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UberEatsを超えてDoorDashが世界No.1になったのはなぜ? 

フードデリバリーとは、飲食店の料理を自宅やオフィスなどに配達するサービスのことです。 フードデリバリーの需要は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、外食を控える人が増えたことで急激に高まりました。 その中で、オンラインプラットフォームを運営する企業が市場をリードしています。 その中でも、ドアダッシュ(DoorDash)は、ウーバーイーツ(Uber Eats)を超えて世界No.1のフードデリバリー企業になりました。 では、なぜドアダッシュはウーバーイーツを上回ることができたのでしょうか。 以下に、その理由を3つ挙げて解説します。

- 1. 地域に合わせた戦略を展開したこと

ドアダッシュは、米国のフードデリバリー市場において、地域や都市に合わせた戦略を展開しました。 例えば、サンフランシスコやヒューストンなどの都市では、ドアダッシュが50%以上のシェアを獲得しています これは、ドアダッシュが、これらの都市で人気のある飲食店やチェーン店と提携し、多様なメニューを提供したことが要因です²。 また、ドアダッシュは、デリバリーを行わなかったリトルシーザーズピザ(Little Caesars Pizza)と提携し、同チェーンにデリバリーを開始させたことも話題となりました²。 一方、ウーバーイーツは、マイアミやニューヨークなどの都市で強みを持っていますが、他の地域ではドアダッシュに及ばないシェアとなっています これは、ウーバーイーツが、主に都市部の高級レストランやファストフード店と提携しており、地域のニーズに応えられなかったことが原因です³。

- 2. 会員制を導入し、ユーザーの囲い込みに成功したこと**

ドアダッシュは、会員制を導入し、ユーザーの囲い込みに成功しました。 ドアダッシュの会員制は、「DashPass」と呼ばれ、月額9.99ドルで利用できます。 会員になると、注文ごとの配送料が無料になるという特典があります²。 これにより、ドアダッシュのユーザーは、他のフードデリバリー企業よりも頻繁に注文するようになりました⁴。 また、ドアダッシュは、全利用者約1800万人の約3割となる500万人が会員となっていると発表しました²。 これは、ドアダッシュのユーザーのロイヤリティが高いことを示しています。 一方、ウーバーイーツも会員制を導入しましたが、その規模はドアダッシュに比べて小さく、会員数も公表していません⁴。 また、ウーバーイーツの会員制は、「Uber Pass」と呼ばれ、月額9.99ドルで利用できますが、特典は配送料の割引やUberのタクシー代の割引などがあります⁵。 これは、フードデリバリーに特化したサービスではなく、ウーバーの他の事業と連携したサービスとなっています。 そのため、フードデリバリーに興味のあるユーザーにとっては、ドアダッシュの会員制の方が魅力的に感じられる可能性があります。

- 3. 資金調達を積極的に行い、事業拡大に投資したこと

ドアダッシュは、資金調達を積極的に行い、事業拡大に投資しました。 2020年6月には、新たに4億ドルの資金調達を行い、創業から総計で25億ドルの資金調達を達成しました²。 これにより、ドアダッシュは、豊富な資金を基に、提携店舗の増加、サービス提供エリアの拡大、マーケティングの強化などの施策を多角的に推進しました²。 また、2020年12月には、ニューヨーク証券取引所に新規株式公開(IPO)を行い、約32億ドルの資金を調達しました。 これにより、ドアダッシュは、さらなる事業拡大に向けての資金力を強化しました。 一方、ウーバーイーツは、ウーバーの子会社として事業を展開していますが、ウーバーは、コロナ禍によってタクシー事業が大きく落ち込んだことで、赤字が拡大しました。 そのため、ウーバーは、フードデリバリー事業にも資金を投入する余裕がなくなりました。 また、ウーバーは、2020年7月に、フードデリバリー企業のポストメイツ(Postmates)を27億ドルで買収することを発表しましたが、この買収は、2021年1月に承認されました。 これは、ドアダッシュが市場を独占する前に、ウーバーイーツがシェアを拡大するための戦略でしたが、買収の遅れによって、その効果は限定的になりました。

以上のように、ドアダッシュは、地域に合わせた戦略、会員制の導入、資金調達の積極化という3つの要素によって、ウーバーイーツを超えて世界No.1のフードデリバリー企業になりました。 しかし、フードデリバリー市場は、今後も高成長が見込まれるため、競争は激化することが予想されます。 ドアダッシュは、自社の強みを生かしながら、ユーザーのニーズに応えるサービスの提供を続ける必要があります。

ドアダッシュの成功要因をSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威分析)で考えてみましょう。

- 強み(Strengths):ドアダッシュの強みは、米国で最大の市場シェアを持ち、人口の85%を網羅する規模と、料理宅配以外にも事業を多角化している点です。小売りやレストランテックなどの分野に提携や買収を通じて進出し、消費者やレストランに付加価値を提供するサービスを拡充しています。また、自動運転や超即配などの先進的な技術にも投資しており、配送の効率化や品質向上にも取り組んでいます¹²。
- 弱み(Weaknesses):ドアダッシュの弱みは、最終損益の赤字が続いている点と、ギグワーカーに依存している点です。事業拡大を急いでいるため、コストが収益を上回っており、2021年の第3四半期には4億3000万ドルの損失を計上しました。また、配送を担うドライバーは業務委託された個人であり、福利厚生や待遇の面で不満を抱いている可能性があります。人手不足や法規制の変更などにより、ドライバーの確保や維持が困難になるリスクがあります。
- 機会(Opportunities):ドアダッシュの機会は、新型コロナウイルスの影響により、宅配サービスの需要が高まっている点と、国際展開の余地がある点です。コロナ禍で店内飲食が制限される中、飲食店や消費者は宅配サービスに頼る傾向が強まっており、ドアダッシュはその恩恵を受けています。また、ドアダッシュは現在、米国とカナダ、オーストラリアに事業を展開していますが、まだ世界の多くの市場に参入していません。特にアジアやヨーロッパなどの地域では、宅配サービスの競争が激化しており、ドアダッシュはその中で差別化を図ることができるかもしれません。
- 脅威(Threats):ドアダッシュの脅威は、競合他社の存在と、規制の不確実性です。ドアダッシュは米国で最大の市場シェアを持っていますが、Uber EatsやGrubhubなどの強力なライバルが存在しており、価格競争やサービスの差別化に挑戦されています。また、ドアダッシュはギグワーカーに依存しているため、彼らの労働条件や報酬に関する法規制の変更に影響を受けやすいです。例えば、カリフォルニア州では、ギグワーカーを正社員として扱うことを求める法案が提出されましたが、ドアダッシュは他の宅配サービスと共に反対運動を展開しました。このように、ドアダッシュは規制の変化に対応する必要があります。

以上がドアダッシュの成功要因をSWOT分析で考えた結果です。ドアダッシュは料理宅配の分野で優位に立っていますが、まだまだ成長の余地があります。しかし、同時に競合や規制などの課題も抱えており、その対処が今後のドアダッシュの成否を左右するでしょう。

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