くちびるがしょっぱい⑤ 美しく

小さい頃から、湯船が嫌いでした。
熱いし、じっとしてらんないし。
父に無理矢理、浸からされたのを覚えております。
頭を掴まれて、沈められて。
「男は我慢しろ」
溺れかける息子を父は笑ってました。
だいぶ。
そうして、いまも生きております。

ここ最近の「ふむふむ」な日々。
お弁当ばかりの「ふむふむ」な生活。
寝不足な「ふむふむ」した生活。
そうして色んな巡りが悪くなって、湯船に浸かってみました。

頭まで浸かって、少し怖くなって。
勢いよく顔を出して。汚れは流れたはずなのに、くちびるに感じた、ほのかな塩の味。

テレビを点けても、はっきりとしない世の中。
道ゆく人々と、渦巻く欲望。
部屋に散らかった「ベントウガラ」。

僕は、少し、暗くて、うだつのあがらない。
そんな「不出来」さを、いま生きている。
ほのかなしょっぱさを感じながら、なんとなく、こうして、言葉として残しておきたくなって、こうして言葉に残してしまっていて。

湯船が怖くて、夜が怖くて、寝れない。
寝れなくて、流れの悪くなった生活と、「不出来」な作品。

美しく、ありたい。
明るくて、輝かしくて。
でも、言い訳のようでしかないけれど、せめて、美しくあれたら。
明るく、輝かしく、あれたら。
僕は僕なりに、そんなことを思って、こんなことを、書き残してみているのかも、しれません。

「わかってもらわれなくていい」。
今は、「わかってもらいたい」。
いいや、素直に「わかる」人になりたい。
「わからない」なんて、そんな人止まりなんて、嫌だ。
「「面白い」を超越した」。そんな言い回しなんて、嫌だ。
はっきりと、しっかりと。
「面白い」「美しい」。そう、ありたい。
あり続けたい。
誰かの心に残ったり、誰かをあっとさせたり。誰かに理解されて、誰かに覚えてもらって、評価される。
そんなことよりも、とにかく僕は、美しくありたい。面白くありたい。

くちびるが、しょっぱい。

この感覚を、覚えておきたい。
残るものを、カラダから出して。
そして、これからも、生きていけたら。
明るく、輝かしく。
生きていく。
生きて、生きて、生きて。

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