極私的Led Zeppelin

 Led Zeppelin(以下LZ)との出会いは、私が小学校5年生の1973年だった。近所の音楽好きのお兄ちゃんが、高校受験で当面音楽を聴かないからということで、当時の全米トップ40系のシングル盤を20枚ほどくれたのだ。
 当時絶大なヒットメイカーだったCCRや、一発屋の「黒い炎」チェイス、これまた大人気だったサイモンとガーファンクルの大名曲「明日にかける橋」、「アメリカ」、後々にテンプターズもカバーしていたことを知るMelody Makers「Stop the Music」などなど。ただビートルズのものがなかったので、やや落胆した記憶がある。
 まず気に入ったのはCCRだった。何しろノリが良くてメロディーがわかりやすい。当時最大のヒットメーカーだったのではないか。印象に残っているのは「人々は僕たちをビートルズとポスト・ビートルズをつなぐ存在だというけど、実は僕たちこそがポスト・ビートルズかもしれないよ」というジョン・フォガティの発言。自信満々である。
 S&Gは「明日にかける橋」はもちろん名曲なのだが、「アメリカ」の世界に魅了された。まだ付き合って間もない恋人同士が、アメリカを探しに出かけ、やがて途方に暮れる、といった世界は、実に想像力を掻き立ててくれた。
 放課後、親父が買ったナショナルのテクニクス・ステレオの前でこのような音楽に向き合う日が続いた。飽きることはない。間違いなくこれが私の洋楽、そしてロックとの出会いだった。

 その中に金髪のボーカリストと黒髪のギタリストをフィーチャーしたタイトルが2枚混ざっていた。赤いパンツがかっこいい。
 私の中ではほかのグループと横一線の未知のバンドだった。何気なくターンテーブルに乗せて針を落とす。そのサウンドを表現する語彙を子供だった私は持っていなかった。ハードロックもブルースもサイケデリックなどのジャンルを知る前だったからだ。
「胸いっぱいの愛をc/w.サンキュー」「リヴィング・ラヴィング・メイドc/w.Bring it on home」
 その名は、Led Zeppelin。このシングルカットが収録されたアルバム「Ⅱ」の発売が1969/10/22であったので、かなり時間は立っていた。1度目の来日が1972年だったと思うので、あまり時間を置かずに聴いたことになる。
 しかしラジオで「胸いっぱいの愛を」がオンエアされた後、DJが「レッド・ツェッペリンの置き土産云々」と説明していたのを鮮明に覚えている。その時思ったのは、「このバンドは現役なんだ」
 この曲が新しいのか古いのかすらも評価できなかったのだ。

<Led Zeppelin>
グッド・タイムズ・バッド・タイムズ - Good times bad times
2. ゴナ・リーヴ・ユー - Babe I'm gonna leave you
3. ユー・シュック・ミー - You shook me
4. 幻惑されて - Dazed and confused
(1.~4. アナログ盤A面)
5. 時が来たりて - Your time is gonna come
6. ブラック・マウンテン・サイド - Black mountain side
7. コミュニケイション・ブレイクダウン - Communication breakdown
8. 君から離れられない - I can't quit you baby
9. ハウ・メニー・モア・タイムズ - How many more times
(5.~9. アナログ盤B面)
*オリジナル盤発売日: 1969/1/12

 確か一番最初に買ったLZのアルバムは、「Ⅳ」だった様な気がする。Ⅰではなかった。で、そのほかのアルバムを後追いで買いそろえていった。高校時代だったが、ファーストとⅡ、Ⅲ、Ⅳ、Presence、狂熱のライブは高校時代に買っている。
 聴きなおすと実にバラエティー豊かなアルバムだ。ハードロック(1,7)、アコースティックバラード(2,5)、ブルースロック(3,8,9)、インド(6)などなど、ソングライティングの水準は相当高いように思われるが、実は2,3,4,6,8,9と9曲中6曲はカバーもしくは露骨なパクリなのだ。
 また、本人はしらばっくれているが、3はすでに第1期JBGがTruthでカバーを発表しており、これまたパクリとの誹りはまぬかれない状況である。

