境でも、自分の状態を保ち、好きな仕事をやりたい。今はそんな思いでいる。

先日、仕事の休憩時間に職場周りを散歩してみた。
神時間術にある、集中力のリセットボタンを実践してみようと思ったのである。
自然豊かな職場環境で、周囲は山と畑。上を見上げれば桜、足元を見ればたんぽぽが咲いている。心地よい風に吹かれ、午前中の疲れも一緒に飛んでいくような感覚であった。
午後からは朝のような集中力で仕事ができ、自分でも驚いた。

神時間術で紹介される仕事術、時間術は職場での評価を高め出世する方法ではなく、よりよく生きるためのエッセンスであると思う。

産業医の朱音春子の「自分の人生を楽しんで」。
これが、樺沢紫苑先生から読者へのメッセージだと思っている。
だから、新社会人や働き盛りの会社員に限定されず、学生も主婦(夫)も、働けず辛い思いをしている人も、すべての人へ向けられた本だと思う。

樺沢紫苑先生の、すべての人への愛が詰まっている。

「神・時間術」が、より多くの人へ届きますように。
そして、私もこれからもまた読み直し、できる範囲で少しずつ変化を起こして、自分の人生を充実させていきたい。


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