コンサート鑑賞記録(2)

ミュージック・エトワール 特別公演「絆」〜三石精一を迎えて〜
指揮:三石精一  トランペット:児玉隼人
管弦楽:エトワールスペシャルオーケストラ
2024年1月31日(水) かつしかシンフォニーヒルズ
プログラム:
ハチャトゥリアン:「仮面舞踏会」組曲
アルチュニアン:トランペット協奏曲
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68

三石精一氏のお名前をご存じの方は、余程のクラシック好き(それもある程度の年齢以上)かもしれない。御年91歳、年代的には岩城、外山、大町といったマエストロたちと同じ。読響の指揮者を長年務められたが、近年はプロオケの定期公演には出演されていなかったように思う。
私は初めて聴く指揮者。当日、舞台袖から楽員に支えられて登場する姿があまりに心許なく不安を覚えたが、指揮台に立てば終演まで立ち通し。棒も、シャープさにはやや欠けるもののアグレッシブな動き。
全体の感想としてはどの曲のどの楽器も過不足なく鳴らし、それが平板ではなく全て意味を持つ。ブラームスの第4楽章の有名なテーマでも、美しさに浸ることなくアクセルを絶妙な加減で踏み込んで前進させる。良い意味での職人芸、先にお名前を挙げたマエストロたちと比較すれば知名度こそ低いものの、誠実に丁寧に音楽と向き合ってきた方の素敵な音楽を聴けたという印象。マエストロに応えたオケの皆さんの充実した表情も心に残った。
ソリストの児玉隼人さん、14歳中学生(!)ということでお名前は知ってはいたがこちらも実演は初めて。ステージ姿は黒白のカジュアルな服、部活帰りに来ました!みたいな初々しい印象。決然とした出だしに始まり、軽やかで美しい、正統派のトランペットの音。自然体でこのような演奏ができるのは素晴らしいと感じ入った。このまま変に周りに踊らされることなく、良い音楽体験を重ねて行かれることを願う。これからも聴き続けたい。
客席には児玉君が目当てらしいティーンズも多かった。今日のような素晴らしいコンサートは、きっと皆の宝物になるよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?