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とある喫茶店のこだわり2/3 秋

洞爺湖は一周すると42kmある。だから、マラソンコースにも使われるけれども、
観光としても景観が有名で、北海道はそんなルートをオススメする活動をシーニックバイウェイと名称して活動しているが、湖畔沿いの一部ルートもそれに選ばれている。
日本人の美意識は、昔から春が美しいか、秋が美しいかで意見が分かれる。
秋の湖畔沿いルートは色鮮やかな山や木々を眺めながら走ることになる。
そして、湖畔沿いには58基ほどの彫刻作品が点在している。(上の画像がその一例)自然とアートの調和を目指しているとのことだ。
私はそんな美しい道のりを秋風に吹かれながら、以前の喫茶店にやってきた。
既に先客がいた。昭和新山のクマだった。クマは昭和新山のアイドルらしい。
中島、昭和新山、温泉。そして、洞爺湖町と火山活動は切っても切り離せない。それらは火山活動の賜物だ。もちろん、良いことばかりではなく、痛みの跡もあえて残しているところもある。
そういった痛みを知るのも、また大事なことだと思う。
クマは不思議な絵を見ながら首を傾げていた。

アルチンボルド 四季 秋

「ユニークな絵ですよね。どのパーツに何があるのか探すだけでも楽しいでしょうね。私も何種類あるかまでは分からないので、わかったら教えてくださいね」と店主は悪戯っぽく笑う。
私は夏と同じくアイスクリームセットを注文した。
「秋の洞爺湖の彩りを表現してみました」と店主が運んできたのは、
透き通る水色が印象的なビードロの器に、真っ赤なルビーチョコレートのアイスに、カラフルなポップンキャンディがかけられたものと、ミルクティー。
器は洞爺湖を水を、アイスは赤くなった景色に様々な色の葉が飛び散る様を演出したとのこと。
紅茶はダージリンオータムナルという一年で1番甘くなる秋詰みのダージリン。その茶葉をミルクティーとしてあつらえたもの。
「洞爺湖の彩りを感じながら、自然や芸術などの語らいの場として過ごしていただければと思います。」と店主は微笑む。
北海道で1番長い冬の足音が近づいていた。

※こちらはフィクションです。登場する店や人物等は実在しません。
洞爺湖周辺の魅力を存分に味わっていただけると幸いです。

お題『緑、アイスクリーム、クレシェンド。三つの素材を使って何かを作る』

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