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送り火

朝が死んで
夜の帳(とばり)がはられる。
夏に送られる灯りに
死者への祈りを重ねて。
線香の煙が懐かしさを香らせる。
煙のようにうっすら香り、霧散していく。
あの世があるかは分からないまま
それを信じて
いない人に、いない世界で、和やかに過ごす夢を
共有したい。
生きているものもいずれは辿るマボロシ。
夢と現の境目を感じさせる慣習は
続いていくだろう。
死者のために。生者のために。

お題『明かりを灯す理由』
雲の詩沫様

【後書き】
明かりを灯す理由。
難しいお題ですね。正直パッと出てきたものは、ろくでもない案ばかりです。
恋愛詩的に「君を怖がらせないため」とか「君の姿をよく見たいから」とか。
大喜利的に「ブラック企業であることを就活生に教えてあげる先輩社員の優しさ」とか。
不動産とか建築とかそういう会社のCM的に「家族が帰る家に安心で暖かい光を」とか。
安直過ぎないかと?
日常的にあり過ぎて、詩的に自分に表現する能力がないな。と一旦お題を放り投げました。
後から思い出されたのが「灯籠流し」。
限定的に使われる灯りなら良いのではないだろうかと思い書いてみました。

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