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ポンコツ忍者チームのキラキラな日常⑧

ここは伊賀の杜大忍術専修学校の側にあるとあるアパートの一室

やったぁ、初めての給料だ!
障害者になってから、初めての給料!
何に使おう?
今なら、高級いちご大福を買い占めることも、好きなアーティストの楽曲をタウンロードしまくることも出きる。なんなら、映画館で新発売のイチゴミルクポップコーンを食べながら、新作からリバイバル作品まで総なめすることだって夢じゃない!

そうだ!ゆるりんとひらりんを連れて食事に行こう!
美味しいものを山ほど食べることが出きるホテルバイキングがいいな!
オシャレな場所で、オシャレな服着て、オシャレな会話をして、オシャレな料理を食べよう!
それが、成功者となった今の僕にはふさわしい。
そう、今の僕は成功者だ!
この里から、遠く離れた江戸の街へ通い、七三分けのビジネスマンに混じって大判小判を稼ぐ。
里のみんなの希望になって、障害者でもやれるところを見せてやるんだ!
その思いを胸に、ここまでやって来た。
頑張ってきた。戦ってきた。
だから、今夜はお祝いだ。
ゆるりんとひらりんも喜んでくれている。
ほら、ゆるりんたら、あんな大きな酒徳利抱えて
キンタマだって、びろーんと拡がっている。

んっ?キンタマ?

僕は眠い目を擦ると、抱いていたタヌキの信楽焼を元に戻した。
宴席の名残で、荒れ放題となった室内に埋もれるように、ゆるりんとひらりんが眠っている。

あぁ、昨日の宴会の途中で寝落ちしちゃったんだな。
しかし、自分の野望満載の夢だったなぁ。
昨夜は、みんなのこれからについて夢を語り合ったからなぁ。
かなりその想いに引っ張られたなぁ。
水を一杯飲み干して少し落ち着くと、ゆるりんとひらりんを眺める。
幸せそうな寝顔に癒されながら、顔に墨でいたずら書きしてみたいなぁと思うが、やめておく。
(まぁ、僕は紳士だからね)
そう、ひとりごちる僕が自分の顔にされた、いたずら書きに気がつくのは、まだ数時間先である。

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