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禍話『狭い道の家』

 とある繁華街。両脇を居酒屋に挟まれて、人一人入れるかぐらいの極狭の路地がある。そこを真っ直ぐ行くと、突き当りになって今度は右側にまた狭い道が続く。しばらく進むと、開けた空間が現れる。バスケットコート程の面積の敷地が広がり、草が好き勝手に生い茂っている。そこに、ぽつんと平屋がある。  周りを見ると、敷地を囲むようにして雑居ビルが立ち並んでいるのだが、どのビルも、敷地に面した壁にだけほどんど窓がない。僅かにある窓すら、塗装されていたり曇りガラスになっていて機能していない。  表

    • 禍話『小虫の夢』

       ある日、自分の許に届いた一通のメールにおや、と思った。  差出人はサークルの先輩だった。お互い電話番号を登録しておらずメールのみの間柄ゆえ、これといって連絡を取ることもなく、長らく交流が途絶えていた。 ちょっと相談があるんだけど。  メールにはこうとだけ書かれていた。お金関係じゃないならいいですよ、と冗談を言うと、待ち合わせ場所をしるした真面目な文が返ってきて少し面食らった。込み入った話なのだろうか。宗教事やお金目当てなら断るつもりだが、文面から察するに、何か切羽詰まっ

    禍話『狭い道の家』