『MAMA』


作中不適切な表現が含まれますが、上演当時(2023年7月)の台本のまま掲載しています。ご了承ください。
作:蛭田絵里香


シテ
シテツレ
ワキ
地謡
アイ

【☆】
たくさんの布団が積み重なっている カーテンは閉まって、鏡が見えている たくさんの布団の上にシテとシテツレが布団みたいに積み重なっている ひとりは虚空をみつめて、ひとりはうつぶせになって耐えている

【0】 ワキ、舞台中央で話す

こんにちは。
これから少しダラダラ話そうと思うんですけど、いきなりなんですけど、
ダラダラした話を、いつもだれに聞いてもらってますか? 日常。あの、人に話を聞いてもらうのって結構お金がかかることみたいで心理カウンセリングとか。さっき気になって カウンセリング 料金 で調べたんですけど、30分で5000円くらいが相場らしいんですね 高いですよね
何を話しにいくんだっていうと、まとまらない話とかとりとめのない話もそうだし、まあそこからはじまって、しんどい話が、どんどんぐちゃぐちゃになって、もうダークマターみたいになっちゃったやつ
そうなってくるともう、ほどいて外部化するのはお話の手術になりますから、プロの仕事
あとは、飲み屋とかもそうですよね
酔うと、話すハードルが少し下がって、まとまらなくても話し出せる気がする
だから今話しているこの瞬間に お金を本当は払わないといけない気もするんですよ
もし適当に話していたらね けどこの話にはオチがあるので ちょっと聞いてくださいね
オチ が付くっていうことは、落ち着いたってこと、もうその人の中では区切りがついてるってことなんですよね
お話 として話せるって、もう距離がとれてること、らしいんです
そうして整理できてることは、たまに人の整理に役に立ったりする
あーそういうことだったのか そういう考え方もあるのかって
紙に書き出すとか、そういう方法もあるし、
もういまの時代はだれでも発信できるので ネットの海に吐き出し放題だと思うんですけど
面と向かって人の身体で話を聞いてもらうのにすごくお金がかかる
目の前の人が、身体で、話を受け止めてくれたってことが大事なんじゃないかなと思うんです
そういう お話になってない話 物語になってない語りを
結構聞いてたいというか、そこにこそリアリティがあると思うので、話を聞くことを、面と向かって、全身でやる、っていうのを、それだったらやれるかなというか、やりたいなと思って
ここで傾聴ボランティアをしています

【1】
こんにちは
わたし おかあさん 苦手なんです
 わたし    が
わたし おかあさん 苦手なんです
  わたし    が
それで
わたし おかあさん を さがしているんです
   わたし   ツー
わたし おかあさん を さがしているんです
   わたし   つー

これは ママの 代わりを探す旅
だれかにわたしの依り代になってほしい
わたしの不快を除いてくれる
わたしの深みを覗いてくれる
わたしのお世話をしてくれる
夢のお母さん2

わたし うみたい
   わたし うみたい
ずっと見ないフリをしてたけど
あるとき思ってしまったの
そんな身体のメタモルフォーゼ

でも この かくかく してるから
 でも 世は しかじか
産む   産む 自分の頭で決めること
      産まない 産まない       当然

この 下り ひとの 人生は百年
      先  坂で ライフ
産む からだ 自分の理性で決めること
 のは  だけど         当然

お金 助け 自分の育ちに自信
      ない ない                  ない
育て 自信  だから       育て
    られる ない 産めない ない

日本の少子化は進む一方でございます
異次元の少子化対策を打たねばなりません
子供を産んだなら 奨学金を免除します
生活が苦しいでしょう
子供を産めば解決です は?

