命題に対する思索① 「命題そのものについて」

 私の言語に対する問題は命題に対する問題に収斂し、命題に対する問題は、私の思考、実存、生き方の問題に他ならない。(これについての考察は後の号で行いたいと思う)
 私は、この私の心を支配している命題についてもう一度整理し、考え方から自己の存在についての再定義を試みたいと考え、記事を書こうと決意した。
 主な構成としては、大見出しで大テーマ、小見出しで各々の記述を行い、下でそれについて補足を行う。

1 命題と論理空間の相互関係

1-1 命題とは論理空間の構成要素である。

 ある物事を定義するとき、そこに未定義語が含まれることは適切とはされない。しかし、これが(少なくとも1つのアプリオリな事実が存在しない限り)無限後退を産み出すのは明らかである。AはBである→BはCである→CはDである…… のように。故に、私は論理空間というコンセプト(及びそれに付随する構成要素の存在)を前提に議論を行う。これについて私はできる限りの叙述を行うことにより、誤解が無いように努めたい。論理空間は数学基礎論的な「クラス」に近い議論対象を明確にするためのコンセプトである。
 論理空間の「構成要素」たるコンセプトについて、そして論理空間そのものについては、繰り返すが前提として無条件に受け入れるものでなく、吟味し、叙述し続けなければならない事項であることは確認しておきたい。

1-2 論理空間の在り方は唯、命題が決定し、命題の在り方は唯、論理空間が決定する。

 故に、命題の性質を異にするならば、論理空間の性質を異にする可能性がある。踏み込んでいえば、命題の真偽は("真偽"は未定義語だが)論理空間に依存する。
 「Aの在り方」とはAがいかように議論されるか、つまりAの性質についてを述部で述べていると解釈すればよい。命題に対する我々の受け取り方(要は真偽など)が論理空間の変容によって変わり得るのである。
 そしてもう一つ重要なのは命題でないものは論理空間に何ら影響を与えず、逆も然り、という主張である。

1-3 命題の在り方は変容する。故に、論理空間は変容する。

 1-2より後半部の推論の妥当性は担保される。
 例えば台所に林檎にあったとして、それを食卓に運んだとする。すれば、「台所に林檎がある」という命題の真偽、すなわち性質が変化する。これは論理空間が変容したも言いうるのである。

1-4 命題は対象(つまり、何について語るか)を示さなければならない、極めて言えば、命題はすべて事態(ことがら)である。

 「りんご」「ごりら」「らくだ」のみでは命題にならない。「ごりらがドラミングをする」やら「りんごが机の上にある」と記述されて初めて、それが命題へと転化する。
 「事態」(ことがら)とは、「ありうる」(記述されうる)いかなる現象、状態である。

1-5 命題は様々な方法で記述されうる、命題の記述とは命題の像を写し取ることに他ならない。

 像(image)を厳密に定義するには圏論(など)でいう「射」の概念を明確にせねばならない。初等的に説明するなら、適当な(集合の)要素を、ただ一つの要素に結びつける「写し取り」である。
 「任意の実数X,Yに対しX^2+Y^2≧0である。」という記述は鍵括弧のなかの命題を「文字に起こす」という方法で記述している(像として表現している)にすぎない。

有名な写真

 上のアインシュタインの写真は、たとえば「アインシュタインが舌を出している」という命題を記述している。言い換えれば、その命題の像を「写真」を通して写し出している。

2 命題の在り方

2-1 一般命題に対する在り方を記述する際、命題を命題記号としてシンボライズすることが可能である。

 命題Pに対して、かくかくしかじかと書いて一般性質を記述可能であるということを述べている。

2-2 命題のうち、他の命題と両立不可能な(他の命題の在り方を変容させない)最小単位を、要素命題と呼ぶ。任意の命題は要素命題の連関(関係)によって構成される。

 命題の記述は最小単位に分解される、それの「連関」で命題を構成する、「連関」は後に仔細に叙述することにして、今はリテラルに解釈して問題ない。

2-3 命題には「真偽」という在り方がある、議論の際の「真偽」とは、与えられた論理空間における命題が示す事態の成立によって決定する。成立していればその命題は「真」そうでなければ「偽」である。

 排中律を認めていることになる。この真偽はつまり、我々は世界において議論する際にこれが成立する故にこれは成立するか、否か? というのを積み重ねてゆくのである。

2-4 命題の真偽はその要素命題の真偽によりのみで決定する。

2-5 命題の在り方は唯、要素命題の真偽が決定する。よって、論理空間を決定するのも唯、要素命題の真偽である。

 このチャプターのメイン・イシューである。命題の真偽が唯、その命題の在り方を決め、そして論理空間も決定するのである。これはコンピュータが0,1で様々な演算や、文字列の処理、生成を行っているのとよく似ている。要素命題が決定してしまえばそれらを連関した適当な命題の真偽が定まる、それ自身が、議論をする我々にとって、命題の完璧な分析であることを述べておきたい。

 

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