0653:旧統一教会の名称変更と行政の認証手続

安倍元首相暗殺事件の動機として言及されていた「特定の宗教」、それが世界平和統一家庭連合であることが本日一斉に報じられた。聴き慣れない教団名だが、旧名称「統一教会」といえば、一定年齢以上の人は「ああ!」と思い当たるだろう。昭和の時期から長く霊感商法で、平成に入ると合同結婚式で注目された宗教だ。私も昭和の人間なので当時のことは強く印象に残っている。それに、霊感商法はガチの消費者問題で、全国の消費生活センターに相談が寄せられていたと聴く。

さて。実はこの統一教会を巡って、元公務員として気になることがある。それは、「世界基督教統一神霊協会(通称:統一教会)」が「世界平和統一家庭連合」に改称した経緯だ。

まず前提知識を押さえておこう。これは登記が絡むので、司法書士の仕事にも関わるものだ。

宗教法人法
第二章 設立
(設立の手続)

第十二条 宗教法人を設立しようとする者は、左に掲げる事項を記載した規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受けなければならない。
一 目的
二 名称
【略】
(規則の認証の申請)
第十三条 前条第一項の規定による認証を受けようとする者は、認証申請書及び規則二通に左に掲げる書類を添えて、これを所轄庁に提出し、その認証を申請しなければならない。
【略】
(規則の認証)
第十四条 所轄庁は、前条の規定による認証の申請を受理した場合においては、その受理の日を附記した書面でその旨を当該申請者に通知した後、当該申請に係る事案が左に掲げる要件を備えているかどうかを審査し、これらの要件を備えていると認めたときはその規則を認証する旨の決定をし、これらの要件を備えていないと認めたとき又はその受理した規則及びその添附書類の記載によつてはこれらの要件を備えているかどうかを確認することができないときはその規則を認証することができない旨の決定をしなければならない。
一 当該団体が宗教団体であること。
二 当該規則がこの法律その他の法令の規定に適合していること。
三 当該設立の手続が第十二条の規定に従つてなされていること。
【略】
第四章 規則の変更
(規則の変更の手続)

第二十六条 宗教法人は、規則を変更しようとするときは、規則で定めるところによりその変更のための手続をし、その規則の変更について所轄庁の認証を受けなければならない。
【略】
第七章 登記
第一節 宗教法人の登記
(設立の登記)

第五十二条 宗教法人の設立の登記は、規則の認証書の交付を受けた日から二週間以内に、主たる事務所の所在地においてしなければならない。
2 設立の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的(第六条の規定による事業を行う場合には、その事業の種類を含む。)
二 名称
【略】
(変更の登記)
第五十三条 宗教法人において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
宗教法人の名称は法人規則に定めるものである(12条2号)。その規則は所轄庁の認証を経て発効し(14条)、それを元に法人登記される(52条2項2号)。

ここでいう「所轄庁」は、普通の神社やお寺のように所在地が一箇所だけのもの、複数あっても全て同一都道府県内であるものは、都道府県知事になる。全国展開しているような法人の場合は、文部科学大臣(事務は文化庁所管)だ。

統一教会の場合は全国組織なので、名称を変更する場合は文部科学大臣の認証を要する。通常であれば、法令の要件さえ満たせば名称変更は通る。仮に所轄庁が認証しない場合は、行政手続法に基づき理由を明確に示す必要があるし、申請者側に不服があれば行政不服審査制度や訴訟を通じて争える。

統一教会から家庭連合への名称変更は、1997年から継続して申請されていたようだ。しかし、霊感商法を行う団体として世間の注目を集めている教団であり、被害拡大防止のために名称変更を認めない取り扱いが続いていた。不服審査請求があったかどうかは知らない。

それが2015年に突然認証された。当時の報道でそれを聴いた時、えっなぜ? と思ったものだ。さきほど当時の経緯がどこかにないかネットで探してみたが、間接的なものしか探し出せなかった

先に記したように、規則変更認証申請があった場合、形式的に適法であれば行政は通す。長年それを通さなかったのは、形式以外の理由があってのことだ。それは当然、霊感商法で世に知られた教団名を変えることの社会的影響を考慮してのことと思われる。

形式ではなく実態をみての判断。その判断が変更になったのは、何故だろう。当時も意識して報道を追っていたつもりだが、理由は明らかにならなかった。今検索してみても同じだ。検索の中には「安倍長期政権下で有力議員の○○が圧力を掛けたから」という説もあったが、根拠の不確かな陰謀論的意見を鵜呑みにするわけにはいかない。

もうほんとただ純粋に、「行政の判断に決定的な変更があった背景に、どのような経緯があったんだろうなあ」と興味があるのだ。

【続報はこちら】

--------以下noteの平常日記要素)

■本日のやくみん進捗
第1話第21回、5,180字から進まず。

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積266h57m/合格目安3,000時間まであと2,734時間】
勉強再開するつもりが結局ノー勉強デー。

■本日摂取したオタク成分
『クローズアップ現代 安倍元首相銃撃 事件の"背景"に何が』、これを観ながら今回の記事を着想した。

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