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7人へのお祝い


「彼ら本っっ当に仲良し過ぎない?」
母が言った一言に全てが詰まっている気がした。



2020年の確か11月頃、実家で音楽番組の録画を軒並みひっくり返して”本っっ当に仲良し過ぎる彼ら”が出演した番組を2つほど見つけた。
私が彼らの姿を大画面・高画質で見られるのは実家だけだ。
目に焼き付けておこうとそのパフォーマンス映像3曲分を永遠に繰り返し再生していたところへ、隣でスマホをいじっていた母が
「BTSって何がすごいの?」
と聞いてきた。

今や世界のBTS。彼らのことを詳しく知らない人はまずみんなそう思うだろうし、事実彼らの爆発的な人気を分析する記事はもう既にこの世に五万と存在する。
専門家の鋭い視点で言語化された彼らについての文章が、ARMYの私ですらハッとするような気づきを与えてくれたことは何度もある。
ぜひともそれを読んでくれと言いたいところだが、今求められているのは多分もっと一般人目線の平たくてわかりやすい理由だ。
ARMYとして試されていると思った。(もちろん母はそんなつもりで聞いたわけではない) 
BTSミリしらどころかKPOPミリしらの母にどこまで理解してもらえるかで私の今後に天と地ほどの差が出る。
これまでの人生で音楽好きな私の好みを理解してもらえたことは一度もなかったけど、やっぱり自分の大切な家族にくらい、自分の大好きな人たちのことを理解してほしいと思った。もし好みでなかったとしても彼らの素晴らしさが認識されたら嬉しいと思った。 

めちゃくちゃ”ガチ”の顔で
「語っていい?」
と聞くと「ン~3分以内で!」と言われた。


3分あればじゅうぶんだった。
母はわかったようなわからないような相槌で一応ちゃんと最後まで聞いてくれた。



ここで念のため母がどんな人かを紹介しておくと、普通の母親像とはかけ離れている人だと言えると思う。
客観的な見方が得意で、なにか人とは違う謎の鋭い勘を持っている。
あと加えておくなら、母は人の名前を覚えるのが壊滅的に苦手だ。それはもう壊滅的に。よく見るドラマの登場人物も2人覚えていればマシというレベル。だけど、逆に言うと人の特徴を捉えるのが早かった。7人の顔は割とすぐ見分けがついたみたいだった。
…マジですごい。私なんて最初ほとんど顔と名前がごちゃごちゃで、しばらく私の中のBTSは5人!みたいな状態だった。最後まで見分けがつかなかったのはホソクとユンギだけど今考えたらどこが似ていたのか微塵もわからない。



私が彼らについて語っている間にもずっと再生していた録画映像を見ながら
「この真ん中にいる子はなんて言うの?」
母が一番最初に興味を示したのはさすが”黄金マンネ”チョン・ジョングクだった。
やっぱり知らない人が見てパっと見で目を引くのはジョングクなんだなと思った。
名前を教えてあげたら母は聞き慣れない異国の青年の名前を「ちょん、じょんぐく、ジョンぐく、、グク…」と反芻して覚えようとしていた。
もしこれでジョングクの名前を覚えられたら結構な快挙だった。

みんながグループの中でどんなポジションかをざっくり教えたけど、それでもやっぱり母はジョングクが気になるみたいだった。
「漫画に出てくるパーフェクトなイケメンキャラを3次元化しちゃいましたみたいな顔だね、天は二物を与えずってやっぱり嘘だったんだな~」



そのあと実家から都内の一人暮らしの家に戻って1週間くらいしたら、母から電話があった。
いつもみたいに実家になんか私宛ての荷物でも届いたか?と思って通話ボタンを押すと

「ねえYoutubeの履歴がBTSで埋まっていくんだけど!」

本当に思いもよらぬ嬉しい報告だった。教えたは良いけど、あの母が本当に好きになってくれるとはこれっぽっちも思っていなかった。
しかもこの数か月後、姉に「なんでここん家は韓国語の映像しか流れないの?」と言われるほどになる。

彼らのおかげでほとんど月イチくらいだった母との連絡頻度も格段に上がって、今までよりなんでも話しやすくなった。
親子関係すら支えてくれるBTS、マジで恐るべしとしか言えない。


そしてここで、冒頭の発言が出てくる。


「彼ら本っっ当に仲良し過ぎない?」
人気の理由の一つだと思う。


最初にメンバーを決めた時、Big Hitがどこまでを見据えていたのかわからないけど(めちゃくちゃ知りたい教えてHYBE)、リーダーのナムジュンが最年長じゃなかったことはすごくチームのバランスに良い影響を与えていると思う。
もともとナムジュンのために集めたグループだと言われているし彼のワンマンチームになっていても多分おかしくなかった。そうさせなかった1番の大きい要因は彼より年上のいつでも後ろから見守っている二人の存在があるからだと私は思っている。


ソクジンはジョングクと殴る蹴るのふざけ合いをしてたりおやじギャグで辺り一面南極にしてたりするけど、
「自分が幸せになるために人を笑わせるんだ」
「皆さんには僕の良いところだけをお見せしたい」
といった趣旨の発言から彼はその実、めちゃくちゃ理性的で、精神的に成熟した人間だと感じる。
メンバーからの「いるだけで安心する人」感がすごい。
実際ナムジュンは海外授賞式メントの時、緊張するからジンヒョンが隣にいると落ち着くと言っていた。
なんかわからないけど最終的に頼れる人、みたいな印象が強い。

ユンギは一見淡白で冷たい人のように見えるけれど、あの裏には音楽へ対するとんでもなく熱い想いが隠されている。あとは目的のためなら割と手段を選ばない。その頑固なまでの真っ直ぐさにナムジュンが助けられたこと、きっと何百回何千回とあるんだと思う。JimmyのインタビューにGo to Grammy?と答えたこととか。あれはユンギが言わなかったら誰も口にできなかったのではないか。

年上を敬う意識の強い韓国で、グループにこの二人がいる意味は大きい。


加えてダンスリーダーでムードメーカーのホソクがいて、誰よりもストイックなジミンがいて、繊細で多才なテヒョンがいて、オールマイティーなジョングクがいる。

本当に、7人もいるのに一人一人の存在意義がバカみたいにデカい。

もれなく7人全員が"いなければならない人"であること、その意識の統一がどれほど難しいか。  


もともと全然違うタイプの7人が集まっているからメンバー同士で足りない部分を補い合っているというのも、もちろんあると思う。でもそれより多分これまで喧嘩したり仲直りしたりする中で、周りへの思いやりを忘れず一人一人の役割というものを自分たちで見出したことがより大きな要因だと思う。
「喧嘩した時はいつもどうするのか?」という問いに
ユンギが「前は話し合いをしていたけど今はしないな」と答えていた。
多分これは長年一緒にいて、もう今ぶつかることがあってもお互いのことを熟知しているから相手がなぜそう考えたのかを理解できて、それぞれ大人の対応ができるようになったということなんだと思う。


7人全員の関係性がプラスの状態で保たれていて、"仲良しすぎる"のだ。
変にかっこつけたり取り繕うことをしていなくて、自分の素をどこまでさらけ出すかの絶妙なラインをわかっている。


結局大事なのはバランスだったんだと気づかされる。  






大好きで愛しくて大切で尊い7人、この先もしもステージに立てなくなることがあろうと
仲良く全員まとめて幸せでいてほしい。


デビュー8周年、おめでとう。

今は姿の見えない場所からお祝いをして幸せを祈ることしかできないけど
早くまた彼らの目の前に、世界中からの愛に溢れた紫の景色が広がりますように。  



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