 ローリングストーンズのファーストは2曲を除いて(Tell me, Little by littleの2曲。Now I’ve got a witnessは元歌のインスト版)カバーだったというのとは意味が違う。「先達の胸を借りる(そして印税も進呈する)」という殊勝な態度ではなく、略奪的にパクったのだ。「10年後に残ってるのは自分たちだからな」くらいの勢いである。
 ギターはフェンダー・テレキャスとスプロという小型アンプの組み合わせだという。
Ⅱに比べギターサウンドはややコンパクトで硬質な印象を受ける。テレキャスとレスポールスタンダードの違いが大きいだろう。
 そして感じるのは、おそらくはスタジオライブ的に録音したのであろうが、巧妙にアレンジとスタジオワークが施されていることだ。ここがラフに録音しましたといった感じの先行のJBGとは異なるところだろう。
 このアルバムを私費を投入し30時間で仕上げたペイジは、きれいに包装してアトランティックレコードのドアを叩いた。凄腕セッションギタリストとして、そして元ヤードバーズのギターの名手の新バンドはオーディションなど受ける必要はなかったのだ。

<Ⅱ>
胸いっぱいの愛を - Whole lotta love
2. 強き二人の愛 - What is and what should never be
3. レモン・ソング - Lemon song
4. サンキュー - Thank you
(1.~4. アナログ盤A面)
5. ハートブレイカー - Heartbreaker
6. リヴィング・ラヴィング・メイド - Livin' lovin' maid (she's just a woman)
7. ランブル・オン - Ramble on
8. モビー・ディック - Moby dick
9. ブリング・イット・オン・ホーム - Bring it on home
(5.~9. アナログ盤B面)

*オリジナル盤発売日: 1969/10/22

 すでにシングル盤で1,4,6,9は聴いていたのだが、アルバム単位で聴いたのはかなり後だった。近所の土建屋成金のばか息子が、私が「Zeppelinは凄い!」と騒ぐものだから買ってみたけど、まったく良くない(良さがわからない)と愚痴るんで、買ってやったということだったように記憶している。
 「まったくあいつの感性は豚だわ」と思いつつ1に針を落としたのだが、「?」であった。
 音の感触が違うのだ。シングルの方が圧倒的に迫力があり、ラウドで、ぐいぐいと迫ってくるのだ。アルバムは何か薄い膜がかかっているような、やや遠くで鳴っているような感じなのだ。おそらくはシングル盤はモノラル録音、日本盤LPはステレオ録音のレイト・イシューというところに起因するサウンドの違いであったのだろう。だからしばらく真剣に聴かなかったのだ。
 今では米オリジナル盤(ほんとかディスクユニオン?)、2014リマスターLP、同CDなどを買いそろえて(まあ、In through~とCoda以外のアルバムはどれもそうなのだが)、ギターを弾きつつ聴いている。もしかしたら私のfavoriteかもしれない。ファーストよりもブルージー&ハードに焦点が絞られ、多様性よりは一貫性を追求した感がある。一息つけるのは4と7くらいで、ソフトかつジャージーに始まる2も、途中でハードなパートが盛り込まれ、ソフトさはこのハードさを強調させるためのものだとわかる。
 そして全編を貫くブルージーな感触。このアルバムはブルースしか弾けない私でも、通して、なんとなくではあるが弾けるのだ。ほぼ全編ペタトニックスケールなのだ。また、変則チューニングはたぶん8の6絃ドロップDだけだろう。出てくるギターの音の印象が非常にストレートなのだ。聴きなじんだスケール。この対極にあるのが次のⅢなのではないか。
 もしかしたら彼らはこの究極のブルースロックから離れたくなったのではないか。Ⅱのようなアルバムを2枚続ければ、「典型的なブルース出のハードロックバンド」という印象はぬぐいがたくなったことだろう。
 同時に「ブルージーなハードロックではないもの」を多分彼らの頭と肉体が求めていたのではないか。
 そして彼らは山小屋(ブロン・イ・アー)へと向かう。

<Ⅲ>
移民の歌 - Immigrant Song
2. フレンズ - Friends
3. 祭典の日 - Celebration Day
4. 貴方を愛しつづけて - Since I've Been Loving You
5. アウト・オン・ザ・タイルズ - Out on the Tiles
(1.~5. アナログ盤A面)
6. ギャロウズ・ポウル - Gallows Pole
7. タンジェリン - Tangerine
8. ザッツ・ザ・ウェイ - That's the Way
9. スノウドニアの小屋 - Bron-Y-Aur Stomp
10. ハッツ・オフ・トゥ・ロイ・ハーパー - Hats Off to [Roy] Harper
(6.~10. アナログ盤B面)

