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「風の盆恋歌」に事寄せて、断章


タイトル通りである。「風の盆恋歌」に事寄せて、自分語りをしようと思う。

それが運命だったのか、単なる神の、気まぐれな悪戯けだったのか?

お互い、共に人生を送る人がいて、子供がいて、それなりの学歴も仕事もあって、決して裕福ではないが、かといって買いたいものは我慢する程でもなく、幸せがそういうものだったら、幸せというものがある暮らしがあり、顧客からも部下からも、慕われ少々の人望もあり、玉に瑕は、上長からの低評価、それは仕方あるまい、目立ち際立つ能力、そして媚び諂わない態度は、直せないのだから。
そう、子供もだって、いい学校の入試に耐えられる学力を得るための努力ができる真面目さを持ち、そして名門校に合格できる運もあり、、
何一つ、欠けているものがない2人なのに、、、。どうしてこの物語が始まってしまったのか? 誰にも、二人にもわからない、、、大人の、大人の忍ぶことしかできない、でも恋することしかできない物語り。


 これは、君が始めた物語だ。カフェとかレストランで、告白されたなら、君の気持ちを、伝えられたなら、僕もそんなにひどく、動揺することもなかっただろうに。でも君はそうしなかった、たしかに小さな面談室には、僕ときみの2人しかいなかったけど、その周りには、僕の上司も、僕の部下もたくさんいて、ほかの客もいたのに、                        

あなたに、お手紙を書いてきた。でも絶対自分だけで見てください。読み終わったら、誰にも見られない保管場所ってある? そこにお願いしますね。あなたの奥さんに迷惑かけちゃうから、、。

でも、君はそんなひとではない。そんなことをするひとではない。なぜ僕にそんなことを言うのか? 私は得意の笑顔で、頷いて大丈夫です、わかりました、と平静の態度を保っていたが、そこに僕の部下や誰もいなかったら、自分が働くオフィスでなかったら、どうだっただろうか? めの前で、お客さまでもある人の妻が、上気した頬と瞳で、でも少女のような純真な心と言葉で、、、、。                           彼女が、必死に訴えていることは、フツーのことではないことだと、分かっていた。

今日でその仕事は終わり、1年半ほど続いた、彼女との打ち合わせも、今日で、終わるのだから。もう僕に会う口実は、彼女から永遠になくなるのだから。

もうここで会うことは出来ないじゃない、だから外で、、、。僕はもう彼女が何を言っているのか、分からなかった。
遠ざかる前景、押し出される背景。
〇〇さんに、お手紙を書いてきたの。僕と彼女は、クライアントとエージェントの関係ではあったが、気が合ったし、信頼関係は強くはあったとは思うから、だから手紙も皮の文庫サイズのブックカバーのプレゼントまでは、何でもなく、日常のこととして受け取れた。

これは、特別に〇〇さんへのプレゼント。そして、箱をあけて見てといって私を促した。〇〇さん、本を読むって言ってたから、そのブックカバーには、名前まで、ローマ字で彫られていた。
あとで気付いたが、彼女は、多分、僕の為に、そのブックカバーを探し求めたんだと思う。そして僕の名前を刻んでくれたんだろう。永遠の想いを込めて。隠せぬ恋心も合わせて。イニシャルには苗字だけだく、僕の名前まで、あったから。

もう連絡とれなくなるから、手紙と一緒にここに入れたから。連絡下さい。でも、見たら、どこかに控えたらすぐ捨ててくださいね。

そんな彼女を、やっとエレベーターまで見送った。彼女の最後の瞳と唇は、まだ何かを求めていた、と思う、、、、。

なんで、そんなリスクを冒すのか、君は、ここまで生きてきた中で、努力してきた中で、我慢できない我慢を自分に強いてきた中で、手に入れてきたものを全て失ってしまうかもしれないのに。僕なんかの為に。自分には分からなかった、分かるはずがない、、、彼女の気持ちなんて、、、。

その面談室には、確かに二人しかいなかったけど、、、。でも、決してプライベートな場ではなく、そんなことをする場ではない、、、。みんなに見られたら、僕が、もしそうでなかったら、君は考えなかったのか、、、。それとも僕はそうしないと信じ切っていたのか? 人の妻であり、子の母でもある君は、まるでその今の置かれた場所からあまりにもかけ離れた、不釣り合いの少女性で、透き通りすぎた純真さで、一途に、僕と向き合う。

彼女は、妻でもなく、母でもなく、ただの女性として、好きな人と、これからも一緒にいたい、ただそれだけ。
君のヒトミが、そう言っていた。


一つだけ聞いていい?
僕は、君がリスクを冒すほどの人間ですか ?

私、大好きなの。みんなは分からないかもしれなけれど、、、、。



都築とえり子、、、

それは、道ならぬ恋、そんな道行、そこになにがあるのか、、、誰も分からない。そうであっても、生きていくしかないし、二人を隔てるものは、時代であり、社会であり、家であり、それを生きる自分であったり。でもその、誰も認めてくれない、道行を、二人は出来うる限り、自分たちの、心の体温だけで温めて、寄り添って、互いに労わり、生きてきた。

ただの男性と女性でいたいだけ、だけど、それはできない、この世界。二人の間には、あまりにも、多くのものが、在りすぎて、そしてその反動は、更に二人を近づけ、燃え立たせ、でも答えのない、場所へと追いやる。向かう先は、死地しかない。

そんな二人の背景で、風の盆が幕を開ける。
胡弓の甘く悲しい音色。
低く輪郭のある、でも嫌みのない心地いい、リズムを刻み続ける三味線。

風の盆の深い深い幽玄の美を持つ森は、そんな2人を、何も言わず、ただ、ただ受け入れてくれる。

ここではない世界、いまではない世界、そんな世界を夢見させて、二人を果てのない世界に、惹き入れる。


君の話に耳を傾けるよ。
君の言葉を音符のように、
一つの美しい調べのように、
相槌を打って、聞こうと思う。

でも、そうしたら、
君は、僕をもっと好きなる、

そして、仮に別れが来たら、
本当に、悲しい思いをしてしまうとおもう。


切ない、恋、恋する二人。

好きで、すきで、
どうしようもなく、君への想いが、
溢れてきます。

、、、、、、、、。

一緒にいてくれますか、
ずっと、ずっと、ずっと、
そんな世界が、きっとあるから、、、、。





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