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0406:法制度の関連性

 ふとしたことで消費者契約法に基づく取消権行使に際しての返還義務について探求する必要に迫られた。

 消費者契約法は民法の特例法に当たる。BtoC(事業者対消費者)取引においては、BtoBや私人間の取引に比べて非対称性についての保護の必要性が高く、消費者側からの取消権の範囲を民法よりも広げている。そして、その場合の返還義務についても、民法をベースとして一定の要件下で特例を働かせている。

■消費者契約法
(取消権を行使した消費者の返還義務)
第6条の2 民法第121条の2第1項の規定にかかわらず、消費者契約に基づく債務の履行として給付を受けた消費者は、第4条第1項から第4項までの規定により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消した場合において、給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、当該消費者契約によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
■民法
(原状回復の義務)
第121条の2 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
2 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
3 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。

 つまるところ、未成年者を含む制限行為能力者の契約取消は民法第121条の2第3項により、現存利益の範囲で返還義務を負う。成人の消費者契約法に基づく契約取消は第6条の2により、給付を受けた時に善意であった場合に限り同様で、悪意であれば第121条の2第1項のとおり原状回復義務を負うわけか。なるほどなるほど──。

※と書いてアップしたけれど、その後につらつら後述の逐条解説読み直したり考えたりするうちに、そう単純ではない状況に思い至った。続きは今日(本記事の翌日)の記事で。

 民法も消費者契約法も条名に枝番がついていることから分かるように、これらは改正で設けられた条項だ。民法上記条項の施行期日は平成32年(=令和2年)4月1日、消契法のそれは民法の施行日とされている。

 これまで消費者契約法には返還規定が設けられておらず、民法の一般原則に則っていた。それが今回の改正により、わざわざ新たに設けられた。なんで?

 この規定について探索するうち、消費者庁の逐条解説に行き当たった。

 第6条の2については、PDF3ページを費やして改正の趣旨について解説されていた。なるほど。民法の改正により消費者契約法の返還義務内容が変更(消費者にとって不利益)なものになりかねないため、従前どおりの取り扱いとするためにわざわざ消費者契約法も改正された次第か。

 先日内田貴『改正民法のはなし』を読んだ。一読で十分に理解出来たとはいえないが、それでも従前の民法でいろいろと課題があったものを解決しようと遡上に挙げ、法曹関係者や利害を有する人々の侃々諤々の議論を経て、一定の妥協の末に今回の大改正が行われる様子を描いた当事者のエッセイとして読み応えがあったし、面白かった。

 法律は単独で成立しているわけではない。一般法と特例法の参照関係が必ずつきまとう。私法の根本たる民法は、一体どれだけの法律との間で網の目を形成しているのか、想像も付かない。今回消費者契約法の探求を必要としたおかげで、あらためてその事を意識することになった。

--------(以下noteの平常日記要素)

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積148h38m/合格目安3,000時間まであと2,852時間】
実績30分、週ナカ家業デーにつきドリルのみ。

■本日摂取したオタク成分(オタキングログ)
『交響詩篇エウレカセブン』第41~45話、世界の深奥に到達。そうかあ、これはレントンとエウレカの、ノルブとサクヤの、ホランドとタルホの、ドミニクとアネモネの、愛の物語だったかあ。男女の愛情から派生する家族の愛情もまたテーマであることは、初回のじいちゃんとレントンの関係から明示されていたけれど、45話のモーリスの言動、それを見守るレントンとエウレカの言動からもひしひしと伝わった。少年少女は成長し、やがて大人になる。レントンたちが異世界を彷徨う間に、その外では大人たちの物語が展開している。初回から三枚目脇役で登場していたユルゲンスがここに来て状況全体を一変させるキーパーソンとなるとはなあ、かっこいい。『ブラタモリ 筑波』、筑波山かと思ったら国土地理院か! 航空写真から地図を作成する過程、ドキワクもの。

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