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ヘッドフォンから流れる曲

野呂亮がヘッドフォンを付けていた。
何も突っ込まないでおこう。
面倒だし。流石に俺も学習した。
さて、野呂亮の母上からおやつをいただこう。
無視して去ろうとすると野呂亮に掴まれる。
「ぐえっ!!」
「何も聞かないのか?何も言わないのか?」
「いや、なんか面倒だから、もういいです。ほら、読者もこの展開飽きてると思うよ? そう芽田さんが言ってた」
「芽田さんって誰??」
「俺にしか聞こえない天の声ってやつ」
「…………まぁ、いいや。僕を見て、普段と違うことあるだろう?」
「あー……いつもと違って、人間の顔じゃない?」
叩きつける勢いで投げるも、羽があるので余裕で回避。一つため息をつく。これもタダ飯と宿のためだ。我慢しよう。
「頭につけているヘッドフォン?」
「そうだ。似合うか?」
「まったくわかんない」白目になる。
「漫画を読んで気付いた。ヘッドフォンつけているキャラはだいたいイケメンか可愛い」
「漫画だからじゃね?」鼻くそほじりながら答える。
「僕もイケメンだ」口を開いた瞬間を狙って鼻くそ弾き飛ばしたが避けられた。
「だから似合うはずだ。おかしいこと言ってるか?」
「あー……まぁ、はい。いつも通り(頭おかしい)ですね。はい」
話を聞かないのもいつも通りで。俺の噛み合わない返事を無視して喋り続ける野呂亮。
「イケメンとヘッドフォンの組み合わせって強くない?」
「ところで、そのヘッドフォンって、なんか音楽流れてるの?」話題をすり替える。
「もちろんだ。飾りだけだと意味がないだろう」
と言うので「どれ」と何を聴いているか確認してみる。
ゴツゴウシューギ。ラミパスラミパス。ドートデモナーレ。聴覚の共有と。

流れてきたのは『どんぐりころころ』だった。
「……あのー、野呂さん?」
「なんだ?」
「まぁ……何を聞こうが、野呂さんの自由だとは思うんですよ?」
「うん?それで?」
「ただ、どういった心境で、この曲をお選びになって、どんなテンションで聴いていらっしゃるのかな?と思う次第なんです。はい」
動揺しすぎて敬語になるチャーミー。
「え?何も考えてないよ。なんとなくだよ。テキトー。テキトー」
なんとなくテキトーに聴く曲が、これなんですか?
流行りのJ-POPとかロックとかあるだろうに。
「一応、聞くけど他にはどんなのが?」
「あー。モーツァルトの『レクイエム怒りの日』と『暗い日曜日』と『ガラモンソング』?」
「いや、本当にどんなテンションなんですか?」
「これから、女の子に『ペンギンここら辺にいませんでしたか?』って聞きに行くテンション?」(day21 自由研究参照)
「え?脳内にそれ再生しながら、声かけていたの?」
「んな訳ないだろ?」本当なんなの?こいつ。
「僕を振った女はみんなこうなれば良いのに……っていう……」
「うわー………………ドン引きだわー………」
底まで落ちた評価を叩き割って、さらに奥があるんだと感じさせる。
「もちろん、冗談だよ?」
「冗談なんだよな?」
「あ、チャーミーが夜眠れない時のために『般若心経』も入れてる!」
「マジで叩き落としてやろうか!そのヘッドフォン!」



2024 文披31題 day28 ヘッドフォン

後書き
ヘッドフォン。何書いていいか思い浮かばなかったけど、野呂君にパスしとけば大体行ける説。
明日の『焦がす』も野呂君か、喜田さんで迷うところ。
洋君は書いていて、心の大声でるからあかん。

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