見出し画像

ポンコツ忍者チームのキラキラな日常⑧

ここは伊賀の杜大忍術専修学校の音楽堂。
今、この音楽堂であるイベントのリハーサルが行われている。仕掛人は我らがDJヤミー。今回はイベンターとしての参戦である。登場するアーティストは2人。透き通る歌声が涼やかな、ちゃれぽこと、チャリれれ。更にその力強い歌声が皆を惹き付けるうずぽこと、うずまきである。普段はお互いソロ活動をしているが、ひょんなことから交流が生まれ、2人でユニットを結成することになったのだ。たちまち、江戸や大阪など大都市で人気となった彼女達のヒット曲『甲賀でも好きな人』は今や町人から旗本まで、皆が口ずさむ流行歌であった。
それにしても、さすがは人気の2人のリハーサルである。特殊効果な光の明滅、煙が吹き出す仕掛け、花火の用意など、見事な力の入れようである。完全にヤミーが世界観を作り上げている。その様子を覗こうと、多くの野次馬が集まっている。しかし、僕には不思議な事があった。こんな大がかりなフェスティバルである。マイペースな絵手紙作家ひらりんが覗きに来ないのは、お約束としても、いつもならいるはずのフェス大好き忍者の姿がさっきから見えないのである。キョロキョロ見回してみるが、影も形も無い。
「おかしいなぁ?ゆるりん。何をしているんだろう?」
そうこうするうちに、リハーサルも終わり、イベント本番の時間になってしまった。
ゆるりんが姿を見せないまま、空き地に土管を積み上げた斬新なセットでのリサイタルが開始した。ちゃれぽの透き通る声とうずぽの力強い声の織り成す世界は、時に美しく時に荒々しくリサイタルに訪れたオーディエンスを夢のような世界へと引き込んだ!ステージのボルテージは最高潮!
「続いては、私達の代表曲。『甲賀でも好きな人』です」
ちゃれぽの曲紹介と共に、ステージ上の手筒花火が火を噴きます!
「今日は、この曲を作ったシークレットゲストを紹介するでぇ」
うずぽの威勢の良い掛け声と共に、煙のなかに人影が浮かび上がります。
この時点で、嫌な予感がしている僕。ドカーンという爆発音と共に、ゆるりんの登場である。ケホケホ咳き込みながら、やぁやぁと手をあげ、まるで大物政治家のようなゆるりん。
「実はゆるりんが私達を結びつけてくれた人でもあるの!」
「ほんま、感謝ですわぁ」
ちゃれぽとうずぽがゆるりんを紹介するなか、ゆるりんは大物政治家のような挨拶を止めること無く愛想を振り撒いている。
「今日はゆるりん改めゆるぽと一緒に歌おうと思います!」
「ほな、ゆるぽ。いくでぇ」
1、2、3、4!
ムーディーでメロディアスな前奏が始まり、オーディエンスは一斉にペンライトを左右に揺らし出す。ちゃれぽとうずぽは素敵なハーモニーを奏でている。ゆるぽこと、ゆるりんは相変わらず手を振り続けている。サビの部分、2人はあえて歌わずマイクをゆるぽに向ける!
しかし、ゆるぽは歌うことなく笑顔のまま
「やぁやぁ、どうもどうも」を繰り返している。2人は困惑しながらも歌い続け、再びのサビ!今度こそ、という思いを込めてマイクをゆるぽに向ける。
だがしかし、ゆるぽは恒例の「やぁやぁ、どうもどうも」を続けている。

僕は気づいてしまった!
聴覚過敏のゆるりんが、あの爆発音に耐えられるわけない!だから、ゆるりんはしっかりと耳栓を着けているのだ!そして、今、どんなことが起きているのか分かっていない!
大声で、ステージ上に耳栓のことを伝えても良いが、このカオスな状況が楽しかったので、もうしばらく、このままでも良いか!と思う夏の日なのであった笑


○久々の物語です
いつもの、ゆるりんの他、ちゃりれれさん、うずまきさんにもご登場頂きました笑
完全、事後承諾です!
ビックリさせてごめんねぇ✨

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?