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海賊とアジフライ。長崎県松浦市。グーグルマップをゆく㉒

 グーグルマップ上を適当にタップしてピンが立った町を空想散策する、グーグルマップをゆく。今回は、長崎県松浦市。

 松浦市は、中世の海賊・松浦党が拠点とした場所である。松浦党の祖は、松浦久という武将で、摂津の水軍・渡辺党の渡辺綱の曾孫とされている。

 松浦久が松浦郡宇野御厨の荘官となったことから肥前松浦党の歴史は始まる。元々摂津水軍・渡辺党の子孫であるため、水軍としての技術などは伝承されていたのかもしれない。

 また、松浦郡宇野御厨がどこの荘園だったのかはよくわからない。西園寺家に牛を送ったとの記録があるため、西園寺家の荘園だったのかもしれない。

 松浦市は、玄界灘に面しており、いくつかの小島も有している。このあたりは古代から朝鮮半島や大陸との交易が盛んな場所であった。

 松浦党は、源平合戦において活躍し、蒙古襲来では最前線で元の軍を迎え撃った水軍である。また、建武の乱で九州に降った足利尊氏が、再び京に登る際に同行したとされている。中世史に絶えず活躍をしているといった印象である。

 ちなみに、松浦市は「まつうらし」であるが、当時は「まつら」といった。日本史にいて、海沿いで「浦」という字が付くところは「ら」と読まれる。

 そんな松浦市をグーグルマップ上で色々見て回っていると、鷹島という島に「アジフライの聖地」というのが目に入った。

 松浦市では古代より鯵はよく取れたらしい。しかしながら、フライは食べられていなかったはずである。日本でフライが食べられ始めるのは明治に入ってからで、しかもアジフライの発祥は、東京都銀座にある明治28年創業の洋食屋「煉瓦亭」と言われている。しかしながら、厳密には早い段階から一般家庭ではアジフライが食されていたらしい。

 ここで、着目すべきは、松浦市はアジフライの「聖地」と言っている点である。発祥とは謳っていない。2019年に松浦市が鯵の水揚げ量が日本一であることもあって宣言したらしい。正直、うまいアピールである。

 しかし、松浦市は元々前述の通り、朝鮮半島や大陸との交易が盛んであった。ひょっとしたら、古代からアジフライのようなものを食していたかもしれない。

 戦国時代、武士たちは戦の時の非常食として、兜を鍋として油を注いで天ぷらを食していた。簡単で携帯食としては手ごろだったらしい。それから考えると松浦党の海賊たちが、船上で兜に油を注いでアジフライを作って食していたとしても不思議はない。

 と、言うのはいささか飛躍しすぎだろうか。

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