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銀座のママのつぶやき

「今、君が抱えてる悩みの2/3は
 僕が解決できるよ?お金で」

昔、銀座でホステスしていた時に
好意を持ってくれたお客様に言われた事。

うん。納得。すごい納得。
何なら4/5ぐらいあなた様のお金で
私の抱えてる問題は
解決できるのではないでしょうか。
私の抱えてる問題のベースは
ほぼお金なので。
(借金とかではありません)
これは私に限った事ではなくて
世の中の人の悩み、
問題は半分以上はお金で
解決出来るものだと私は思っている。
命さえもお金で買えるぜ!とは
思っていないけれど、
お金持ちなら躊躇なく最新医療などを
選択出来るという事は
事実としてあると思うから。

でもお金持ちだから「幸せ」とは
また別問題なんだなと
思った日があった。
ある時の金曜日のママのお客様の
アフター帰り。


そのママは京都の出身のママで
目力が強い気の強さが小柄な体から
溢れでてしまってるような
迫力のある美人なママだった。
他のママ達からの評判は
あまり良くなかったが
私は個人的にお話もうまくて、
物知りなそのママの事は好きだった。
港区の高級マンションに
家政婦を雇って住んでいて
乗ってる車はポルシェ。
仲の良い姉妹がいて家族とも良好なのは
姉妹の方を私は面識があって話を
聞いていたので嘘でもなさそう。
ママだから当然だけど色んな人脈を持ち、 
アクティブな人で週末は
色んな事をしてるママだった。

「ママ?いつもタクシーで移動してるけど
 ポルシェ乗ってます?」
と聞くと
「近所のイオン行くとき乗るで」
とニヤリと笑って言った。
私は被せ気味で
「歩いて行ってください」と言った。


この人は銀座のママが天職なんだろうなぁと
一緒に仕事をしていていつも思っていた。
華があり、オーラがあり、頭の回転も速く
常に色んな事アップデートし、
常に楽しそうに仕事をしてるママ。
いつも自分がどこに向かっているのかが
不安な私には天職と出会えて
生きているママが羨ましかった。

完全に自立出来ていて
自分だけの力で大金を稼ぎだし
たくさんの人脈を持ち、
ホステスを辞めるにしても
その人脈があれば
向かうところ敵なしじゃないか。
人間だから悩みがないなんて事は
ないだろうけどその時
たくさんの解決出来ない問題を
抱えていた私からすると
私が想像するママの悩みなんて
取るに足らない事のように思えた。

ある金曜日のアフター帰り。
タクシー代はお客様から貰ってるのに必ず
「一緒にかえろ。私を先に降ろしてな」
と言ってママの家経由で帰る。
そして自分が降りる時に
「運転手さんこの子頼みますわ」
と言って私に「これで帰り」
と言って10000円渡す人だった。

その日私が「ママはこの仕事が天職ですね。
そうゆうのに出会えて羨ましい」
と言った事があった。


ママは
「天職なんかなぁ・・
 まぁお客様とお話してて
 瞬間、瞬間は楽しいで。
 でも幸せか?って聞かれたら
 幸せですとは答えられへんな。」

意外だった。
いつも隙や弱味みみたいなものを
見せないママ。


「この仕事してて今の生活してて
幸せって感じた事ないで。
どうしたら幸せになれるんやろか・・」

タクシーの窓の外を見ながら
独り言のように言った。
タクシーから見える綺麗な
夜景の光が反射してママの顔が
キラキラしてるのに
その表情は寂しそうに見えた。

なぜだか時々
この会話とママのあの横顔を思い出す。
結局【幸せ】は
物理的なものでは得られなのよね。
この年齢だからその事はもうわかるけど
日常を過ごしていると
日常に必死になり過ぎてついつい
お金を追いかけてしまう。
あともう少しお金に
余力があればと思ってしまう。
でもそれも現実なのだから仕方ないのよ。
どうしても日常に必死になりすぎて
自分の【小さな幸せ】を集められない。
私の幸せな事なんて
ベランダの植物整えるとか
本屋に時間気にせずいる事で
でたいした事ないのに。
それがなかなか出来ないのは
私の容量が悪いからだろうか。

でもとりあえず今日は
このnoteを書く時間を確保できて
心の中をアウトプット出来てちょっと幸せ。
明日も自分の【小さな幸せ】を
集められたらいいね

あの日ママはいつも通り
私が乗ったタクシーが
走り出すまで見送ってくれた。
スタイリッシュな
高級マンションのエントランス前。
一体いくらするのか
わからない素敵な白いお着物。
透き通るぐらいの手入れが行き届いてる
白い腕にはエルメスのバーキン。
「また明日ね」と
手を振るママの顔は
小さな女の子に見えた。

ママは幸せ見つけられただろうか。


#創作大賞2024 #エッセイ部門















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