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降水確率0%の通り雨《君の落雷 僕の静電気体質》3

「あきら、起きなさい、遅れるわよ」
「ん、」
ここは、と意識が1回転する。柔らかい布団、明るい部屋、僕の好きなーって時間!?
「おはよう」
見知らぬ彼女に挨拶する。
「おはよう、珍しいこともあるものね。いつもは目覚まし時計が鳴る前に起きる子が、これは大災害の予兆ね」
「大げさだよ、ちょっとね、調べものしてて」
普通の会話が続く。こうなるまでに何年かかったことか。見知らぬ人ではあるが、1分もすれば”お母さん”になる。そう認識する。
「最近また何か作っているようね。教えてくれないのかな~世紀の大発明だったり?」
笑いながら彼女が言う。”また”という言葉に彼女が僕の生活に密接している人だとわかる。心のどこかでごめんねとつぶやいて、話を続ける。
「そんなんじゃないよ、まあ、完成したら生活がちょっと便利になるかなって程度」
「あなたの発明はちょっとどころじゃないでしょ。まあいいわ、完成を楽しみにしてる。さ、ご飯食べて、早くしないとたける君が来るわよ。」
いただきますをしてご飯を頬張る。彼女のー母の作る料理はいつも美味しい。手が込んでいるというより味付けが絶妙だ。記憶がないくせに、ご飯のおいしさはしっかり覚えている。食道楽なんだお前はと幼馴染は言う。ん?食い意地が張っている、だったかな。どちらにせよ失礼なことを言われているよね。
ご飯を食べながら夕べの夢の事を思い出していた。
長い永い夢
夢の中の僕は平安時代の人だった。あれは過去世?僕の前世の夢だったのかな?きっとあのまま死んじゃったよね。病気だったかもしれないし、なによりがりがりに痩せてたじゃん。体力なさそう。
それに、あのちび君がからもらったごはんって、どう見てもシリアルだよね、水だってペットボトルじゃん。夢と現実が混同したのかな。
ということは、やっぱりただの夢、なのかな、でも真実味あったよな、熱波なんて本当に痛かった。
そんなこと考えていたら、たける君来たわよ、って母が呼ぶ。慌てて食器を流しに運び、ちょっと待ってて、と声をかけて洗面所へ向かう。
顔を洗って身なりを整え、カバンをもって玄関脇のリビングへと向かう。たけるはいつもそこで待っている。母が玄関先に立たせておくのが嫌だといったらしい。中学生のころからの習慣だ。
「おまたせ、たける、と、、、お、父さん、おはよう」
声をかけるまでに逡巡したのは、それが誰かと考えていたから。この時間帯、家にいること、たけるの態度、母の態度など、それらの要因から推測して総合的にこれは父なのだろう結論を出す。それにかかった時間。
「おはよう」
明るく笑って挨拶を返す”父”
「寝坊したんだって、雷雨発生確率は低かったと思うが読み間違いかもしれん」
「だから、大げさなんだよ、父さんも母さんも」
「だが、時間には正確なお前が寝坊なんぞ、この22年で数えるほどだからな。幼稚園の先生だっていつもあきれ、、いや感心してたぞ。」
「おじさん、」
たけるが話を切る。僕の前で過去の話は鬼門だ。
「あ、いや何でもない、時間なんだろう、気を付けていってこい」
「うん、ありがとう、行ってきます。」
明るい玄関を出て、更に明るい外界へ出る。空は真っ青、残念ながら父と母の予報は外れたようだ。気象予報士なのにね。雲一つない。
たけると並んで慣れた道を歩き、駅へと向かう。大学へは電車通学だ。ラッシュを避けるためいつも早めの電車に乗る。今日はそこまで混んでおらず並んで座ることができた。
「なにか作っているんだって?」
「なに?母さんに聞いたの?大したものじゃないしまだ実験段階だよ」
「実験、何の実験だ?」
「言葉尻をとらないでよ、実験じゃなくて、効果の確認?」
「きなくさいな」
「そんな危険なものじゃないよ」
「俺にもいえないか?」
「そのうちね、もう少し形になったらわかるよ」
「そうか?」
少しの沈黙、少し、相当、かなり、僕には後ろめたさがある。でも言えない。皆のためなんだ、きっとわかってくれる。
「夢を見たんだって?」
唐突にたけるが言う。
「それも母さんに聞いたの?」
「ああ、うなされたのか?それで寝坊したとか」
「違うよ、うーん違わないか、実はね、僕は夢の中で平安人で、、」

「でね、死んじゃったんだ、おしまい」
「死んだのか?」
なぜか、たけるが少しびっくりしてる。
「うん、死んじゃったと思うんだよね。病気でがりがりで、あの環境じゃ生き延びれないよって夢の話だからね?想像だからね?」
「そうだな、物語としてはありがちだな」
ああ、作り話として受け止めてるんだ、もちろんそうなんだけど、僕なんて前世かもなんて思いかけたんだから!
「でもお前は自分の前世を夢に見た、と思っているんじゃないか?」
えーーー
「そん、そんなことない、だってシリアルとかペットボトルとか平安にあるわけないもの出てきたんだよ。夢に決まっているじゃないか!」
「そこは少し現在が混ざっただけで、大体は実話だったとしたら?」
「そんなわけないって!それにあれが実話だとしてももう終わったこと、過去の事、今の僕には関係ない!」
「そうだな、着いたぞ」
いつの間にか降りる駅になっていて、あたふたとドアから降りる。電車に乗った時より少し気温が上がっていた。


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