故郷の風景
藤沢周平の随筆の中に、こんな話が載っていた。
【藤沢周平きき書き「とっておき十話」少年の頃の風景】
「やっぱり育った土地というものは人間形成に抜き差しなら
ない影響を残すものでそのせいじゃないかと思います。」
東京で暮らした年月は田舎から上京した年を遥かに超えた。
庄内で育ったワタシは鳥海山と麓に広がる田んぼの風景を毎
日眺めて育った。
晴れた日に、校庭に集合し鳥海山を背景に朝礼を受けていた
中学、小学校時代はなんて贅沢な時間を過ごしていたんだろ
うと思う。
今でも当時乗っていた陸羽西線に乗ると市内の高校へ通って
いた頃を思い出す。
あの頃は漫然と、当たり前にある景色としての認識しか無か
ったが、いざ故郷を離れて数十年も経つが、わが心の原風景
と言って過言ではない。
春の雪解けや、夏の青々とした稜線、冬の真白に染まった鳥
海山いずれの景色もそこで暮らした日々の記憶が錯覚として
残っている。
現実的には相当食い違っているだろう。
ただ郷愁の念が募るばかりである。
雄大な風景は人間のスケールを大きくさせるかと言うと答に
窮するが、その土地で暮らし、そこに生き、生活し、山や川
や草や木と触れ合った自分が懐かしいのであり、自分のその
時々刻々に見た一瞬の風景が焼きついている限り答えはそこ
に見出すことが出来るのだろう。
とにかくありがとうございます。