教団X

中村文則作の小説を読んだ。
主人公の交際相手が突如、姿を消した。主人公は知人の探偵に捜索を依頼したところ、交際相手がとある宗教施設に出入りしていたことが明らかになる。知らされたその場所に行ったところ、彼女はまた別の宗教組織の人間であることが分かる。次第にその組織を調べていく中で異常性が判明していき、日本全体に影響が及ぶような大事件が巻き起こされる。

簡単なあらすじはこんなところだ。登場人物はしばしば壮絶な過去を経験している。主人公が始めに尋ねた、アットホームな団体の長、松尾は大戦中に瀕死の状態で味方の危機に遭遇した。そんななかでも自身の保身のために逃げる選択をした。そこで自然・大地と一体となったような感覚を覚えた。臨死とはまた違う、悟りのような感覚なのだろうか。
全編通して壮大なテーマに挑戦している作品となっている。戦争や貧困、格差が主なテーマと言えるが、それに留まらず、現代日本の卑劣な政治、戦争に舵を切りかねない危うい状況に一石を投じた作品となっている。(公安が裏でテロを引き起こしているのはフィクションと信じたいが。)

闇の深い宗教団体、通称、教団Xのリーダー沢渡は医療行為と引き換えに女性を凌辱するような卑劣な人間である。彼は何に対しても執着を見せない人物であり、自身の破滅のためにテロを引き起こし、信者を平気で見捨てるような男である。そんな分断を招くような悪意に対して人はどのように立ち向かうべきなのか、そんな主張を受け取ることができた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?