*オリジナル盤発売日: 1970/10/5

 「大方のファンがこのアコースティックサウンドに戸惑った」、という風に「ロック名盤ガイド」の類では書かれることになるが、本当にそうか?
 私は戸惑わなかった。A面ばかり聴いていたからである。A面の前作同様のハードさに魅了されて、B面は1~2回聴いただけだった。かったるいのである、欲求不満の高校生には。いや、わからなかったというのが正しい。でも高校生でB面を愛聴して、「いやあブリティッシュトラッドって、たまらない」などと言っていたらむしろおかしいのではないか。
 高校生男子は「移民の歌」である。何たる高揚感!全体に音が軽くややコンパクトに感じられる録音だが、完成度は高い。リードギターやオブリガートを排してひたすらタイトに決める。ライブではギターソロを弾いているが、このリズムと展開の少ない曲調でアドリブをこなすのはいかにも難しそうだ。(伝説のライブでも手こずってる感が強い。BBCライブはかなり快調に乗っている)だからこのアレンジは正解なのだ。
 5もひたすら格好いい。変拍子が織り込まれ、リズムのマジックが炸裂する。これもリードギターはなし。またしても正解である。
 3は「狂熱のライブ」のヘビーかつハードなヴァージョンを先に聴いてしまったためおとなしく感じるが、LZらしいストレンジなハードロックである。後々これはカントリーブルースのハードロック化であると知る。なるほど、アコギでテンポを半分にしたら「もろ」である。2もインド情緒満載で好きな曲調である(後年CSNのパクリであると知る)。
 そして4。まだ世界の狭い、本物の黒人のブルースなど聴いたことがない地方の高校生は「これぞブルース!俺は今ブルースを聴いてる!」と興奮したものだ。が、その後本物の黒人のブルースを聴き、彼らの演奏するシカゴブルース、アーバンブルースのどれとも違うということがわかる。ブルースというよりも、ブルースを素材として、ブルースではありえないマイナーなメロディを乗せ、静かにそして激しく演奏をしたオリジナルだったのだ。つまり「ロック」なのだった。
 紙面の都合でB面について触れることはできないが(うそ)、当初はテンポのあるギャロウズボウルが印象に残ったぐらいだったが、10のハッツオフ~などは、なかなかにアヴァンギャルドな演奏で、音響処理も異常かつ変態で面白い。ただ高校時代は、なかなかここまでたどり着けなかったのだ。

<無題(通称Ⅳ or Four Symbols)>

1.ブラック・ドッグ - Black dog
2. ロックン・ロール - Rock 'n' roll
3. 限りなき戦い - Battle of Evermore
4. 天国への階段 - Stairway to Heaven
(1.~4. アナログ盤A面)
5. ミスティ・マウンテン・ホップ - Misty mountain hop
6. フォア・スティックス - Four sticks
7. カリフォルニア - Going to California
8. レヴィー・ブレイク - When the levee breaks
(5.~8. アナログ盤B面)

*オリジナル盤発売日: 1971/11/8

 前述したようにこれこそが初めて買ったLZのLPレコードだった。米国のレイト・イシューで、米国盤らしくジャケットのつくりもややイージーな感じだった。当時のレビューに「A面の完成度の高さに比べて、B面はやや弱い」とあったので「そうか。A面に比べてB面は弱いのだな。なるほど、弱い」などと感じていたのだが、とんでもない。いや、A面の強力さを否定するつもりは毛頭ないが、5、6、8は強烈である。音が塊となってスピーカーから体めがけてぶち当たってくる快感はA面の構築美の中には見いだせないものだし、この感触がこれから後のLZサウンドの肝になることになる。
 ちなみにこのアルバムは我が家のステレオで初めて大音量で鳴らされた「ハードロック」で、その爆音に驚いた祖母のつるさんが階段から転げ落ちたという逸話が残っている。

