3月買ったCD②

新●月/新●月(1979年)☆4
就職して初めて買ったかもしれないプログレCD。
あれだけ熱があったのに、一般社会に溶け込むと聞かなくなってしまった。
仕方ないよね。20分とか聞けないもん。

新●月は「和製ジェネシス」と呼ばれていた神秘的な音楽性が売りのバンド。
日本のプログレは美狂乱の「和製キングクリムゾン」四人囃子の「和製ピンクフロイド」
って、和製○○ってつけたがる。まあ、まんまパクリフレーズも多いが。
個人的な意見として、日本のプログレで世界と戦うには、和の陰湿さがキーポイントだと思う。
たとえば、四人囃子の「一触即発」「おまつり」美狂乱の「二重人格」「ひとりごと」など。
キャッチーなバンドやとてつもない技術のプログレバンドは海の向こうにたくさんいるが、
陰湿さを謳うバンドはあまり存在しないと思っている。
たとえば、ピンクフロイドとかはかなりダウナーな感じだとはおもうが、陰湿かと聞かれると微妙な感じ。
暗闇で聞いて、何かがそこにいる感覚にはなれない。例えが合っているかは分からないが、
和ホラーと洋ホラーの違いとかと似てる気がする。
「そこにいる」じめっとしたホラーと「ドカン」と驚かせてくるホラー。
どちらがいいとかではなく、日本と海外のプログレはそのような違いがある気がする。
「リング」とかそういうところが評価されたと思うし。

そして、この新●月は前述の四人囃子、美狂乱に負けない陰湿な名曲がある。
今回買った1979年のファーストアルバム一曲目の「鬼」だ。
他に入っている曲も「科学の夜」など江戸川乱歩的な世界観の曲もあるが、
「鬼」の為だけに買って問題ないアルバムだった。

大学時代からずっとYoutubeで「鬼」を聞いていたが、
改めてCD音源で聞くと全ての音が怖い。というか本当に別物に聞こえる。
最初のキーボードのポロンポロンとした音の雨粒とギターの遠い音から
いきなり全員が入ってきておどろおどろしいという言葉がぴったりの展開が始まる。
北山氏のボーカルの線が細いという見方もあるだろうが、このくらい不安定なほうがこの曲にはあっている。

歌詞に関しては、様々解釈があるだろうが。
「雪は消えた すぐに消えた」
「なくしたものならたくさんあると指を折って数えたひとつひとつ思い出せない」
「ゆらゆらゆれ 自分にさよならする」等

物なのか記憶なのかそれとも人なのか感情なのかとても大切なものを無くした人間のあきらめを描いているように思われる。
ただ、無くしたものさえ忘れてしまうその感情に「鬼」という名前を付けたのではないだろうか。

曲の話に戻ると、緩急という言葉がふさわしいように日本のプログレには間奏の泣くギターが重要だ。
この曲も間奏のギターが泣く。曲全体の陰湿さと真逆のように見えてこのギターが歌詞では表せない感情の歪さを物語る。

この曲に関して、作詞作曲を担当した新月の花山氏が興味深い感想を残している。

「憑く」ということばは、ひと昔前までは日常用語でした。
実際に戦後の貧病争といわれた時代にはまだ「キツネツキ」に なった人を九字をきって治療する霊感治療が日常的に行われていました。
肉体と肉体以外の部分との距離がまだそんなに離れ ていない時代だったのかもしれません。

新月の代表曲とされているこの曲の、予想を大きく上回る評 価の声を耳にする時、僕はなにかとんでもないことをしてしま ったような感覚に襲われます。
どうもこの曲には、楽曲の出来 不出来を超えたある部分に、違う世界と行き来するためのフックがついてしまったようなのです。
僕はこの曲への評価は歌詞 やメロディーというより、聞いた人が「見た」「見てしまった 」光景への評価ではないかと思っています。
それはひょっとし て日本人にしか見えない光景なのかもしれません。すべての日本人(的人)が体験した何かの残像です。

http://shingetsu-koro.whitesnow.jp/shingetsukyokumoku.html

youtubeに当時のPVもあるのでぜひ聞いて欲しい。特に暗闇で一人の時に聞いて欲しい。
ジャッププログレの代表作の一枚。


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