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CFO思考 日本企業最大の「欠落」とその処方箋

CFO思考 日本企業最大の「欠落」とその処方箋
徳成旨亮
🔑キーコンセプト
CFOの役割、アニマルスピリッツ、資本主義、企業価値、日本経済です。

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CFO(最高財務責任者)とは、単なる会社の金庫番ではなく、企業成長のエンジンとなるべき存在である。このようなCFO思考こそが、日本企業の長期に渡る業績低迷からの脱却と日本経済の復活の鍵であると、著者の徳成旨亮さんは力説する。

著者は、三菱UFJフィナンシャル・グループのCFOとして、海外投資家から4年連続でベストCFOに選出された実績を持つ。その後、株式会社ニコンのCFOに転じ、カメラ事業の構造改革や新規事業の育成に取り組んでいる。本書は、著者が自らの経験をもとに、CFOに求められる思考の真髄を解説したものである。

本書の中心的なテーマは、アニマルスピリッツである。アニマルスピリッツとは、冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持つことで、一見すると失策に見えるリスクの高い施策を推進することである。著者は、アニマルスピリッツを発揮することが、企業のパーパス(存在意義)を実現し、社員のモチベーションを高めると主張する。

CFOは、アニマルスピリッツを発揮するために、以下のような役割を果たすべきであると著者は述べる。

- 社外からリスクマネーを引っ張る。CFOは、市場の状況を見極め、社債や株式などの資本市場を活用して、企業の成長に必要な資金を調達する。また、格付け機関や投資家とのコミュニケーションを通じて、企業の信用力や魅力を高める。
- 社内には投資家の期待を伝える。CFOは、投資家の視点を社内に浸透させ、経営陣や社員に企業価値の向上を意識させる。また、財務指標やKPIを設定し、経営戦略や事業計画の策定や実行に関与する。
- リスクマネジメントを行う。CFOは、為替や金利などの市場リスクや、法規制や税制などの環境リスクに対応する。また、M&Aや事業再編などの戦略的なリスクにも対処する。
- サステナビリティや人的資本に配慮する。CFOは、環境や社会に貢献することが、企業の長期的な成長につながると考える。また、人材の採用や育成にも積極的に関与し、組織の活性化や多様性の促進に努める。

本書は、CFOの役割や思考を具体的かつ分かりやすく説明しており、財務経理部門の社員だけでなく、他部門の役員やマネジャーにも読んでほしい一冊である。CFOになるために必要なスキルや経験も紹介されており、CFOを目指す人にとっては参考になるだろう。

本書の評価としては、以下の点が高く評価できると思う。

- 著者が実際に経験したエピソードや事例が豊富に盛り込まれており、読んでいて面白く、説得力がある。
- CFOの役割や思考を、日本企業の現状や課題と結びつけて説明しており、日本経済の復活に向けた提言としても有意義である。
- 著者の人柄が感じられる文章であり、読んでいて元気が出てくる。

一方で、以下の点が改善の余地があると思う。

- 本書のタイトルにある「日本企業最大の『欠落』」とは何かが、明確に定義されていない。CFO思考そのものが欠落しているということなのか、それともCFO思考を発揮するための環境や制度が欠落しているということなのか、もう少し具体的に説明してほしかった。
- 本書の内容は、主に大企業や金融機関の視点から書かれており、中小企業や非金融機関には当てはまらない部分も多い。例えば、社債や株式の発行や格付けの取得などは、大企業や金融機関にとっては重要なテーマかもしれないが、中小企業や非金融機関にとってはあまり関係ない。本書の対象読者や範囲をもう少し明確にしてほしかった。

以上の点を踏まえて、本書の評価は、星5つ中4つとしたい。CFOに関する本は多くないが、本書はCFOの役割や思考をわかりやすく解説した貴重な一冊であると言える。CFOに興味のある人はもちろん、ビジネスマンにもおすすめできる本である。

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