わたしの かくかく そういう 管理
   からだ  しかじか ことに される
だか わたし わたしの身体を管理する
  ら   も
スイッチ オフ。 した はずだった けど
わたし うみたい
   わたし うみたい
他人の人生がはじまってく
なんて重大なことがはじまる
そんな身体のメタモルフォーゼ

つまり ご自身も子どもを産みたいと感じはじめているんですね
けれど ご自身の経済状況も生育環境もこの先の世の中も心配なんですね
それで 産むのはリスクがあるんじゃないかと心配されているんですね
しかも 産むかどうかをご自身の判断に委ねられていると感じていてそれがストレスなんですね

わたしは わたしの 母の愛を引き継ぎます
わたしは わたしの 母のさみしさ引き継ぎます
わたしは わたしの 母を 産みます
わたしは わたしの 母に なります

好評につき再演決定!
本当に?

そのまえ わたし ママの羊水の中を泳ぎ
          に        は
わたしは わたしの 子どもの幽霊溶かしたい
         わたしは わたしの
ママの  頭  突っ   入り込み
     へそに から  込んで
ママの 乳から 生命(いのち)を吸い取って
       乳で  包まれ
わたしは わたしの 子どもの幽霊溶かしたい
         わたしは わたしの
子どもの幽霊溶かしたい
 
ご自身がお母さんと同じことを繰り返すのではと心配されているんですね
その前にご自身が幼少期に甘えられなかった無念を解消したいと思ってらっしゃるんですね

でも あのひとはいやだ わたしを 産んだ不・純潔な女
子どもを 産むなんて なんて不・純潔な女
そう主張するわたしが 子どもを産みたいと思うことーーー

わたしの母はわたしのことを すべて決めて管理して 自分のものにした あるいは
わたしの母はわたしをほっぽって わたしのことをろくに見なかった

だから わたしは わたしが
    わたしは わたしが 納得のいく
母性 あふれる 母    を さがしだし
母性      お母さん2を
完全な 人間として 生まれ変わり
       子供    育ち直し
完全な 人間として 納得のいく
         母
すばらしい 子育てをして わたしはわたしにーー勝利する
          美しい                わたしはわたしの母に勝利する

お母さんにはもっと母性をもって接してほしかったと思っているんですね
この世に産まれてきて大丈夫だって安心させてほしかったと思っているんですね

【2】
お母さんを不純潔な女だと感じてらっしゃるとのことなんですが、
なにかきっかけのようなものはあるんですか?

子供ができる過程を 男の夢の映像で知りました
母がこんな目に遭って  被害?
母はこれを望んで  本能?
わたしを産んだにちがいない
そう映像はわたしに語りかけました

女は男の欲にこたえる
女は欲なんてもってない
女は聖母マリアみたいなもののはず
わたしの母はちがうけど
刷り込み

きたないポルノみたいなことしか知らない
きたないポルノみたいなことから産まれた子ども きっと
きたないポルノみたいな場面だったのだろう
画面の向こうのことしか知らない
刷り込み

子どもができる過程を適切な形の性教育ではなく男性向けコンテンツで知って
それの刷り込みでご自身の生まれについて考えてしまったんですね
それは自分のこともお母さんのことも歪んだフィルターで見てしまうかもしれませんね

やがてわたしに月経がきた
 母の身体とおんなじ証
赤ちゃんを産むための準備なのよ
今日はお赤飯 おめでとう
タブーの由来は生理的出血
ケガレケガレだ避けろ除けろ
タブーを毎月抱えてる身体
月におしおきされている
わたしの身体に起きてることは何?
画面の向こうがわたしの先生
コンビニの隅 トイレの前の
エロ本コーナーのいやらしさ
わたしの身にも あるというの?
見てはいけないことなのね
教室の隅 ナプキンの
麻薬取引みたいな秘密は
彼らの夢を支える仕事だから
見せてはいけないことなのね
バックヤードは見せない
男の夢が並ぶコンビニで
女のタブーは紙袋に包まれる
わたしたちは夢を見せる
こんなメタモルフォーゼ想像外
実はプリキュアみたいに変身できない
プリキュアは生理の日も戦ってるのかな
それともまだなのかな
自分の身体の変化を安心して受け入れられるような
フォローが足りなかったと感じているんですね
その上で隠さなければならないっていう空気もあって
一方で男性用コンテンツは隠れていなくて
その猥雑な何かに晒されることも
それを自分が持っている予感も不安だったんですね

