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最強戦での発言についての私見。

 今回の発言には、正直ガッカリした。

 大まかに経緯をいうと、麻雀最強戦2020の決勝卓、つまり1位のみがファイナルに進出できるレギュレーションで、南2局に近藤誠一p(最高位戦)の親リーに対して西家の浅井裕介p(最高位戦)が形式テンパイを目指したと思われる仕掛けを入れたところ、近藤pがツモアガリ、6000オールの加点に成功しファイナル進出の決定打となった。これに対して解説の森山茂和p(連盟会長)が「場を壊している。麻雀プロ辞めた方がいい」と発言した。さらに終了後のインタビュー時にも同様の発言をした。

 簡潔ながら経緯をお伝えしたところで、今回の発言には、大きく2つの問題点があると感じた。
①発言そのものが相手に不快な思いや精神的な負担を強いること
②不特定多数の視聴者がいる無料生放送の場での発言であること

この2つについて、順に考えたいと思う。

 ここで私たちが気をつけなければならないのは、

あの場面で形式テンパイを目指すという選択が適切な判断かどうかはまた別次元の判断であり、発言を支える、あるいは否定する根拠にはならない

 ということだ。その是非は一度脇に置いて、発言そのものがどうなのかを考えて欲しい。

①発言そのものが相手に不快な思いや精神的な負担を強いること 


 これについては、もっと別の言い回しで同等のニュアンスを持たせることができたと思う。「辞めた方がいい」というのは、余りにもストレートすぎる表現である。

 まして、同じ麻雀業界として長年にわたる関係がある他団体の一所属選手に対し、団体の代表たる人物が発すべき発言ではないし、そう発言したところでそのような方向に業界が動く訳がない。一般社会でいえば、【同業他社の一社員の言動に腹が立つから社長自らその社員に対し辞めろと宣告する】ようなものだ。ある種の脅迫に近いものだ。

 浅井p自身は、Twitterで前向きな発言をしていたが、心中穏やかではないことは自明である。もし、この発言を受けてリーグ戦で自身の打ち方に変更を加えた結果成績が振るわず降級したならば、その責任をどうとるつもりなのか?余りにも軽い言葉で人を罵っているようにしか思えない。

ここまでで十二分に重大な発言だが、私としてはもっと恐れているのは②のほうである。

②不特定多数の視聴者がいる無料生放送の場での発言であること

 この放送はAbemaTVという無料コンテンツで放送された生放送である。連盟チャンネルやスリアロチャンネルなどといった有料コンテンツと大きく異なるのは、視聴者数やその層が大きく広がること、そして何より、対局にはスポンサーがついていることだ。

 視聴者の観点からいうと、有料コンテンツと比べてより多くの視聴者がこのコンテンツに参加するのは当たり前であり、その層も普段から麻雀に親しんでいる人々もいれば、極端な話他のチャンネルから流れてきた人々で普段は麻雀コンテンツに関心が薄い人が一定数いると考えられる。

 前者の人々は、「森山会長はこういう厳しいことを言うことも愛情表現の1つだよね」と理解できても、後者の人々は「仮にもプロに向かってそんなこと言うのか?」と疑念を持たざるを得ないだろう。またその発言のトーンも、相手に対するいわゆる「いじり」の範疇ではなかったことを考えると、視聴者を置いてけぼりにした発言と捉えられても不思議ではない。

 さらに、この対局にはスポンサーがついている。一般企業である以上、顧客となるかたがたがいる手前、コンプライアンスというのは十分に配慮しているはずだ。
 現代社会においては、パワハラなどに対する世間の評価は厳しいものとなっているにもかかわらずのこの発言を、スポンサーがどう捉えるのか…
 わたしは、この発言でスポンサーが降りたとしても不思議はないと思っている。

 ここまで、私なりに思うことをまとめたが、気になったのが、プロ側とアマチュア側でこの発言に対する反応に差が出たことだった。

 この日は、プロ協会の雀竜位決定戦の最終日と、最高位戦主催の女流名人戦の対局日ということもあったが、本件について直接的に批判的な反応を示したものが余り見られなかった。(私の調査能力の不備があったならば申し訳ないですが)

 一方アマチュア麻雀ファンからは賛否両論の声が直接的に多かったと感じた(感覚的には否定的な意見が多く見られた)。

 もしこの差の原因を考えるならば、「自身の立場が危うくなるから」以外には考えづらい。

 実際、真偽は不明だが様々な憶測が飛び交っている以上、自身の安易な行動が今後の活動に大きく影響を与えてしまう行動はしたくないというのが本音だろう。

 しかし、ここは声を上げるべきではないのか。

 いくらアマチュア側で声を上げたとして、その声がどこまで届くのかは見通せない。
 しかし、同じプロの立場から、浅井pの尊厳を守るための行動を取ってくれる人が出てくることを願っている。

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