上演台本の公開に際して

※台本の著作権は蛭田絵里香に帰属します。
 上演は原則許可しないものとします。

こんにちは。春になりましたね。
毎年一作は発表していたので、次回公演についてのお問い合わせをいただく季節になったのですが、いま現在お応えできるようなものは予定していないため、台本の公開に代えさせていただきます。気にかけていただいている皆様ありがとうございます。

公開した3本の台本は、自分が女性として生きていることや、共に生きている女性たちに抱いてしまう差別的な感情に由来する、歪んだファンタジーでできています。
無知ゆえに苦しく、無知ゆえに書けてしまっていて、無知ゆえに上演できてしまっていました。
現在、これらのテキストを、注釈も付けずに公開することを、無責任な行為とも思っています。差別やステレオタイプを増長するような表現が多く含まれるためです。
いまは、自分の書いた台詞たちに注釈を付けていくように、解いていくように、勉強をしフィードバックをしています。

自分を取り巻く環境や倫理観は日々変化していき、けれど昔から持っている好みや欲求もあって(そしてそれはつくられたものであって)、矛盾は日毎に大きく開いていきます。girlsシリーズの創作はその自己矛盾への忍耐であり立ち向かいとなりました。知的な蓄積が十分でないまま倫理的な揺さぶりに真正面から立ち向かうことは、自己破壊・自己分裂的な危ういプロセスになりました。けれどその自己矛盾によって引き裂かれる痛みが何なのか、創作をすることででしか外部に訴えられなかったのです。言葉を持っていなかったのです。
作品を発表することで他者から言葉をもらい、世の中に流通するコードで思考することができるようになりました。
小さな子がぐずってみて初めて「痛いね、やだね」と言葉を与えられたみたいに。

創作中に自分を追い詰めることが続いてしまったので、しばらくは休養メインで、遊びを開き、発しながら、そこから問い学びながら、暮らしていこうと思っています。
作中で立て続けた問いは、一度すべて保留して、陽気なピクニック屋さんになって、再び問いに向かうための元気をチャージします。


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