 1は、まあ驚いた。ギターとボーカルのコール・アンド・レスポンス形式で、これぞハードロックという音と構成。ギターサウンドもかなり凝っていて、変態的で素晴らしい。LZ以前にこんな構成のこんな音は聴いたことがなかった。
 2はすでに「狂熱のライブ」のヴァージョンを聴いていたので、やや平面的なアレンジに聴こえてしまった。狂熱のライブのバージョンはギターリフが、やや食ったテンポで入ってきて、ボーカルのフェイク気味で最高にかっこいいのだ。まあ、後にフェイクではなく声が出ていないと知るのだが。
 3も重要曲だが何といっても4だろう。初めてアナログを聴いたときは、呆然自失というか、前代未聞というか、腰が抜けたというべきか、それはすごいショックだった。ギター1本の伴奏から徐々に複数のギターが重ねられ、ボンゾの決定的なドラムが合流し、まさにロックとしか言えない心地よい緊張感が流れる。そして12弦ギターが高らかにファンファーレを鳴らし、ペイジ曰く「即興」の究極ともいえるペンタトニックのギターソロが始まる。最初に聴いたときはあまりの感動に椅子から立ち上がれなかったほど。   
 ただし彼らにこれほど展開の多い曲は他になく、むしろ異色作といってよい。

 B面の3曲(7を除く)は、確かにA面に比べれば地味であるが、次作の聖なる館~フィジカルグラフィティに確実につながるサウンドか聴ける。
 むしろこちらが後期LZのサウンドの特徴である「音の塊をぶつけるような」サウンドである。5,6,8ともリフで固めた曲調で、しかも長いギターソロはない。ブリッジで短いフレーズをきらめかせる程度。6に関してはそれはギターですらないような音が鳴り響く(シンセか?)。
 これらが次作次々作の何曲かと入れ替わったとしても、そんなに違和感はないはず。特にフィジカルとの共通項は多いようだ。カスタードパイ、死にかけて、ワントンソング、シックアゲインなど、音の感触は似ている。
 8なんか今では「これぞLZ!」といった扱いではないか。つまりボンゾのドラムがリード楽器のような働きをしているので、リードギターが極めて短くても曲として「持って」しまうのだ。リードギター中心の初期の演奏とは別の「魅力」「聴かせどころ」ができているのだ。

 まとめると、A面は今までのLZの集大成、B面は新生面と言いたい。「だからこそ」B面は弱いなどという評価が生まれたのだ。「リフで始まってボーカルとリズムセクションが入り、リードギターが炸裂する」という典型的なサウンドから、より「音楽の核心を叩きつける」系へとシフトしつつあるのだ。
 次のアルバムではそれがより露になる。

<聖なる館>
1.永遠の詩 - The Song Remains the Same
2. レイン・ソング - Rain Song
3. 丘のむこうに - Over the Hills and Far Away
4. クランジ - Crunge
(1.~4. アナログ盤A面)
5. ダンシング・デイズ - Dancing Days
6. ディジャ・メイク・ハー - D'Yer Mak'er
7. ノー・クォーター - No Quarter
8. . オーシャン - Ocean
(5.~8. アナログ盤B面)

*オリジナル盤発売日: 1973/3/28

 これは発売当時ぼろくそに言われてた記憶がある。レコードコレクターに「Ⅲの変化には戸惑ったが、もうファンはLZの変化に戸惑うことはなく、むしろ楽しんだ」みたいな評があったが、「それは違うでしょう。当時の評価を捻じ曲げているのでは?」と思ったものだ。
(余談だが、鈴木慶一氏は同じくレコードコレクター誌のThed Band “Music from the Big Pink”特集のインタビューで、当時のThe Bandはポストビートルズ的な存在だったかのような発言をしていて、まったく違うだろ!と憤慨したことを思い出した。当時ポストビートルズと言われていたのは、西はT.Rex、東はCCRだったはずで、特にレコードセールスの面ではCCRはポストビートルズの最右翼だったはずである。いや、リーダーのジョンフォガティは先述の通り「世間は僕たちをビートルズとポストビートルズをつなぐバンドといっているけど、案外僕たちがポストビートルズかもしれんよ」みたいなことを言っていたんだよ。まあ、いいけど。言いたかったことは少なくても日本でのThe Bandの一般的な人気はそれほど高くはなかったはずだ、ということである。長い)
 当時のファンは、Ⅲの時以上に落胆したはずである。いとこの淳ちゃんなどは「腐ったプログレ」とこき下ろしていたし、後年ある女性のファン(職業は失念)は、「これでLZは終わったと思ったが、デジャメイクハーがジャマイカのもじりだと知って、LZまだまだ行ける、と思った」とか(やや意味不明)。

