Web小説発掘記 その209 私はモブ令嬢A?ポジなのに友人が毎回存在詐欺だと言ってくるのが誠に遺憾である。 作者 雪 牡丹様

本編URL

https://ncode.syosetu.com/n4126ik/

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第一章 君は迷子の子猫ちゃん』までを読んでの感想、レビューとなります。

あらすじ

ドキドキ、わくわく。

「この度当選した美少女系異世界転生者枠の初偉業は、印税の制定でした。」

身分は公爵令嬢(フラグ)、職業は冒険者での、副業が創作関連。
「———行きはよいよい、帰りはない」
例え社交界に出ずとも情報戦を制したくば、まず出版業界と夜のお姉さん達を押さえろ!!

不動の地位、尽きぬ財産。類まれなる、この顔面偏差値……だのに、原作は不明。
でも、深く考えてもどうしようもない。東洋ファンタジー×西洋ファンタジー両親から爆誕してしまったモブ公爵令嬢———『アトランティア・アールノヴァ』。

ある日前世の自分がテンプレトラ転をキメたが故に。この度めでたく当選した異世界ドキドキ転生者枠で、新たな人格が今の体にin。
それからと言うものの、色々気づいてしまう衝撃な事実……。

「今生の実家は監禁族? 所属したギルドもマフィア? ここは原作不明なファンタジー世界、その分前世のトラウマもあって「突然の死」は地雷です」

時には当事者、時には傍観者、またある時には巻き込まれ……地道に、そうやって上って行く大人の階段。
無駄にイケメンと遭遇するのに、運命の王子様が未だ現れない。
果たしてその様な世界で、アトランティアの運命は……??

ストーリーと見所

かなり独特の空気感で送られる女性向けの異世界ファンタジー小説。

内容としては異世界転生した主人公が、公爵令嬢に転生しそこでなんやかんやすると言うもの。このなんやかんやに関しては色々と言いたいことがあるので後述する。

作品として特筆したいところはやはりその文章のセンス。

他作品と比べてもかなり独自のものを持っており、話の最初に挟み込まれるポエムのような文章は読んでいて不思議な情景を思い起こさせる、作者さんのハイセンスさが目一杯発揮されたものとなっている。

丸で作者さんの精神世界をそのまま投げつけられているような作品世界は、好きな人にならばかなりの中毒性があるのではないだろうか。

と、まぁこの物語はかなり光る部分があるのだが、それはそれとしてそこそこに問題もあったりする。

上にも書いた「なんやかんや」なのだが、悲しいことに第一章を終えてなおこの物語が何をするのかが今一伝わってこない。後は独自の言葉や文脈的なもので語られる部分が多く、首を傾げるような部分も少なくはない。

ポエム的な部分に関してもそれ自体の出来はさておき、毎話ごとに入ってくるので文章量の割には話が進んでいないのが残念なところ。

とは言っても第一章の文章量自体がそれほどでもないので、そこに関してはまだ物語の本当に序盤、プロローグに当たるものと思うかは人によりけり。

ただし本当に、その世界観や流れるような不思議な文章は見る人によっては虜にする可能性を充分に秘めたものとなっている。

一章を読んでみて心に刺さるものがあるのならば、その世界観に浸ってみるのも悪くはない。

キャラクター

アトランティア・アールノヴァ

物語の主人公。

異世界転生した公爵令嬢なのだが、一章の時点では彼女が何故にモブ公爵令嬢なのかが全くわからない。

一応は美人であり、何やら前世も今世も人に好かれていることはわかるが……如何せん一章時点では情報が少なすぎる。

性格に関しても一人称で脳内を垂れ流されるのだが、大分独特な思考回路を持っているので……(この辺りは筆者が理解し切れていない可能性もある)なかなかどうして感情移入や共感もし辛いところ。

二章以降の活躍に期待したいところではある。

総評

評価点

脳内をそのまま魅せられているような独特の文章には、かなり味がある。

話の最初に差し込まれるポエム的なものもそうだが、それによって独特の作品世界を作り上げているのは間違いない。

そう言った部分や個性的な主人公などで、作品自体の独自性はかなりのもの。
文章を読んでいるだけで作者さんの語彙力や高いセンス、文章を組み立てる能力が伝わってくる。

問題点

如何せん全体的に癖が強い。

それに加えて誰の目線で語っているのかわからない場面が多々あり、読んでいて迷子になることがある。

一先ず一章の時点で話の方向性は知りたかったところ。

最終評価 52点(Web小説としては充分な良作)

いい意味でも悪い意味でもかなり独特な味付けがされている小説。

そう言った感じなので、ハマる人なら一気に物語の世界観に入り込めるのではないだろうか。

恐らくジャンルとしては溺愛もの……的なやつになるとは思われるので、そう言った作品が好きな人ならば是非読んでみてもらいたいところ。

作者さんの独特且つ、高いセンスが存分に発揮された小説。

所要時間は『第一章 君は迷子の子猫ちゃん』までで凡そ20分ほど。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?