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店を続けるということ

『僕も座って話してもいいですか?』

4周年を迎えた酒場の店主と、その夜初めて杯を交わした。

『スタッフとお客さんと取引先と、店を通じていろんな化学反応が生まれるような。そんな"仲介"のような存在の店にしたかった。幸か不幸か、今は店を始める時にやりたかったようなことができている。』

"店を神格化してほしくない"
そう何度も呟いた店主の言葉は続く。

『常連さんは自分と同い年かそれ以上の方が多い。このコロナ禍で常連さんに助けられた。もちろんそれは有難いことなんだけど、このままじゃマズいと思った。「未来がない」と思った。』
『この数ヶ月で若い層のお客さんも増えた。一年前は"写真が撮りたいんだろう"くらいに感じていたが、今は違う考えで。
だし巻き玉子を食べて、"こんなだし巻き玉子食べたことない、おいしい"と感激してくれるんです。自分としては毎日同じものを作っている訳だから、そういう感覚って新鮮で。なんて可能性のある世代なんだろうって感じて。自分たちが同じ世代のときなんてチェーンの居酒屋ばっかりだったのに、今の若い世代はちゃんと美味しい店を知ってる。そういう世代が歳を重ねて、またこの店に通ってもらえるようにしたい。「続けていかなきゃな」と思ったんです。』

元お菓子屋というスタッフが作ったチーズケーキを頬張りながら、話は続く。

『スタッフもこの一年で入れ替わり、今は若い子が中心。やりたくもない皿洗いをやることもあるんだけど、スタッフひとりひとりがやりたいことをこの店でやっていってほしい。』

『お店の真ん中に立って、スタッフやお客さんに日々いい刺激をもらえている。やはり大変な時代だし、飲食店にとっては無理ゲーな世界になっているんだけど、こういうご褒美みたいな時間のために頑張れている。』

5年目と、その先を見据えた店主の笑顔がとても印象的だった。

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