 その理由は分かる。音を聴けばわかるのだ。
 つまりブルースベースのハードロック、聴き手をねじ伏せるようなギターリフ、ハードでスピーディーな(ペイジ得意の3連を駆使した)リードギターが聞こえてこないのだ。OceanにしてもDancing Daysにしても、ブルース臭がなく、大サビがない感じなのだ。ずしんと来ないで、妙に軽い印象なのだ。オープニングトラックの1も、同じ印象である。
 加えて、4,6は初めて聞く妙な曲調で「LZらしく」ないし、7はまさに「プログレが腐ったよう」な軟弱なサウンドである。

 なんかぼろくそ言ってるようだが、本当にそういう感想が大半だったのだ。試しにLZファン100人にⅣとこれとどっちが好きかアンケートを取ってみればよい。おそらく9割がたがⅣであるだろう。こちらを選ぶのは己の先見性を誇示したい輩のような気がする。

 しかしこの「ぼろくそ」こそが、Ⅳで述べたLZの新生面だったのだ。かなり強引な例えだが、ゆらゆら帝国のラストアルバム「空洞です」に近いものを感じる(その制作者の精神性の点で、です)。
 つまり「完成度」「安定感」を放棄したような感じ。「もう俺たち完成度など重要視していないもんね」という態度である。「こんな音聴いたことないだろ?こんな曲初めてだろ?俺たちをいつまでもハードロックバンドと思ってくれるなよ」ちなみにジェフベックがBBAを結成した時にはLZはすでにこのアルバムを発表していたのだ。
 ベック、きついよね、これが相手じゃ。迷信VSCrungeという。
 しかしこのアルバムは頻繁には聴かない。だからか、妙に気になるアルバムでもある。そういう状態、気分を残しておきたいという思いはある。

<Physical Graffiti>
◆ディスク:1

  1. カスタード・パイ - Custard Pie

  2. 流浪の民 - The Rover

  3. 死にかけて - In My Time Of Dying
    (1.~3. アナログ盤1-A面)

  4. 聖なる館 - Houses Of The Holy

  5. トランプルド・アンダー・フット - Trampled Under Foot

  6. カシミール - Kashmir
    (4.~6. アナログ盤1-B面)
    ◆ディスク:2

  7. イン・ザ・ライト - In The Light

  8. ブロン・イ・アー - Bron-Yr-Aur

  9. ダウン・バイ・ザ・シーサイド - Down By The Seaside

  10. テン・イヤーズ・ゴーン - Ten Years Gone
    (1.~4. アナログ盤2-A面)

  11. 夜間飛行 - Night Flight

  12. ワントン・ソング - The Wanton Song,

  13. ブギー・ウィズ・ステュー - Boogie With Stu

  14. 黒い田舎の女 - Black Country Woman

  15. シック・アゲイン - Sick Again
    (5.~9. アナログ盤2-B面)
    *オリジナル盤発売日: 1975/2/24

 これは高校3年の時に同級生のガソリンスタンドの息子から借りたのが最初だった。
 ガソリンスタンドの経営と言うのは儲かるのか、そいつはとても羽振りが良く、主にプログレを中心にレコードを買い集めていた。口癖は「これからは乗るロックではなく、考えるロックだ」というもので、ストーンズやLZを下に見るようないけすかないところがあった。
 ただ田舎のこととてロックを語り合うような友人は多くはなかったので、そいつともよく話をした。
 例えばトッドラングレン「RA」、サードイヤーバンド「マクベス」、10CC「びっくり電話」、ゴングなどなど。今にして思えばどうってことはないのだが、当時の田舎では「プログレッシブな」趣味だったのだ。ふん!

