見出し画像

マーク・ミリー統合参謀本部議長の行動をバイデン政権と左派メディアは擁護。

マーク・ミリー統合参謀本部議長の問題となっている行動は、大きく分けて2つです。1つは、中国人民解放軍のトップへ、トランプ大統領に断りなく、米軍は中国を攻撃する意思がないことを電話で2度にわたって伝えていること。もう1つは、トランプ大統領の精神状態を理由に勝手に核の発射プロトコルを変更したことです。

バイデン政権は、この2つの行動を妥当であったかのように擁護していますが、何をもって妥当と判断するのかが問題です。

共和党のマルコ・ルビオ上院議員などは、この件を厳しく追及しています。日本のネット上でも意見が分かれているようですが、合衆国憲法上、米軍の最高司令官である大統領の命令を無視して、実力組織である軍のトップが、攻撃の是非を決めることを容認すれば、これは大変危険なことで、文民統制の原則が崩れ、悪い前例が残ることになります。

今回の問題では、トランプ大統領の精神状態を理由にしていますが、もし、大統領が職務遂行能力を失ったと判断した場合、憲法修正25条によって行わなければなりません。ミリー議長が独断で大統領の攻撃命令を無視するよう、内密に軍幹部に命令することは、やはり問題となる行為です。これが認められるならアメリカという国で、今後、軍部によるクーデターで軍事独裁政権が誕生することもあり得る話になります。

法的に見れば、トランプ大統領だけを問題にして「トランプだからでしょ?」って話は、そもそも問題の本質ではありません。統合参謀本部議長に大統領の攻撃(あるいは攻撃しない)命令を無視してもいい法的権限があるのかと言えば、答えはNoです。さらに言えば軍人のトップであっても統合参謀本部議長には、各軍の実戦部隊へ指揮命令をする権限は与えられていません。以下でその点について触れておきます。

1.アメリカ合衆国憲法上の戦争権限

合衆国憲法上、大統領は、陸軍、海軍、空軍、新たに創設された宇宙軍、独立軍として海兵隊、沿岸警備隊、および各州の州兵の最高司令官という性格を持ちます(アメリカ合衆国憲法第二条第二節第一項)。しかし、米国憲法には、最高司令官としての役割以外の大統領の戦争権限を明示した規定はされていません。

これに対し、合衆国憲法では、議会が5つの権限を持つことが明示されています。1つ目は、立法権(米国憲法第1条第1項)。2つ目は、宣戦布告権(第1条第8項第11節)。第3に、軍隊を編成する権利(第1条第8項第12〜14節)。第4に、民兵の召集と組織(第1条第8項第15〜16項)。第5は、歳出権である(第1条第9項第7項)。

以上のことから、米国憲法の下では、大統領が統帥や作戦、用兵という軍令事項に関する権限を有しているのに対し、議会は軍隊の編制や予算などの軍政事項に関する権限を有していることになります。このように、米国の軍事システムは、シビリアン・コントロール (文民統制) とチェック・アンド・バランス (権力分立) の2つの原則に基づいて運営されています。

2.統合参謀本部議長とは?

アメリカ軍を統率する軍人(制服組)のトップ。大統領および国防長官の最高軍事顧問です。

議長は、アメリカ合衆国大統領及び国防長官をはじめ、国家安全保障会議、国土安全保障会議の主たる軍事顧問であって、助言に関しては、他の参謀本部メンバーよりも大きい権限を有しています。ですが、実戦部隊の作戦指揮権 ('operational command') は与えられていません。作戦命令は、軍の最高司令官(Commander-in-chief)たる大統領から国防長官を経て、直接各統合軍司令官を通じて発動されるものです。

1986年のゴールドウォーター=ニコルズ国防総省再編法 (Goldwater-Nichols Department of Defense Reorganization Act of 1986) によれば、統合参謀本部は大統領、国防長官への軍事アドバイザーであり、アドバイザーでしかないのです。決定権は有していないため、軍事作戦の指揮命令系統には入っていません。

2020年10月の電話では、中国人民解放軍のトップと電話で攻撃に関する話をしたことは、定期的に行われていることだとしています。2020年10月の電話では、当時の国防長官マーク・エスパー(11月にトランプ大統領によって突然解任されている)の許可があったとされていますが、この二人共に大統領の意向汲んでいたのかは、大いに疑問が残ります。

敵国に「攻撃しないよ。攻撃する時はやる前に教えるね。突然はあり得ないから大丈夫。」と話しているのです。これを中国側が、「ほんと?よろしくね!」で会話が終わるとも思えません。

2021年1月8日には、1月6日の事件をきっかけにトランプ大統領の行動を心配していた中国に対し、「安心しろ。米国政府は安定している。ちゃんとコントロールしているよ。」と話しています。それは、当時の国防長官代理クリストファー・ミラーには許可を得ていないこともわかりました。

ナンシー・ペロシ下院議長が、トランプ大統領から核を奪うように進言したことも、憲法違反に当たります。議会には権限はありますが、議会を通さず、下院議長の一存で行うことはできません。米国左派勢力は、どんな無茶でも自分たちなら許されるとでも思っているかのようです。

バイデン政権は、この行為を擁護していますが、不問に付されれば、今後、いかなる大統領の下でも起こり得る悪しき前例となるかもしれません。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?