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CHO細胞株開発の新たなフロンティア:ランダムから標的遺伝子導入技術まで Vol. 01

皆さま、こんばんは。今日の話題はバイオ医薬品開発についてです。
現在のところ、バイオ医薬品の主役は交代医薬品です。抗体医薬品の製造にはハムスターの卵巣に由来するCHO細胞と呼ばれる細胞が用いられます。CHO細胞に、医薬品として製造したい抗体のアミノ酸配列をコードするDNAが挿入された発現プラスミドを導入します。そうすると、CHO細胞のゲノムにその発現プラスミド中の抗体の遺伝子が組み込まれ、CHO細胞が抗体を産生するという仕組みです。そのCHO細胞のゲノムにどのように発現プラスミド中の抗体遺伝子を挿入させるか?がこの論文のテーマです。従来はランダムに挿入されていましたが、最近はランダムではない別の方法が開発されています。従来の方法と新しい方法について比較しているのがこちらの論文になります。

タイトルは、The new frontier in CHO cell line development: From random to targeted transgene integration technologiesです。
著者はベーリンガー(この業界では有名)と呼ばれる企業の研究者たちのようです。
出典はBiotechnology Advances Volume 75, October 2024, 108402 です。

かなりボリュームのある総説なので、少しずつちびちび行きます。
今日はAbstractのみです。

要約
細胞株の開発は、治療用糖タンパク質の開発プロセスにおける重要なステップです。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、生物製剤の工業的製造に最も頻繁に使用される哺乳類宿主細胞システムです。組み換えタンパク質発現のための CHO 細胞の主な用途は、外来DNA を CHO 宿主細胞ゲノムに安定的に導入するという比較的単純な方法にあります。1980 年代後半に CHO 細胞が生物製剤の工業的製造の発現宿主として初めて使用されて以来、安定したゲノム導入遺伝子の統合は、ほぼ例外なくランダム統合によって達成されてきました。それ以来、実行可能な代替手段がなかったため、ランダム導入遺伝子の統合は、安定した CHO 生産細胞株を生成するためのゴールドスタンダードとなってきました。しかし、このアプローチは、細胞株の不安定性を誘発するリスクの増加など、細胞株開発プロセスに重大な課題をもたらすことが最終的に実証されました。近年、新しい非常に強力な(半)標的遺伝子導入システムの重要な発見により、細胞株開発分野における技術革命への道が開かれました。これらの高度な方法論には、トランスポザーゼ、リコンビナーゼ、または Cas9 ヌクレアーゼを介した部位特異的ゲノム統合技術の適用が含まれており、これにより、トランス遺伝子発現カセットを宿主細胞ゲノム内の転写活性部位に傷を付けずに導入することができます。このレビューでは、CHO 細胞株開発のためのトランス遺伝子統合技術の分野における最近の進歩をまとめ、確立されたランダム統合アプローチと比較します。さらに、(半)標的統合技術の利点と限界について説明し、バイオ医薬品業界にとっての利点と機会について概説します。


ここまで。最初の行に「治療用糖タンパク質」と書いていますが、ほとんどの場合で抗体医薬品のことです。次回はIntroductionを読んでいきます。





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