 主に1枚目の両面をよく聴いていたのだが、なんとも充実感のある音だと思ったものだ。充実感のある音というのも変な話だが、聴いていると気持ちが充実してくる、まさにそんな感じなのだ。
 特にA1,2,B1,2を聴くとそれを強く感じた。多分それはリズムセクションのかつてないほどの安定感のせいではないか。ミディアムテンポで、重心の低いバックビートに被さるギターは決して走らない。リズムにしっかりと乗ったリフでありソロである。それでいて決め所は決める、といったツボを押さえたフレーズ。
 プラントももはやスクリームはできなくなったため、むしろ野太い地声で叩きつけるように歌う。新しいスタイルである。
 3、6はいずれも10分を超える大作で、特に6は、その雄大さ、非西洋的なメロディー、トリッキーなリズムなど兼ね備えたLZの代表作と言われている。実際ブリッジの演奏で感じるめまいのような、あるいは異国の地に吸い込まれていくような感覚は格別のもので、唯一無二の世界といって間違いではないだろう。   
 そしてここにもリードソロはない。多分ペイジは曲がソロを求めていないと見抜いたのだろう。移民の歌がそうであったように。また、ソロを挿入することなく、グルーブを聴かせるというスタイルは言うまでもなくⅣのB面の新生面だった。
 あれも相当な傑作だったが、ここでは更に胸を揺さぶるような大傑作に進化させたのだ。
 2枚目はこれらのような大作はなく、コンパクトにまとめたという感じだ。感じるのはやはり充実感である。

<Presence>

1.アキレス最後の戦い - Achilles Last Stand
2. フォー・ユア・ライフ - For Your Life
3. ロイヤル・オルレアン - Royal Orleans
(1.~3. アナログ盤A面)
4. 俺の罪 - Nobody's Fault But Mine
5. キャンディ・ストア・ロック - Candy Store Rock
6. 何処へ - Hots On For Nowhere
7. . 一人でお茶を - Tea For One
(4.~7. アナログ盤B面)

*オリジナル盤発売日: 1976/3/31

 これも高校時代のヘビーローテーションだった。A1とB1に心底やられた。ほかの当時のヘビロテを列挙すると、エアロスミス「Rocks」「Draw the Line」、David Bowie「Heroes」、Rolling Stones「Let it Bleed」[Sticky Fingers]「Love you Live」Queen「Ⅱ」「Sheer Heart Attack」、Al Cooper「フィルモアの軌跡」、Eric Clapton「EC was here」、「Live Cream Ⅱ」「Desraeli Gears(カラフルクリーム)」、Yes「Yes Songs」「海洋地形学の物語 (まじなんだこれが)」、ELP「展覧会の絵」、Free「Free Story」などなどである。実に多様というか、支離滅裂である。
 基本的にはハードなロックに惹かれながらも、プログレなど異分野にも興味津々、といった様子がうかがえる。King Crimsonの「宮殿」なんかもこの当時買った。実に1970年代はロックの黄金時代だったことがわかる。

 特にPresenceと並んでエアロのRocks~Draw the Lineは、アメリカンハードの頂点という感じで聴きまくった。当時はすでにPunkも台頭していたが、それはそれこれはこれという感じで熱中して聴いた。Rocksは文句なし、だったがDraw the Lineはやや曲にばらつきが出た感じがした。しかし勢いで押しまくるというか、前作よりもリフはシンプルになり、リズムはファンキーになってかっこよかった。
 そう、ファンキーだと感じたのだ。Get it upのノリとか、女性シンガーとの掛け合いとかたまらなかったし、Sight for sore eyesのノリもゴリゴリしていて、実にエアロスミス、Joe Perryらしい。で突如泣きのギターが炸裂するところなんかたまらなかった。

 そして、Presenceなのだが、同じくファンキーなハードロックといっても、様子が異なる。2、3、5、6などがそうなのだが、あのリズムセクションにして、妙にこなれていないのだ。エアロのファンクが相当現場(ライブ)で練られてきた感じなのに対して、妙に硬直しているのだ。スムーズでないというべきか。5、6にそれは顕著で、ファンクというよりは全く新しいリズムを手に入れたバンド、という感じ。やや手探りでアンサンブルを組み立ててみました、という感じ。3はよく言われるようにニューオーリンズ、ミーターズの影響もしくはパロディーのようで、左記の2曲に比べるとぴしゃりと決まっているのだが、これを4人がステージで演奏する姿はあまり想像できない。密室の中のファンクという感じが濃厚なのだ。