 わたしの母はどうやらとっても大変そうだ
彼女が受ける報いを わたしもいつか受けるだろう
なぜならわたしと彼女は同じ身体だから
わたしと彼女は同じ存在だから
彼女があんなに大変そうなのは
きっと何かの報いなんだろう
子どもを産むのが祝福なら
こんな思いはしないはず
彼女があんなに大変そうなのは
自己責任らしいから ここは個人主義
だれも手を貸してくれない
その絶望が彼女の手を伝ってわたしまで届く
彼女があんなに大変そうなのは
彼女がまちがったからだろう
そしたらわたしは同じ身体の人間として
それをしないでおこう それしかできうることが見つからない

お母さんがご自身を育てるのが大変そうに感じたんですね
お母さんの自己犠牲のもとに自分が存在しているように感じたんですね
それはご自身も不安な思いをされたでしょうね
お母さんがどうして大変な目にあっているのかわからなかったんですね
お母さんがうまくやれていないだけなんじゃないかと思ってしまったんですね
同じ女性の身体なので自分もいつかこうなるんじゃないかと思ったんですね
ご自身が不安な思いを抱えてらっしゃって
同じことは繰り返さないようにしようって考えたんですね
女性である自分の身体に祝福よりも呪いを感じているんですね

目に見えないだれかのせいかもしれない
目に見えない何かのせいかもしれない
けれどもわたしにはわからない
見えないことはわたしの世界に存在しない
目に見えていることは だれかの夢と成れの果て
みんなが見せているものとわたしの目の前にあること
そのつじつまが合うために
未熟な幼い脳みそにできたたくさんのササクレ
だれかがきれいにみせるため
突っ込んだ押入れの中で
わたしの身体を納得させるために
2人して押入れのゴミになりました

いまはお母さんだけが悪いわけではないのではないかとどこかで考えているんですね
もっと社会的なことかもしれないと
けれど小さいときに結んだ物語をなかなかほどくことができないんですね

子どもを愛さない親なんかいない
母親はあたたかく子どもを愛する生き物です
産んでくれた育ててくれたお母さんに
そんなふうに思うなんて
あなたもいつかわかるはず
子どもをもてばわかるはず
お母さんを美化する空気に苦しんだんですね
半分は何にもしらないくせにと思いながら 半分はそうなのかもと思って
自分を疑い罪悪感を持ってしまったんですね
日本の女の愛は
自己犠牲
それを信じるわたしたち
自己犠牲
のもと育って母の人生を奪った私
あんたはいいわね
だからわたしがお母さんの代わりを演じます
これは愛
けれども日本の女の愛は
自己犠牲
わたしの未来の姿も
自己犠牲
母親は子どもを無条件に愛するものです
子どもを産んだら母親の人生は子どものものです
勝手に産んだんだからそのくらい当然
これはそういう台本 これは古い台本
それを演じることができない
演じてくれない
けどその夢をみる 見続ける まま
それから お母さんの 代わりを探す旅
だれか よりどころになってほしい
わたしの不快を除いてくれる
わたしの深みを覗いてくれる
わたしのお世話をしてくれる
夢のお母さん2
もしかして子どもを産んだら会えるのかも
とりあえずトイレに行こう
ナプキンを変えてこよう
全部水洗トイレの水に流そう
汚物入れに突っ込もう
お母さんの夢

