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白山洋視点のお話

私が羊君を意識したのは、彼が手をたくさん手を繋ぐようになってきてからだ。
頼りない面はある。優柔不断で、甘えん坊だし。
それでも、まっすぐな行為を好ましく思っている人から送られるのには悪い気がしない。彼は私の嫌がることはしないし、他の男の子より穏やかな印象があった。そういうところが友人として好きだった。
彼が手を繋ぐのを求めるようになって、いわゆる異性としての行為を感じるようになった。それから彼を目で追ってしまうようになる。

中学の時に二人の関係はハッキリしたものになる。
初めて制服の袖を通した時、彼の顔が赤くなっていた。
うん、その反応は嬉しいけど、ちょっと恥ずかしい。
「おはよう。その……変じゃない?」
答えは分かっているのに、あざとく聞いてみる。からかう意味も込めて。
「うん!すごく似合う!」
「ありがと!えへへ!」
こういうところが好きなのだ。
「クラス一緒だといいね」と私がいうと、縦に大きく首を振る。
そう一緒だとよかったんだけど……。
私たちは幼稚園も同じ、小学校もクラス替えしても、ずっと同じだった。
今日もそうなるはずだと思っていた。掲示板にはそれぞれ別々のクラスだった。
「あぁ、じゃあ、会える時間減っちゃうね」と私が呟くと、
「…………洋。会える時間は少なくなるけど……やっぱり会いたい。付き合ってほしい。休みの日とか君といたい」
へ??????????????? 驚きすぎた。私は固まった。このタイミングですか????????????
聞こえていた周りの生徒も固まっていた。皆声を失って、私たちの周りだけ音がなくなっていたように思った。……嘘です。自分の心臓の鼓動だけは鳴り響いていた気がしました。
「今まで一緒に過ごす時間が長かった分、一緒にいられない時間が長く感じそうなんだ。多分、我慢できなくなる」
ちょっちょっちょっ!!なんでこんな時に急にストレートに来るんですか!??
あー!!だめだ!恥ずかしくて顔見れないよ……。
私は……小さく首を縦に振るしかできなかった。

当時のことを彼に聞くと、
初めて制服に袖を通した君が可愛く見えた。桜と日差しも似合ってより鮮明に引き立っていた気がした。
今まで一緒に過ごす時間が長かったし、小学校のクラス分けの時も何故かずっと同じクラスだった。ずっと一緒なのが当たり前だと思っていた。
別のクラスになることは想定していなかった。
僕らにとって、学校にいる時間がほぼ全部だと当時は思っていた。
だから、その時間に君が見られないのは、君との別れになる位のショックがあったと当時は思ってしまった。
君は可愛いから、他の男の子に声も掛けられるだろう。他の男の子と付き合ってもいい……なんて思えなかった。できれば、君の時間を独り占めしたかったから。
そんなことをたどたどしく、緊張した面持ちで話していた。話している彼も恥ずかしかっただろうけど、聞いている私も恥ずかしかった。今でもだ。
中学時代、彼の男友達に話を聞くと「女子の話を振っても、白山のことしか話さないからつまんねー」と言われる程度に一途だった。
そんなことを思い出す。深夜2時。
明日は彼と待ち合わせ。彼が何かを決めたようなことを態度をとると中学の時みたいな急にビックリすることをされるので、当時を思い出して、眠れなくなった。
はぁーーー、この後、寝られるかなぁ……。

2024年 文披31題 day26 深夜2時 

後書き
お題をみた瞬間、出てきたのは高橋由美子さんの『友達でいいから』
高橋由美子 / 友達でいいから (youtube.com)
内田春菊・作『南くんの恋人』がドラマ化された作品に使われた曲ですね。
リメイクもされる前のやつです。
原作についてお話する機会があれば、また。
話がそれましたが、歌詞中の『真夜中の2時でも 駆けてゆくからね』を『真夜中の虹でも掛けてゆくからね』と脳内変換し間違えて、そのぐらいの勢いで行くぜって意味だと思っていました 苦笑
作者はいわゆる『女の子』とか『女性』は描けないんだなとつくづく思います。記号的というかキャラクターでしかないというか……まぁ、難しいですね。

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