 まあ、ここは1と4で決まり、というか当時はほぼその2曲だけを聴いていたようなものだった。ヘッドフォンをつけて、ボリュームを上げて、ギターソロになると叫びたくなるような、そんな気分だった。いや、本当に叫んでいたのかもしれない。
 高校時代、むらむらの青春である。

<狂熱のライブ>

◆ディスク:1

  1. ロックン・ロール - Rock And Roll

  2. 祭典の日 - Celebration Day

  3. 永遠の詩 - The Song Remains The Same

  4. レイン・ソング - The Rain Song
    (1.~4. : アナログ盤1-A面)

  5. 幻惑されて - Dazed And Confused
    (5. : アナログ盤1-B面)
    ◆ディスク:2

  6. ノー・クォーター - No Quarter

  7. 天国への階段 - Stairway To Heaven
    (6~7 アナログ盤2-A面)

  8. モビー・ディック - Moby Dick

  9. 胸いっぱいの愛を - Whole Lotta Love
    (8~9 アナログ盤2-B面)
    *オリジナル盤発売日: 1976/10/22

 これは高校2年の時に購入した。初めてミュージックライフを購読した時分にリリースされたはず。レコード購入に先駆けて1や2をFMで聴き、なんてかっこいい演奏かと思った。特に1のプラントのボーカルは自分の中ではこの曲のデファクトとなっており、遡ってⅣを聴いたときは妙にストレートに歌っているなと、変な話、違和感すら感じた。ライブとスタジオとの違いとかあまりよくわかっていなかったのだが、確かにライブは少々フェイクした歌い方になっていて、これがかっこよかったのだ。また1973年の演奏で高い声が出づらくなっていたせいもあるのだろう。
 リリース直後のミュージックライフのレコ評で福田一郎が「なぜ前年のライブではなく、翌1973年のライブなのか」と疑問を呈していたが、その理由は後年リリースされた「伝説のライブ」を聴いて理解できることになる。
 1972年のそれはボーカル、演奏、選曲とも完璧なのだ。彼らの武器である自由自在なアドリブ、これでもかという長時間のバンドでのアドリブプレイ、そして「移民の歌」で聴けるプラントの超ハイトーンボーカルなど、まさにこれぞLZという演奏。
 比べて1973年は、演奏はともかくプラントのハイトーンにやや陰りが見えるのだ。あの超人的なボーカルを経験した者には、抑え気味、フェイク気味のボーカルは「いまいち」なのかもしれない。(ただし1972年の「天国への階段」のキメの部分はすでに抑えて歌っているのだが)

 2枚組だが、やはり一番よく聴いたのはA面だった。特に1~4の流れが絶対的にかっこよく、狂ったように聴いた。この数十年後に「最強盤」がリリースされ、たぶんそれは実際のコンサートを再現したのだと思うが、1、2と3、4の間にBlack DogとOver the hill~が挿入されることになった。これが実に微妙なのだが、オリジナルでは思い切ってカットして、アルバムの「流れ」を作ったのだろう。
 いま(2019年12月)バンド再開に向けて1を練習しているのだが、まさかこの素晴らしいソロ、リフの合間に差し込むスピーディーなオブリを曲がりなりにも弾けるようになるとは夢想さえしていなかった。それほど神がかったギタープレイに聴こえたのだ。だからオブリを後日オーバーダブしたのかなとも思っていたのだが、映像を見ると実際に弾いていて驚いたものだ。
 しかも、あのスピーディーなオブリにビブラートをかけて、独特なミステリアスな響きを醸し出しているのだ。弾いてみればよく分かるが、ビブラートの有無によって音の印象が全く変わることに驚く。早速真似してみたが、ビブラートをかけると、ローコードのメインリフへの戻りが若干遅れ、フレーズが死んでしまう。ある程度慣れとはいえ、これをライブで楽々とこなすのは並大抵ではない。
 つまり必死に弾いているのではなく、余裕綽々に弾いているのだ。
 2も同様で、まだまだなんちゃっての域ではあるが、それっぽく弾けたときやBメロのコードを探し当てたときは本当にうれしかった。高校当時はコピーなどできるものではないと思い込んでいたのだ(せいぜいLiving Loving Maidのリフくらい。しかも間違っていた)
 これはカントリーブルースの弾き語りを電化したもので、リフがローとミドルのリフをスピーディーに行き来する。

