テレビを消して、本を読む。しーんとしてる家の中で、電気の音だけが静かに聞こえる。

なんとなくその音を聞きながらボーッとしていたら、ふっと祖母の家を思い出した。夏休みになると必ず泊まりに行っていた。

同い年の従兄弟が2人、その姉妹も含めて同世代は5人。夜に布団に潜り込んでも、クスクスと笑い合って、おしゃべりを続けて、最後にはお腹が空いて、こっそりと一階へ降りて、暗い廊下をぱたぱたと台所へ抜けていく。

実際には、うるさかったであろう。5人でバタバタと階段を降りて、くすくす笑いながら廊下を走って台所へいく。祖父母の部屋は廊下に面していて、ふすま扉があるだけ。隙間からは電気を1番小さくした光が漏れていて、寝ているのか、寝ようとしているのかはわからなかった。

そんなのはお構いなしで、私たちは台所へいき、炊飯器から勝手にご飯を出して、お茶漬けにして、それを回し食べた。夜中に、ちょっとだけ悪さをしているという後ろめたさと、夏の夜の秘密の冒険の様な感覚があって、わくわくしながら小声で静かに喋って、急いで食べた。満足したらまた二階へぱたぱたと上がっていく。これが夏休みの夜の恒例だった。

この冷蔵庫の音は、その時のしんとした夜、祖父母の家の台所で聞いてた冷蔵庫の音。知らないうちにわたしの体に染み付いてて、一気に祖父母の家の中を、匂いまで鮮明に思い出させた。

祖母は元気に生きている。でも祖父はもういない。ふと、おじいちゃん。と声に出た。なんだか心がじんわりとする夜。会いに来てくれたのか、みんなそんな夜があるのかな。


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