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切磋琢磨空間

昨年まで勤めていた学校での常勤講師としての働き方をやめ、今年度から別の学校で非常勤講師として働き始めました。ざっくり言えば、非常勤講師というのは自分の担当授業の始業に合わせて出勤する働き方です。私の場合、給料は授業の数だけ発生する仕組みです。行動を起こすときには意識下、あるいは無意識でも目的があると思います。私の場合は資格の取得をするために集中できる環境を整えようと思ったことがきっかけで今年度の過ごし方を選びました。結果、経済的な安定のために頑張る必要が出てきている毎日です。現状は他にも仕事をしてやりくりしています。のんきに思われることは承知で、仕事の掛け持ちができるというのも豊かさだなと感じている次第です。

新年度から今までコントロールしようとも思わなかった時間帯を管理できるようになりました。午前中と呼ばれる時間帯、正午過ぎ、夕方から夜にかけて… 曜日によって変わりますが、それぞれの時間にさまざまな意味の付加を試みています。仕事のための作業、資格のための勉強、充実を実感するための休息といった感じでの割り当てです。

新しい生活も半月が経ち、自分の中でのわかりやすく変化したことがあります。それは、今まで利用するという選択肢にもなかったカフェの利用が増加したことです。高校時代には「カフェより友達とファミレスだ!」と思って行かなかったカフェ。大学時代には「カフェで作業している大人かっこいいな。でももし万が一飲み物に手がぶつかってこぼしちゃったらどうしよう。なんなら飲むペースが早過ぎて長居絶対できない。しかもお金ない」と思って行かなかったカフェ。

もちろん今経済的にはカフェの利用も控えた方がいいのですが(大丈夫になる目処は立っている)、社会人になってから時間・金銭感覚が変わったのか、気楽に入店しています。家でどうしても集中できないとき、大学時代にあった付属図書館は絶大な特権だったのだなと振り返り、今はカフェを活用しています。自分が成長したからでしょうか、コーヒーをこぼす心配がいらないくらいには客観的に見て落ち着いた人間であると理解できます。世の中に思う心配事の多くは起こらないとどこかで聞いたものです。私は現在カフェが大好きです。自分にとってのカフェは「切磋琢磨空間」だからです。

新年度初めての出勤日(1時間目に授業がある)、遅刻をしないために意図的に早く最寄り駅につきました。近くにカフェがあり、絶妙な待ち時間からコーヒーを体に流し込むペースを計算しながら初めての入店です。朝からカフェに入店すること自体も初めての経験になります。経験値のなさによりおそらく表情はこわばっていたでしょう。ぎこちない「アイスコーヒーでお願いします」を爽やかな店員さんが受け止めてくださり、緊張が解けました。アイスコーヒーを持って店内を見渡すと、こんな早い時間にも関わらず、多くの利用客がいました。各々の作業をしている社会人たちの姿です。その場にいた多くの人が仕事ではなく、朝活として英語の勉強をしていました。彼らは昨年度まで出勤時間的にも交通ルート・立地的にも目に入ることのなかった(大学時代は大学の近くに住んでいたため、こちらも知る由はなかった)存在です。その光景を見て、カフェはリラックス空間の役割だけではなく、「切磋琢磨」しあえる空間なのだなと感じました。

きっとその場にいる客に今後も話すこと、目を合わせることもないのですが、私は仲間意識を持っています。今もカフェを時々利用して、社会人という立場で頑張っている人を視界に入れ、自分を鼓舞しています。勝手に感謝させていただいています。昨年度までの8時間(ときどき+α)、同じ場所にいるという過ごし方が変化し、結果として1日あたりの会話量は確実に減りました。今の自分が孤独を感じず、頑張れているのは見知らぬ仲間たちがいるからです。退職を機に、ある意味では一つのコミュニティを抜けたのですが、結局社会という大きな世界の中にいるのだなと、誰かの背中を支える一員に自分も慣れてればいいなと、心に思った4月になりました。

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