 あと、当時感じたことは、
・Mobby Dick:カセットテープに録音してベッドで良く聴いた。最後のズドドとバスドラで畳みかけるところでMobby Dick(白鯨)の映像が迫ってきた。そして序盤に聴こえるタンバリンをだれが叩いているのかがわからなかった。プラントがドラム横で叩いているのかとも空想した(実際はボーナムがハイハットに載せていた)
・天国への階段:リードギターが冴えないと感じた。これは原曲通りに弾いてほしいところだと思った。2007年の奇跡の再結成では、オリジナル通りに演奏していた。このソロに関してはそれでいいのだ!
・Whole Lotta Love:「JB張りのファンキーなリズムに変貌」とか雑誌に書いてあったが、ファンクすら知らない高校生は何のことかわからない。やたらリズムがズンドコしている。間奏でいきなりアップテンポしてギターが16分音符を掻き鳴らす。あとはライブならではの自由な展開で、ペイジの発するきっかけにメンバーが反応していく。
 最後のドカンの花火大会は映像を見て初めて知った。

<In Through the Outdoor> 
イン・ジ・イヴニング - In the evening
2. サウス・バウンド・サウレス - South bound saurez
3. フール・イン・ザ・レイン - Fool in the rain
4. ホット・ドッグ - Hot dog
(1~4 アナログ盤A面)
5. ケラウズランブラ - Carouselambra
6. オール・マイ・ラヴ - All my love
7. アイム・ゴナ・クロール - I'm gonna crawl
(5~7.アナログ盤B面)

*オリジナル盤発売日: 1979/8/15

 LZのオリジナルラストアルバムはバンド史上最大の駄作であった、と言って一件落着としたい。
 1を最初に聴いたときは「アラビックなイントロを引き裂くプラントのボーカル、リードギターはなんやらぐしゃぐしゃの効果音のようでかっこいい!
」とは思ったが、いかんせん後が続かない。全体的にノリが軽いのだ。2と5は何やら今まで聴いたことのないようなサウンドだが、これがいいか、バンドが出すべき音かと問われれば否だし、あまりにも先鋭的で速すぎた傑作かと言われれば、今聴いてもだめだこりゃというしかない。
 3もなぜLZがサンバをやるのか。もちろんカシミールやBlack Mountain Side、In the Light(インド、モロッコ)、一連のブルース(アフリカ~北米)、限りなき戦い(英国トラッド)などなど異国、非日常の音やリズムを取り入れてきたLZではあるが、必ず彼らなりのヘヴィネスを曲の土台に設定して独自のLZサウンドへ変容させていたはずだが、これはそのまんまサンバである。ボーナムのドラムは重たいが、サンバはサンバのままである。
 4はもろC&Wである。ブラックカントリーウーマンはLZカントリーの傑作だったよな。スノウドニアストンプだってリズムのトリックにLZの名前が刻印されていたよな。でもってこの子供が弾くようなリードギターをどのように評価してよいのか。う~ん、ドラッグ摂取過多?
 プラントが亡き息子にささげた6は泣けるが、その背景を知らなければ軟弱な泣きのバラードである。
 7は、しかし傑作である。重厚なシンセに導かれてプラントが慎重に言葉を紡ぎやがてゴスペル風に畳みかけ、ペイジのギターはこのアルバムで初めて歌い上げる。ゴスペルバラードの傑作といってよいが、LZのアルバムの中で最良の曲・演奏がバラードというのはあまり良いことではないのではないか。
 しかしこのアルバムはバカ売れしたのだからわからない。しかもボーナムの死後リリースされたCodaで、従来のこのバンドの本領ともいうべきヘヴィー&ハードな数曲が没にされていたことがわかり、この選曲は確信犯的なものだったことが判明する。
 ということは、意図的に従来のイメージから逸脱した作品を作ってリリースしたことになる。あえて批判を覚悟?新境地を世に問うた?ペイジのドラッグ禍に付け込んだJPJの暴走?
 謎である。

この後のCodaについてはまた後日。

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