押井守『天使のたまご』考察

アマプラで天使のたまごという作品を見たが、始終難解であったためあくまで私の中での一考えを書いていこうと思う。

最後までのネタバレ含みます。

まずこの作品には多くのモチーフ、暗喩にあふれている。描かれているのはノアの箱舟が安全な陸地を見つけられなかった世界。十字の杖を持つ少年が卵を持つ少女に出会う。十字や魚といったモチーフはキリストを表していることが多いのは有名である。町の漁師(男)たちはいもしない魚(キリスト、救世主)を捕まえようと躍起になっているという滑稽な姿を描きたかったのだろうと考えられる。

 少年が卵を割ってしまうシーンではあの少女が寝ている(夢を見ている?)そばで部屋の中には少女の集めたたくさんの壺があるのが分かる。フロイト心理学によると、夢の中に出てくる洞窟、壺は女性性の暗喩であり、杖や棒といったものは男性器の暗喩であるとしている。少年が卵を割るシーンは少年と少女の性行為を暗喩しているという監督の言葉も納得がいく。
そうして処女性を失った少女は大人の女性となり、海に沈んだ女性がこの世に卵を残したのではないだろうか。
物語の終盤で少年と少女のいた町は巨大な方舟であったことがわかる。恐らくノアの箱舟であろう。安全な陸地にたどり着くことが出来なかった方舟は今もなおありもしない陸地を探して彷徨っているのかもしれない。魚の幻影を追う男たちのように。

結局のところ人によってかなり解釈の分かれる作品である。見た人によって異なる解釈を聞くというのもまたこの作品の楽しみ方なのかもしれない。


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