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脳卒中片麻痺患者の入院中と退院後の活動量を調査し、退院後の在宅や屋外での活動を規定する要因を明らかにすること。

原著要約

対象: 回復期リハビリテーション病棟退院1ヶ月前に理学療法場面で監視歩行可能または歩行自立している脳卒中片麻痺患者28名。

方法: 活動量計を用いて1週間の活動量を記録し、平均歩数、1週間の3METs以上合計活動時間を算出した。退院後にはLSA、転倒自己効力感、LSNS-6を聴取した。

結果: 退院後3METs以上合計活動時間は入院中に比べ有意に増加した。入院中3METs以上合計活動時間は退院後3METs以上合計活動時間と相関を示した。退院後3METs以上合計活動時間はLSA2、LSA3と相関を示した。

結論: 退院後の脳卒中片麻痺患者の活動可能な範囲はLSA2から3である可能性が示唆された。

キーワード: 脳卒中片麻痺、活動量、生活空間

考察

本研究では、脳卒中片麻痺患者の入院中と退院後の活動量を調査し、退院後の活動量に影響を与える要因を検討した。

活動量の変化

入院中と退院後の平均歩数には有意差を認めなかったが、3METs以上合計活動時間は退院後に有意に増加した。これは、入院生活ではゆっくりとした歩行が中心であるのに対し、退院後の在宅生活では家事動作、段差昇降、屋外歩行など、より高い身体活動強度が求められることが要因であると考えられる。

また、入院中3METs以上合計活動時間と退院後3METs以上合計活動時間に相関を認めた。これは、入院中の活動量の程度が退院後の活動量に影響を与える可能性を示唆している。

退院後の活動量に影響を与える要因

退院後3METs以上合計活動時間はLSA2、LSA3と相関を示した。LSA2は「自宅内での移動」、LSA3は「近所への移動」を評価する項目である。これは、退院後の脳卒中片麻痺患者の活動範囲は、自宅内や近所への移動に限定される可能性を示唆している。

一方、転倒自己効力感やLSNS-6とは有意な相関を認めなかった。転倒自己効力感とは、転倒を回避する能力に対する自信を評価する指標であり、LSNS-6は社会ネットワークの規模と質を評価する指標である。これらの指標が退院後の活動量に影響を与えない可能性も考えられるが、今後の研究課題である。

今後の課題

本研究では、脳卒中片麻痺患者の入院中と退院後の活動量を明らかにし、退院後の活動量に影響を与える要因を検討した。しかし、以下の課題が残されている。

  • 対象者の数が少ないため、結果を一般化できない可能性がある。

  • 退院後の活動量を短期間しか測定していないため、長期的な変化を把握できていない。

  • 転倒自己効力感やLSNS-6が退院後の活動量に影響を与えない可能性も考えられるが、今後の研究で検討する必要がある。

今後、より多くの対象者を対象とした研究や、長期的な追跡調査を行い、脳卒中片麻痺患者の退院後の活動量を促進するための効果的な介入方法を検討していく必要がある。


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