よく、話しましたね
言いにくいだろうことをたくさんアウトプットして疲れませんでしたか
それじゃあ少し休憩しましょうか

【3】
はじめての潮 はじめての波 はじめての海 あるいは
はじめての花 それを過ぎた少女たちは
紅い花のお花畑 そこに立つ 子どものための宮殿

だれも こないよ
だれか くるかも
だれも こないよ
だれか くるかも
だれも こないかもしれないけど
この立派な宮殿で その日を待つのが仕事
もう何べん同じことを繰り返すの
月が出て消えるたび繰り返すの
空白を抱えていることは虚しい
ここは未完成なまま
もう終わりにしたい
だれか くるかも
だってこの人はもう決めているよ
わたしたちがいるのに この人だけで決めたの?
この人が自分で決めたらこの人が責められる
そうだよ けど ここでは 強いられないことは 決めることで
決めたら責任を負う
わたしたちのことは みんなすっかりわすれている
かなしい
忘れているのに わたしたちのことで みんなケンカしている
それはわたし とても かなしい
けど 待つよ
だれも こないよ
いくよ
さよなら

 真っ赤な金魚がぬるぬるぼとぼと
わたしの中をつたっておりてくる びちびち
トイレの中にひらひら 花びらみたいなひれを泳がせ
わたしの金魚 ぴちゃぴちゃ泳ぐ わたしのお月さま
赤黒いね グロいね
内臓が剥がれ落ちてくるのを隠すよ
グロいって 隠れた場所って意味だって
世の中にはそんなものはないもんね
世の中からグロいものは消えました
世の中から生と死は消えました

 世の中から肉体は消えました
精神は画面だけで事足ります
アンコントロールな肉体はおいていけ
ここはクリーンでドリーミー
安心して白いビルの中でお仕事頑張って
なんにもないことにしてお仕事がんばるよ
わたしたち無償でやってるマジシャンじゃん!
ビルにくっついてるカタツムリむり
全部剥がして殺してくるからさ
押入れの中は見ないふりしましょう
(トイレの水を流す)

【4】
わたしたち?の信じている/演じている 神話

女性は
はい
まず愛情深い
ほう
男よりもね それは本能
ほう
男と女はいっしょに住む
ほう
母性だから
それが?
そう そんで、でも愛してるとか言わなくていい。姿で演出するから
黙って家事育児介護するんさ、愛情深いから
それはムリないか?
大丈夫、神話だから
 男はお金を稼いでくる それが愛情
男の稼ぎが少なかったり女が家事育児できなかったら?
男の稼ぎがすくないのは国が貧しいからしゃーない
あと男には夢があるから 金の代わりに
でも女には愛があるから家事育児できないってことは設定上ないのよ
それはムリないか?
大丈夫神話だから
あと男は夢のためにどっかいく
どっかいく?
だから、男が稼がない分は女が稼ぐし、
女は愛情深いからその上家事育児もするんさ
それはムリ
それがムリなら
うん
女には愛が足りない
そこに回収されてはダメでしょ
男には夢があるからそれを支えるのが女の愛なんだよ自己犠牲なんだよ
・・・
ロマンティックだなあ
それはムリないか?
ロマンティックだなあ
そのロマンティックはだれの夢
わたし
でもわたしの夢がその人の夢だから
その人はその人の夢をみるよ
いやわたしの夢をみるよ
それがわたしの夢 よーい はい

【5】
わたしたち?が信じている/惑わされている 神話

子どもは
うん
三歳までで決まります
ほう
もっというと1歳
でも三歳までならカバーできます
けどあとはもう取り返しがつかない 人格形成に失敗します
生まれたての子は何も知らないんです不安なんです
とりあえず三年っていうでしょなんでも
だから三年でこの世に見切りをつけます新人は
だからとにかく、どんな状況であれ、とりあえず三年はとにかく愛情深くいっしょにいてあげること
オキシトシン・プアな子に育つと大変ですよ
受容体ができないんだから わかります?幸せを受け取れなくなるんですよ
とにかくスキンシップをとって、この世にようこそってするんです
そうしたら赤ちゃんは安心します
でもそれ、厚生白書に合理的な根拠はないって書いてあったよ
そうやって3年間も閉じ込めて子どもを産んだ母親を孤独にするの?
そうやって産まれたばかりの子どもを母親から引き剥がして子どもを孤独にするの?
それって母親じゃないとダメなの?
当たり前じゃない 子どもにとって母親は自分の一部なんだから そのほかは他人なの
けど母親のまわりにだれもいなかったらどうするの
不安な人とふたりきりでも子どもは孤独だよ
とにかく 何にも代えがたい時間なんです
ここを逃すと、子も親も、一生後悔しますよ
どうしてまわりにだれもいないんだ
コロスならいるでしょう
あまりに空気だ
けど主要な人物は母と子の二人で十分です
その二人の間に起こることこそが神話なのです

