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いとエモし。超訳 日本の美しい文学


いとエモし。超訳 日本の美しい文学 (サンクチュアリ出版)

k o t o 著

サンクチュアリ出版、2023年4月7日発売、228ページ

言葉の奏でる調べ、感動のメロディ。
日本文学の美、超訳で心を包み込む。

## レビュー

日本の古典文学には、現代の私たちにも通じる「エモい」感情がたくさん詰まっています。しかし、古い言葉や文体に馴染みがないと、その魅力に気づきにくいかもしれません。そこで、この本では、枕草子、万葉集、古今和歌集、徒然草などの名作を、「いまを生きる私たちの感覚」に合わせて“エモ訳”したエッセイを紹介しています。それぞれの作品には、イラストレーターが描いた美しいイラストも添えられています。

この本の著者は、k o t oという夜だけ作家です。10代のうちは、国語にも古典にもまったく興味が持てなかったといいますが、大人になったある日、『枕草子』の一節に心をつかまれたそうです。それから、古典作品や文学作品を独自解釈した短編、中編を書き綴るようになりました。心の動き(エモ)に重きを置いた作風が持ち味です。

この本には、100編以上の古典作品が収録されています。それぞれの作品には、著者がエモく超訳した文章と、作品の背景や作者の人物像などを簡潔に説明した文章があります。また、作品のテーマや雰囲気に合わせたイラストが、視覚的に楽しませてくれます。イラストは、50人以上のイラストレーターが参加しており、多彩なタッチや色彩が魅力です。

この本を読むと、古典文学の中に隠された「エモパワー」を強烈に感じることができます。秋の夕暮れに見る雁の群れ、冬の朝の寒さに震える心、春の朝焼けの景色に感動する気持ち、夏の夜に聞こえる雨音に切なくなる思い……。これらは、清少納言が感じた「いとをかし」であり、私たちが感じる「まじエモい」でもあります。古典文学の中には、恋や別れ、生と死、夢や希望など、普遍的なテーマが描かれています。それらは、時代や文化を超えて、私たちの心に響くものです。

この本は、古典文学に興味がない人でも楽しめる一冊です。ページをめくるたびに、先人たちが作品に込めた「エモパワー」を感じながら、切なくなったり、勇気がわいてきたり、なんともいえない胸いっぱいな気持ちになれます。古典文学の魅力を再発見したい人や、新しい感覚で古典文学に触れたい人におすすめの本です。¹

## 評価

この本の評価は、以下の5つの観点から5段階で行います。

- 内容: ★★★★☆
- 文体: ★★★★☆
- イラスト: ★★★★★
- デザイン: ★★★★☆
- 総合: ★★★★☆

内容に関しては、古典文学のエッセイとしては非常に斬新で面白いと思います。古典文学の中に隠された「エモい」感情を見つけ出し、現代の言葉や感覚で表現するという発想は、新鮮です。また、作品の背景や作者の人物像などの説明も、分かりやすく簡潔にまとめられています。ただし、古典文学に詳しい人や、原文に忠実な訳を求める人には、物足りないかもしれません。著者の解釈や感想が多く入っているため、原文のニュアンスや意味が変わってしまっている部分もあります。また、古典文学の全体像や流れを知りたい人には、不向きです。作品の選択や並び方には、あまり統一性や論理性が感じられません。

文体に関しては、軽快で読みやすいと思います。古典文学の難解さや堅苦しさを払拭し、親しみやすく楽しく読めるように工夫されています。特に、古典文学の一節を“エモ訳”した文章は、斬新でユニークです。現代の若者の言葉やネットスランを使って、古典文学の感情を表現しています。例えば、『枕草子』の「秋は夕暮れ」を「秋は夕暮れ。まじエモい。」と訳したり、『万葉集』の「かつての都で」を「あの頃の東京で」にしたりしています。これらの訳は、古典文学に興味がない人や若い人にも響くと思います。ただし、古典文学の原文の美しさや深さを損なっていると感じる人もいるかもしれません。また、文体があまりにも軽すぎると感じる人もいるでしょう。

イラストに関しては、素晴らしいと思います。作品のテーマや雰囲気に合わせた美しいイラストが、視覚的に楽しませてくれます。イラストは、50人以上のイラストレーターが参加しており、多彩なタッチや色彩が魅力です。古典文学のイメージを豊かにしてくれるだけでなく、イラスト自体が芸術作品として楽しめます。イラストのクオリティは、本の価格を考えると、非常に高いと思います。

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