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リサーチ・クエスチョンの作り方と育て方



星⭐️⭐️⭐️⭐️
マッツ アルヴェッソン 他2名
面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて
今回は、マッツ・アルヴェッソン、ヨルゲン・サンドバーグ、佐藤郁哉の共著による『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』という本の書評をお届けします。この本は、社会科学の研究者や学生にとって非常に役立つ一冊だと思います。なぜなら、この本は、単に既存の研究にギャップを見つけて埋めるというような、つまらない研究をするのではなく、批判的に問題を見つけて、面白くて刺激的なリサーチ・クエスチョンを作り出す方法を提案しているからです。


この本の中で、著者たちは、社会科学の研究は、論文刊行ゲームに陥っており、その結果、研究の質が低下し、影響力が失われていると指摘します。論文刊行ゲームとは、研究者が、自分のキャリアや評価のために、高いインパクトファクターを持つジャーナルに論文を掲載することを目的として、研究を行うことです。このゲームに参加するために、研究者は、先行研究の中にギャップを見つけて、その穴埋めをするというような、ギャップ・スポッティングと呼ばれる方法を用いて、リサーチ・クエスチョンを作成します。しかし、この方法は、研究のオリジナリティや意義を損ない、研究の多様性や創造性を阻害すると著者たちは主張します。

では、どうすれば、面白くて刺激的な論文を書くことができるのでしょうか?著者たちは、ギャップ・スポッティングに代わる方法として、問題化という手法を提案します。問題化とは、既存の理論や事実に疑問を投げかけ、その前提や仮定を批判的に検証し、新たな視点や解釈を提示することです。問題化を行うためには、研究者は、自分の研究対象や分野に対して、好奇心や関心を持ち、自分の経験や観察から問題を発見し、それを理論的に分析し、他者と議論することが必要です。問題化によって、研究者は、自分の研究に対する情熱やモチベーションを高めるとともに、読者に対しても興味や感動を与えることができると著者たちは説明します。

この本は、問題化の方法論を具体的に示すだけでなく、その方法論を実際の研究事例に適用してみるという実践的な内容も含んでいます。また、なぜギャップ・スポッティング的な研究が支配的になっているのか、その背景や要因についても分析しています。この本は、研究の方法やプロセスについて深く考えることを促すとともに、研究の楽しさや魅力を再発見することを可能にする一冊です。

ビジネスマンの方にも、この本はおすすめです。なぜなら、ビジネスの現場でも、問題化のスキルは非常に重要だからです。ビジネスの現場では、常に変化や競争に対応しなければなりません。そのためには、既存の事実や理論にとらわれず、新たな視点や解釈を持って、問題を発見し、解決することが求められます。問題化のスキルを身につけることで、ビジネスマンは、自分の仕事に対する情熱やモチベーションを高めるとともに、顧客やステークホルダーに対しても価値や感動を提供することができるのです。

この本は、社会科学の研究者や学生だけでなく、ビジネスマンや一般の読者にとっても、非常に有益な本だと思います。この本を読むことで、問題化の方法論を学ぶだけでなく、研究や仕事に対する新たな視点や感動を得ることができるでしょう。この本は、面白くて刺激的な論文を書くためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方を教えてくれるだけでなく、面白くて刺激的な人生を送るためのヒントを与えてくれる本だと言えます。ぜひ、この本を手に取ってみてください。きっと、あなたの研究や仕事に対する考え方や姿勢が変わるはずです。

問題化とは、既存の理論や事実に疑問を投げかけ、その前提や仮定を批判的に検証し、新たな視点や解釈を提示することです。例えば、経営学の分野では、リーダーシップという概念がよく研究されていますが、その定義や測定方法には多くの問題があります。そこで、問題化の手法を用いて、リーダーシップとは何か、どのように評価すべきか、どのように発揮すべきか、といった問題を提起し、新たな理論やモデルを提案することができます。問題化は、研究のオリジナリティや意義を高めるとともに、読者に対しても興味や感動を与えることができる方法です。

リサーチクエスチョンとは、研究を行うことによって何を求めようとしているのかを問うものです¹。リサーチクエスチョンは、研究の目的や仮説を明確にし、研究の方向性や範囲を決めるのに役立ちます²。リサーチクエスチョンは、定性的研究や定量的研究によって異なるタイプに分類されます¹。リサーチクエスチョンを作成するには、テーマを選択し、予備調査を行い、読者を考えるなどの手順が必要です²。リサーチクエスチョンは、研究の過程で試行錯誤しながら修正することもあります²。

リサーチクエスチョンの例をいくつか紹介します。

- 定性的研究の例
   - 探求的なリサーチクエスチョン:ある化学物質がどのように使用されているか、あるいは、特定のテーマにおける認識を尋ねるもの¹。
   - 予測的なリサーチクエスチョン:消費者が特定の行動をとるのは何故か、あるいは他の選択肢ではなく特定の選択肢を選ぶのは何故かを尋ねるもの¹。
   - 解釈的なリサーチクエスチョン:研究において、AIが出版プロセスの手助けをすることをどのように感じているか¹。

- 定量的研究の例
   - 記述的なリサーチクエスチョン:何世代分の遺伝子が将来世代に影響を及ぼすか¹。
   - 比較のリサーチクエスチョン:男性と女性の代謝は同等か¹。
   - 関係性に基づくリサーチクエスチョン:干ばつがその地域の山火事の発生確率にどのような影響を与えているか¹。

- その他の例
   - 経済学のリサーチクエスチョン:主流か異端のどちらの出版物が、あなたの経済の定義と領域の理解を反映していますか³。
   - 卒業研究のリサーチクエスチョン:学力の地域格差の問題を解決するには、なぜ〇〇地域では、学力の格差があるのか

以上、『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』という本の書評でした。この本は、[Amazon]のネット書店で購入できます。もし、この本に興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。

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