【6】
自分なりに整理はしてきたんでしょうけど、それがかえってガチガチになっているというか、まだま
だ混乱しているように見えますね
最近母と娘の関係が大変そうなのをよく見ます
近年も渋谷で母の嫌なところに自分が似てきて母を殺そうと思った、という少女が、実の母親の
練習台として通りすがりの親子を殺害した事件がありましたね、母親に似た人を狙ったとか
精神的親殺しに失敗したんだね
あのひとはすごく若く見えますが、どういうご相談者さんなんですか?

 30代だったと思うよ。大人になっても親子の問題は引きずるからね
カウンセリングも占いもお話を聞いてほしいんだよね、お話すると客観的な視点が得られて、構造がわかって、なにが問題だったかわかったらいくらか気持ちの整理もつくからね
みんなさ見捨てられたと思ってるんだよ自分の母親に母性が足りなかったと思ってるんだよそれが原因だって突き止めてる気持ちなんだよそうやって恨むしかないんだよ、自分の中に母性があるか疑わしいけど母親には求めるんだよ だからくるしいね、けど恨めば恨むほど本当の望みを客観視できなくなる気もするんだな、遠くにいって、遠くから見たら少しらくになるかな、そのために大人になりたいね。もっと遠くにいきたいね。
お母さんと娘でいうとさ、2008年に何冊か重要な本が出てからみんな堰を切ったようにいろいろ言うようになったんだよ、それまで母親を悪く言うのはタブーだったからさ、神話にしていたからさ、膿が一気に出てきたんだよね、だれにも言えなかったら客観視するのも難しくて、どんどんよくない感情を増幅させちゃうよね、その出てきた膿を取り除いて、傷口を洗ってあげてどんな傷なのかよく見てあげて、手当てをすることをこれからしっかりやっていかなくちゃね。傷がつくのも、その傷がタブー視されるのも、世の中の成り立ちにきっと関係があって、それもどうにかマシになってほしいね。女の身体も男の身体も、性別によってふるまいが社会に要請されるから、先人たちはそれをサバイブしてきただろうし、そのふるまい方を子どもに教えたり、あるいは違う道を切り開いてほしいって願ったりするだろうね。女の人が自分の娘を育てるときには、自分がサバイブしてきた世界を想定して教えていくよね、だって嫌な目にあってほしくないもん。男の人に選ばれて、母親になって、家庭を支える。そうでない生き方があることをわかっていても、こういうもんだっていうステレオタイプは知らない間に自分の中に染み付いちゃうもんだよね。それは母親だけじゃなくて子どもも母親に対してこうあるべきだっていう意識を持ってるかもしれないよね。本当に欲していることにフタをするように、こうあるべきだを見つけてきては訴えるための武器にしてるかもね。本当に欲している何かを見せるのはとても危ういことで、だって叶えられなかったらただの弱点だもん、そうして隠して自分でもいつか忘れてしまうね。でも思い出せるし取り戻せるよ。自分がちゃんと握ってなきゃね。グリップ
わたしね最近ねフリップ芸人目指してるんだ
大喜利も頑張ってたんだけどさ、
やっぱフリップ芸人って一人で戦えてかっちょいいよね
ってことで漢字のモノマネをします
まず
人(足を肩幅程度に開いて立つ)
女(ひざまずく)
母(ひざまずいたまま赤ちゃんに乳をやる)
 毒(そのまま髪に髪飾りをつける)
えー、ここにおっきい水があるとしまして
海(髪を結う仕草)
わかるかいことばの生みの親が
これはわたしを虐げてきて
同時にわたしを夢みてる人がつくった言葉
その言葉を使って戦おうとしているのさ
言葉に踊らされているのさ
そしてわたしたちはそんな言葉を通じて
だれかの毒・ロマンティックを飲み込んでいないと言い切れナイフ
そんな夢に踊らされていないと言い切れナイフ
そこに溜まった膿を出し切るナイフ
だれかが夢見る甚だしい腹立たしい花々しさをかきわけて
その鼻でかぎわけて それが海なのか膿なのか

