0368:やくみん覚え書き/悪いことするから規制する
昔、歴史系の何かの授業を受けていた時に「律令や法度など古い法令には、現代の目から見ると奇妙なものが含まれている。実際にそういう事をする人が存在したから、それを規制する法令が制定される。だから法令を読み解くと、当時の世の中が分かる」という話を聴いたことがある。
今回民法の勉強をしていると、詐欺だの強迫だのはもとより、状況につけ込んで自分の利益にしようと行動した第三者や転得者などがいた時にどのように処理をするか、ということが非常に細かく規定されていることが分かる。それだけ世の中にはそのようなトラブルが多数あり、法律で決着を付ける場面があるということなんだなあ、としみじみ感じる。
法律を新たに制定する際、その法律を必要とする根拠(法律がないために起きている不具合の事実)が必要だ。これを立法事実という。必要もないのに国民の自由を束縛する規制法を制定することはできないから、国会では立法事実と法律案を照らし合わせて議論を重ねることになる。
例えば、今年の国会で特定商取引法が改正された。注文していないのに勝手に商品を送りつけられた場合、直ちに商品を処分できることとされた(従来は一定期間の保管を要した)。
この法改正の立法事実に当たる「送りつけ商法」は、私が消費者行政部門にいた時期に全国で猖獗を極めた。例えば、北海道の業者を名乗って勝手に蟹を送りつけたり、オーダーメードの健康食品錠剤を送りつける。憶えがないので電話をかけると「間違いなくそちらから注文されたから送ったんだ」と支払を要求される。その言動は非常に乱暴なもので、消費生活センターでは別名「怒鳴りつけ商法」とも呼んでいた。もちろんこれは、怒鳴りつけることで消費者を心理支配するテクニックで、電話でコンタクトすること自体が罠にはまっている。本来、注文していないのだが申込と承諾の結びつきがなく、契約は成立していないからお金を払う必要はない。しかし、乱暴な言葉で威圧された高齢者は「注文したのを忘れたのかもしれない、自分が悪いんだ」と払ってしまう人が少なくなかった。当時の国民生活センターの報告は以下にある。
本当にひどい悪質商法で、これを立法事実として今回の改正法成立に結びついたわけだ。時間はかなりかかったが、「契約が成立していない=事業者側に商品の所有権がある」状況で消費者の即時処分を可能にするには、立法事実を踏まえてもなお困難な調整を重ねる必要があったのだろう。
なお、今回の改正のもうひとつの目玉は、詐欺的定期購入に関するものだ。これも近年トラブルが多発しており、今回「定期購入でないと誤認させる表示等」の直罰化や取消権が整備された。やくみん第5回のローカルニュースで澄舞県が行政処分したのは、これだ。
直近の法改正をどこまで物語に織り込むかは思案のしどころではあるが(今後の物語の展開上、舞台となる年を特定したくないので)、少なくとも現実世界がこうして少しずつ悪質商法を抑制する方向に進んでいるのは喜ばしいことだ。もちろん、悪質業者は常に法律の裏をかいてくる。律令時代から現代に至るまで、法令は悪人とのイタチごっこということなのだろう。
--------(以下noteの平常日記要素)
■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積106h22m/合格目安3,000時間まであと2,894時間】
実績42分、週末から引き続きの家業デーであまり勉強できず。
■本日摂取したオタク成分(オタキングログ)
『ウマ娘プリティダービー』第6~7話、スズカさぁん! 『認知症の第一人者が認知症になった』観入った。私の親も認知症で、施設に入る前はいろいろなトラブルがあった。これは誰にでもあり得る話。『映像の世紀プレミアム アメリカ 自由の国の秘密と嘘』たまたまチャンネルをひねったら(実際は「リモコンのボタンを押したら」)始まって少しのところで、そのまま家族で観入ってしまった。権力闘争の姿。
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