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消えることのない最強戦の記憶。

 それは、2018年の麻雀最強戦アマチュア予選でのことだった。

 店舗予選は2回目で通過できた。予選はカットラインギリギリで通過して、決勝卓。

 東1局の親番でこの8000オールを決めて、勝負あり。ベルバードで打ってきた経験はかなり生きていた。友達としかセットをしてこなかった自分にとって、他人と真剣に打つことができたあの場所はかけがえのないものだった。
 

 そして、迎えた西東京最強位決定戦。ここを抜ければ、いよいよ放送対局。このために、ベルバードでたくさん打ち込んだし、セットも最強戦ルールでやらせてもらった。様々な人たちにお世話になった。

 予選リーグは初戦オーラスが最大のターニングポイントだった。箱下2000点で迎えた親番、7巡目にこのテンパイ。

ダマで18000の超大物手。ドラ単騎とはいえスピード勝負の場面では打たれる可能性もあるためヤミテンに構えた。しかし、いつまでも打たれない。そして時間切れの合図。ブザーと同時にリーチを打った。海底にその牌は眠っていた。

 リーチ・ハイテイ・ツモ・ホンイツ・チートイツ・ドラ4。12000オールで奇跡のトップ。

 これがなければ予選は通過できなかっただろう。
その後は安定した打ち方ができて3位で通過できた。

 ここからは1位のみが通過できるベスト16。
 卓組が発表されて席に着くときには、根拠のない自信があった。

 そして迎えた本番。東場は我慢しながらテンパイ料で稼ぎつつ、親番でトイトイドラ2の4000オールをアガったものの、その後は満貫ツモの応酬に耐える展開で我慢を強いられたままオーラスへ。

 点棒状況はおおよそ
私(西家)25900 南家17800 
北家29300 東家27000  だった。

 1巡目に西がポンできた。手牌にはドラの7pが2枚。条件はクリアしている。あとは全速力でアガリに向かうのみ。

 ところが、3巡目の南家からの「リーチ」がすべてを一変させた。

 点リーダーを思わず二度見した。

 跳満ツモ条件をクリアしてるのか?だとすれば何だ?ドラ単騎のチートイツか?焦りから手が震えていた。場を見たらドラが2枚切れている。そして残り2枚は自分で持っている。ホンイツか?それもなさそう。だとすればタンピン三色か?

 思考が広がる余り、1分ほどだろうか考え込んでいた。ここで、点リーダーをもう一度見た。リーチ者とトップは11500点差。横からは満貫

では届かない。

「オレからは直撃できないだろうから踏み込むしかない。」悩んだ末にたどり着いた結論だった。

 その刹那、「ツモ」の声。その主はリーチ者だ。
「あ、終わったな。あがった人を称えるしかないな…」と思い和了形を覗くとそこにあったのは…

「しょうがない、1300/2600だわ。ごめんな。ハハハ」

 何が起こったか分からなかった。
 点棒を渡すその手には、力が入らなかった。そして、その席を立つことがしばらくできなかった。そして、駅前で1人泣いた。

 今まで麻雀で泣いたことはなかった。どんな結果になったとしても、それは自分で何とかするべきものだと思っていたから。ただ今回はそうではなかった。自らのなせる範疇の外の力に屈してしまった。だからこそ、この記憶は消えることはないだろう。

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