【7】
あなたは海で あなたは雲で
その雨の一粒があなただった
あなたはその乾いた地面に一点の水を与えうるおした
その恵みに力を貸すべく 一人の女が腹を貸した
そのうるおいは役目を果たし やがて海に還っていくだろう
朝露のようないのち
朝露のようないのち

地球の青は
ラ・メール メール
産み出した 海の底にたまった 膿 を出せ
そのまま わがまま あるがまま その
ママ の正体と幻
子宮の重みで宇宙を想え
しあわせのうらのふしあわせ しわ寄せ
ては返す波がうつす月 ぐっと引力
産まれるよ産まれるよ
こっちとあっちのはざまにいるまま
2つの世界の橋を渡り
産道を抜けて産まれるよ
すぐそこの宇宙に寝落ちないでね
そこは死の大きな口だよ
ぐわん すかー ぐわん すかー
痛みまどろみに揺さぶられる
泥みたいな魅惑的引力
そこでわたしはなにかをみた

 わたしの身体が神秘だとして
それをだれが教えてくれたか
神秘から産まれた神秘の子
神は隠れる 隠される
ベビベビベイビー バブーバブー
タブーにされてきた波の音
それに従い それに抗い
その過程で捨てられた身体
この身を海だと思おう
この身の海を想おう
すべてを包み すべてのみこみ
初めての波 海がきた
潮風の 生き物の 腐った匂い
こんな恐ろしいところが
どうして人は好きなのか
生かされたくて 殺されたくて
そのはざまを叶えてくれる

わたしよ いつかおおきい水たまりになれるなら
もう少し 生きてはいけないかい
ごはんを炊こう お湯をわかそう
生きてることを隠したい そんなときほどお風呂に浸かろう
洗濯しよう 散歩をしよう
ほんの少し窓を開けよう
月の引力で海に波が起きる
この身は全く関係ないかもしれない
けれどわたしはしんじる
わたしには海がかよっていること
花びらをかきわけた先に海がある
ここに 風に およぐ 魚

産まれたとき、わたしは言いました
わたし、ママと結婚する
この世は不安でいっぱいで、けれどママだけがやさしく光っていました
わたしはママが大好きだったのです
わたしはママとふれあい、ママのお乳を吸いました
もっとたくさんそうしていたかったけど、それは叶いませんでした
ママはかよわくてわたしはママを守ってあげないといけませんでした
わたしはママと結婚したかったけど、できませんでした
けれども2人はよくがんばりました
やがてわたしは一人になりました
そんなとき、神様がわたしに二人目のママを与えてくれました
そのママはわたしの話をなんでも聞いてくれてすべてを受け止めてくれました
わたしが傷ついたとき、ママがわたしに大丈夫だよっておまじないをしてくれました
わたしママと結婚する
そしてママと二人で家庭を築きました
ママとたくさんふれあいました
まるでほんとうに小さい頃みたいに
ママはやわらかくてやさしくてきもちがいい
そうしてわたしにはママとの子どもができました
わたしはその子をママといっしょに育てました
その子はやわらかくてやさしくてきもちがいい光のような子でした
そうしていつまでもいつまでも幸せに暮らしました
ありがとうわたしのお話を聞いてくれて
ありがとう
ありがとう
(と去る)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?