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懐かしい人

近くの神社に毎月末ごとに行く。
今日、お詣りに行くとめずらしく人がいた。
めったに他の人と一緒になることのない地元の神社。

その人は拝殿前で頭を下げじっとしていた。
神社の鳥居をくぐる前に後ろ姿を見かけたので、その人がお詣りを終えるまでその場で待っていた。長い祈りに感じた。

その人が頭をあげたタイミングで私は拝殿に向かって歩き始めた。
頭を下げたままこちらを向き、鳥居へ向かって歩き始めるその人。
私はその人を知っていた。遠くから見た時にすでにわかっていた。
私の犬が生前に大好きだった人だ。

もう何年も前、その人も犬を連れていて、私の犬もその人の犬も犬見知りで、散歩でバッタリ合うと犬同士はお互いを無視していて、お互いの人間の方に寄っていく。そこで少しだけ会話を交わす。
散歩を一緒にしている近所の犬軍団には決して属さない私達と私達の犬。

私の犬が亡くなり散歩に出なくなり、その後、会うことはなかった。
どこかで見かけることもなかった。
それほど家が離れている訳ではないが、犬の散歩以外の時間の過ごし方が違うのだろう。まったく会うことはなかった。

神社ですれ違う時に、おはようございますとお互い頭を下げた。
きっと彼女は私の事も私の犬の事も忘れているだろう。

地元の小さな神社、この場所で彼女に会える事が出来て嬉しかった。
きっともう彼女の犬もあちら側に行っているのかもしれない。
長い祈りの 時間だった。

昔の唯一の犬友
群れるのが嫌いな私と、犬が苦手な私の犬が唯一会うと嬉しかった人と犬。

きっとまたしばらく会う事はないだろう。
またいつかどこかで会えたらいいなと思う。


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